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2013年11月27日 掲載

中国商標編

 今回の第三次改正では約10年ぶりに大がかりな法改正がなされ、2014年5月1日から施行されます。出願人の利便性、スピーディーな権利付与、抜け駆け登録の防止、悪質な商標権侵害の抑制、モラルの向上などを改正の目玉とするものです。
 未だ実施条例や審査基準の改正内容が公表されていないため詳細な運用などは不明です。
 今回の改正点を中心に中国商標制度の概要についてQ&A形式で簡単にご紹介します。

  • Q
    「出願人の利便性」に関する改正はどのような内容でしょうか?
  • A

    ●一出願多区分制度の導入
     出願手続きや管理の利便性が向上し、今後公表される特許庁や代理人費用が一区分制度より安くなればコストメリットも期待できます。
    ●商標の保護対象に「音声」が追加
     他の新たな商標(単一の色彩、位置など)の導入は見送られました。
    ●審査官が必要により出願人に説明や補正を要求することが可能
     今までは意見書提出の機会はなく、拒絶査定となっていました。出願人の説明などを聞くか否かの基準や十分な応答期間が実施規則に規定されることを期待します。
    ●更新手続き期間の拡大
     今まで更新手続きは満了日の6か月前からでしたが、改正法では12か月前から可能となり、税関差止申請や使用許諾届出の各更新手続きがやりやすくなりました。

  • Q
    「審査期限の導入」に関する改正はどのような内容でしょうか?
  • A

    ●出願や審判における審査期限は一律9か月以内となりました(延長は3か月。ただし出願審査の延長は認めていません)。例外的に12か月以内とするのは異議、異議成立時の出願拒絶決定に対する再審査、相対的な理由による無効審判に関する審査期限のみです(延長は6か月)。審査の早期化は出願人にとってはメリットですが、審査官との十分な意見交換や審査の質維持を今後も期待します。

  • Q
    「商標使用義務の強化」に関する改正はどのような内容でしょうか?
  • A

    ●商標の使用の定義に「商品の出所を識別する行為」を明文化したことによって輸出専用の模倣品などへの追及が厳しくなりました。
    ●冒認出願への対抗や損害賠償請求においては中国国内における商標の使用が要求されるようになりました。

  • Q
    「異議プロセスの簡素化」に関する改正はどのような内容でしょうか?
  • A

    権利化の遅延解消や行政プロセスの簡素化の視点から以下の改正がなされました。
    ●異議申立不成立時の不服審判請求が廃止され、一旦登録後に無効審判で争うこととなりました。
    ●異議申立理由と請求人の制限
    先登録商標と類似するなど相対的拒絶理由を根拠とした異議申立は、何人ではなく先行権利者または利害関係人のみが可能となりました。商標として登録性がないなど絶対的拒絶理由を根拠とした異議申立は、今までどおり何人も異議申立が可能です。

  • Q
    「公平な競争秩序の維持」に関する改正はどのような内容でしょうか?
  • A

    ●中国全土での商標著名性を根拠に認定される馳名(ちめい)商標制度の改善
    認定機関の明文化(商標局、商標評審委員会、最高人民法院が指定した人民法院)
    馳名商標の商業的使用禁止と罰金10万元の創設
    馳名商標の認定は認定に係わった個別案件のみに有効
    ●契約・業務関係者による冒認出願の禁止
    ●商標代理機構などのモラル規制の強化

  • Q
    その他の改正点はどのような内容でしょうか?
  • A

    ●民事訴訟における法定賠償額は50万元以下から300万元以下に引き上げられました。
    ●行政取締りにおける罰則額は売上げの3倍以下(法定額10万元)から売上げの5倍以下(売上げが5万元未満の場合には25万元以下)に引き上げられました。

  • Q
    法改正以外で中国商標制度で特に留意すべき点は?
  • A

    ●漢字文化のため、商標の外観(文字の綴り)や観念(意味)の相違を重視する傾向があるので商標の類否判断には注意が必要です。

    呼称は同一にもかかわらず非類似と判断された例

    (出典)中国商標局・商標評審委員会発行「商標審査基準」

    ●外国企業が中国展開において、欧文字商標の代わりに漢字当て字商標を使用することが多いですが、中国においては欧文字商標と漢字当て字商標とピンイン(中国語発音アルファベット表記)とがそれぞれ非類似と判断されることが多いので権利化には注意が必要です。

    外国企業商標「TOKYO」の例

    *説明上の架空事例です。中国商標局などの判断を示したものではありません。

    ●中国の指定商品は日本のように包括的な表示は認められておらず個別商品を表示するしかありませんが、日本などと同一名称でも商品概念が違うものがありますので代理人に相談することを勧めます。

    (日本)第25類「被服」
    洋服、和服、子供・ベビー服、寝間着、下着、手袋、靴下、帽子、レインコートは含まれる
    (中国)第25類「被服」
    帽子、手袋、靴下、ネクタイ、マフラー、レインコート、ベビー服は含まれない *ベビー服は子供服と備考類似

    ●台湾、香港、マカオの各地域はそれぞれ独自の商標制度を持っており、中国(大陸)の商標権は及びません。

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