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2014年5月16日 掲載

中国模倣品事件の対応(2)
模倣品事件に対する調査

1. 調査の必要性

 繰り返すが、異なる模倣品行為によって、講ずべき模倣品対策は異なっているので、模倣品を発見後、権利者は相応しい模倣品対策を選定する必要がある。そのため、模倣業者に対して、権利保有状況及び事業の規模、侵害品の製造・販売状況等について調査を実施する必要がある。
しかも、その調査結果に基づいて関連模倣業者・模倣行為を確実に阻止できる対策を選択することもできる。また、その調査結果は、今後の対応において、模倣業者の侵害行為を証明する証拠として使用することができる。

2. 調査内容及びその方法

  1. 模倣業者の工商登録情報の調査
     模倣業者の責任を追及するために、同業者の身分を確認することが必要である。したがって、まず同模倣業者の法人登録の有無を確認することが必要がある。通常、模倣業者所在地の工商局のホームページで、企業の工商登録情況を調査できる。同調査を通じて、法人登録の有無、登録住所、成立日時及び登録資本金などの情報も入手できる。
  2. 模倣業者の権利保有状況
     模倣品行為の発見後、模倣業者に対して、関連知的財産権の保有状況を調査すべきである。なぜならば、まず、一部の模倣業者は、著作物登録または意匠登録が実体審査を経ない点を利用して勝手に先行権利と同一又は類似する著作物、または意匠を出願して、いわゆる登録権者になることがある。このような模倣業者に対する対応策は普通の模倣業者に対する対応策とは異なり、必要に応じて、その意匠権等に対する無効審判請求も考えられる。その時は、弁護士と相談して対応策を工夫する必要がある。また、一部の被疑模倣業者はそれ相当の知的財産権を保有している。そのため、逆に訴えられるリスクを避けるために、事前に被疑模倣業者の知的財産権保有状況を調査し、自社の製品と被疑模倣業者の知的財産権と抵触するかどうかも検討するのが得策である。
    (i)商標権
     国家工商行政管理総局商標局の公式検索サイトにおいて、模倣業者の商標出願状況を調査することができる。また、ネットに不具合があり、上記の公式検索サイトをリンクできない場合、国家工商行政管理局の類似商標サービス提供機構を通じて調査をすることもできる。
    (ii)専利権
     知識産権局の検索ページ、専利情報サービスプラットフォーム(CNIPR)の検索ページを利用して、模倣業者の専利出願情況を調査することができ、かつ公開・公告された専利明細書及び書誌的事項を閲覧することができる。また、係る専利出願の詳細情報を把握したい場合、専利の包袋書類を取り寄せることができる。
  3. 模倣業者への実態調査
     模倣業者の実際の経営状況、特に、模倣品の製造・販売状況を把握するため、現地に赴き、模倣業者と直接接触する必要がある。しかも、その後、どのような対応策を採用するにしても、まず模倣業者の侵害行為に関する証拠を収集・確保する必要がある。関連証拠を入手・確保するため、証拠入手の可能性と手掛かりを調査したほうがよい。
     実態調査について、模倣業者と接触する必要があるので、ある程度の危険性があり、かつ模倣業者の警戒心を生じさせないように調査する必要がある。よって、調査経験が豊かな専門の法律事務所、或いは調査会社に依頼して、調査を行ったほうがよい。
     専門の法律事務所、或いは調査会社は、専門性が高く、豊富な調査経験と方法を有し、また、ほとんどはダミーで密かに調査を行うので、インターネットで入手できない証拠や手がかりも入手することが可能である。

3. 調査結果に応じた対策の選定

 模倣業者に対する調査結果からみれば、模倣業者の権利侵害行為はさほど深刻でない場合、時間対効果や費用対効果を考慮した上、模倣業者に警告書を発送することが考えられる。
 また、模倣業者の侵害行為が一定の規模を有する場合、実態調査に基づいて、その工場・店舗内に確実に侵害品の在庫があることを確定できれば、関係当局に対して、行政摘発を請求することができる。権利者の行政摘発請求に基づいて、管轄行政機関は、模倣業者の侵害行為を認定した場合、侵害行為の差止め、関連模倣品等の没収、廃棄をすることなどや、場合によっては、行政罰金を課することもでき、模倣業者に対しては、強いプレッシャーになると考えられる。
 なお、調査によって、模倣業者の侵害行為が非常に深刻であることを確認できれば、相手側に強いプレッシャーをかけて侵害行為を徹底的に中止させるため、裁判所に侵害訴訟を提起することが考えられる。また、上記の対応策により、模倣品侵害をどうしても解決できなく、または行政摘発は一時的なものなので、侵害行為が再発する場合、司法救済を求めることもできる。裁判所へ提起した模倣業者に対する知的財産権侵害訴訟において、権利者は損害賠償を請求できる。

4. 実務における留意事項

  1. 法律事務所と調査会社の選択
     中国では、全国に多数の調査会社があるが、知的財産権の模倣品対策に関する調査業務を取り扱っている調査会社は多くない。しかも、何れも調査経験がさほど豊富ではなく、証拠の入手においてさまざまな法的問題をよく把握できていないおそれもあるので、専門の法律事務所を経由して、調査を依頼するのが得策である。
  2. 調査員とのコミュニケーション
     係る模倣品は、一般消費者向けでない中間製品であれば、調査には難しさがある。事前に弁護士と調査員と十分にコミュニケーションをとっておく必要がある。製品の基本知識を教育し、調査方法を策定することができる。
  3. 調査後の証拠の収集
     調査会社による調査報告、または写真は、真実性について反論されやすいので、通常、証拠として直接利用できない。調査を通じて、証拠の手係りを入手してから、公証による確保を活用して、その証拠力を高めることが必要である。
     よく利用される公証について、下記のとおり紹介する。
    (i)インターネット公証
     インターネットにおける宣伝、侵害品の図面等の侵害情報を公証人の立会いのもと、プリントアウト・保存して、侵害証拠として確保する。
    (ii)現場での公証付き購入
     販売店、工場等の販売現場に赴き、公証人の立会いのもと、侵害品を購入し、領収書等の関連書類を入手する。
    (iii)インターネット上の公証付き購入
     インターネット上での侵害品販売行為に対するもので、公証人の立会いのもと、オンラインでオーダーをして、郵送等で侵害品が届いたら、公証人の立会いで侵害品を受領する。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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