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2014年4月18日 掲載

知財権侵害の最新事件(8)
著作権侵害事件

浙江氾亜電子商務有限公司と北京百度網訊科技有限公司、百度在線網絡技術(北京)有限公司との間の著作権紛争事件(※1)

基本情報

二審事件番号      中国最高裁判所(2009)民三終字第2号民事判決
上訴人(原審原告)   浙江氾亜電子商務有限公司
被上訴人(原審被告)  北京百度網訊科技有限公司
百度在線網絡技術(北京)有限公司

事件の経緯

 浙江氾亜電子商務有限公司(以下「氾亜公司」という)は、2002年から百度在線網絡技術(北京)有限公司(以下「百度在線公司」という)と北京百度網訊科技有限公司(以下「百度網訊公司」という)が検索リンク技術を利用して百度音楽網站(サイト)ページで氾亜公司が著作権を有する3曲の歌ファイルの絶対アドレスをユーザーに開示し、かつ、上記曲のMP3ファイルを無料でダウンロードするサービスを提供しているのを発見した。同時に、百度在線公司と百度網訊公司(以下「両百度公司」という)は、その他のウェブサイトにおいても、リンク方式によりユーザーに対して、上記曲のMP3ファイルの無料ダウンロードサービスを提供していた。氾亜公司は、何回も書簡を発することにより、両百度公司に対して直ちに自社の著作物内容に係る検索及びダウンロード用アドレスのリンクを削除するように警告したものの、両百度公司は依然として停止しようとしなかった。氾亜公司は、両百度公司の行為が自社の合法的な権利を侵害し、自社に重大な経済的な損害をもたらしたとして、北京高等裁判所に訴訟を提起して、両百度公司に対して、侵害行為を停止し、かつ、経済的な損害を賠償することを求めた。

裁判所の判決

 一審裁判所は、「両百度公司の行為は『情報インターネット伝達権保護条例』(以下、「条例」という)に規定されている免責要件を満たし、氾亜公司の権利侵害通知は『条例』第14条(※2) における通知要件を満たしていないので、その請求を棄却する」と判定した。氾亜公司は、一審判決を不服とし、最高裁判所に上訴を提起した。
 二審裁判所は、「両百度公司は、氾亜公司の弁護士書簡が通知要件を満たしていないという理由で無視し、放任してはならず、逆に氾亜公司と連絡・協議することにより要件を満たす通知を求めるべきであり、又はその他の情報により合理的な措置を取って侵害結果が生じるリンクを中止させるべきである」と判定し、両百度公司は、氾亜公司の法律規定を満たさない権利侵害通知に対して注意義務を有し、侵害リンクの継続的な存在により原告にもたらされた損害について相応する賠償責任を負うべきであり、両被告に対して共同で原告の経済損害及び合理的な支出を賠償すべきであるとの判決を言い渡した。

※1)中国最高裁判所が公布した「最高裁判所知識産権事件2012年度報告」より

※2)「条例」第14条には、「情報のメモリー空間を提供し、又は検索、リンクサービスを提供するネットワークサービスプロバイダーについて、権利者は、前者のサービスに係る著作物、出演、録音・録画製品が権利者の情報インターネット伝達権を侵害し、又は権利者の権利管理電子情報が削除、改変されたと主張する場合、当該ネットワークサービスプロバイダーに書面による通知を発送し、ネットワークサービスプロバイダーに対して当該著作物、出演、録音・録画製品を削除し、又は、当該著作物、出演、録音・録画製品のリンクを切断することを求めることができる。通知書には次に掲げる内容を含むものとする。(1)権利者の氏名(名称)、連絡方法と住所。(2)削除又はリンクの切断を求める侵害著作物、出演、録音・録画製品の名称とインターネットアドレス。(3)侵害を構成する初歩的証明資料。権利者は、通知書の真実性に対して責任を負うものとする。」と規定している。

ポイント

通常、ネットワークサービスプロバイダーは、権利者からの「条例」第14条の要件を満たしているという通知書を受け取った場合、直ちに侵害ファイルとのリンクを切断し、かつ、リンクされているファイルが侵害であることを主観的に知らない、又は知らないはずである場合、免責条件を満たすこととなり、相応の損害賠償責任を負う必要がなくなる。また、権利者からの「条例」第14条の要件を満たしていないという通知を受け取った場合、それは全く無意味なものとして無視してはならず、その内容に対して総合的に判断しなければならないが、関係通知により具体的な侵害著作物を確定できた場合、ネットワークサービスプロバイダーは、注意義務があり、それを履行しなければ、法的責任を負う必要がある。つまり、通知の形式的要件にかかわらず、著作権利者から発送した通知で提供した情報より侵害著作物を正確に確定できる限り、当該通知の法的効力を認め、積極的に対応しなければならない。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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