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2014年5月23日 掲載

中国模倣品事件の対応(3)
警告書発送

警告書発送の概要

 中国では、権利者は、模倣品侵害に対し、私的救済及び公的救済を求めることができる。警告書発送は典型的な私的救済として、公的救済である行政救済と司法救済の実施前の対応策としてよく利用されている。
警告書発送は、早期に侵害事件を解決でき、他の対策に比べて、時間及び費用もそれほどかからない。しかし、権利者の要求に応じて侵害行為を中止するか否かは模倣業者の対応次第である。すなわち、相手側の法的意識が高い場合、適時に侵害行為を中止するが、法的意識が低い場合、権利者の要求を無視して、侵害行為を継続するケースも多い。下記のグラフにおいて、警告書発送に関するメリット・デメリットを紹介する。

メリット デメリット
警告書発送
  1. 紛争を短期間で解決できること。
  2. コストを抑えられること。
  3. 侵害者より善意の抗弁を防止することができること。関連法律によれば、侵害者が善意であれば、即ち、権利侵害の事実を知らなかった場合、合理的出所を立証すれば損害賠償の責任を免除することができる。これに対し、警告書発送によって、侵害者に対し、模倣品侵害事実を既に告知したので、侵害品の使用又は販売行為について善意の抗弁を防止することができる。
  1. 相手側に対するプレッシャーがさほど大きくなく、無視される可能性が高いこと。
  2. 警戒心を生じさせ、証拠隠滅の可能性が高くなること。
  3. 相手側による非侵害確認訴訟が提起されるおそれがあること。

警告書発送のプロセス

  1. 調査結果に基づいて、警告書を発送するか否かについて、判断する。
  2. 調査結果に基づいて、警告書を発送すると判断した場合、警告書において、通常下記の事項を記載・添付する。
    1. 権利者の権利に関する説明
    2. 相手側の侵害行為への指摘
    3. 侵害行為の法律責任に関する説明
    4. 侵害行為の中止、在庫の廃棄等の要求
    5. 権利証明書類、侵害証拠等
  3. 警告書を発送してから指定期間後、侵害者からいかなる応答もない場合、侵害者に電話をかけて相手の態度を確認すると同時にプレッシャーをかけ、侵害行為の差し止めを催促する。何回かにわたり電話交渉しても、相手側がどうしても侵害行為を中止しない場合、他の対策案を検討する必要がある。

実務における留意事項

  1. 証拠の事前確保
     警告書は、模倣業者に無視されるケースが多いので、もし警告書で解決できない場合、ほかの対応手段を取る必要がある。もし、訴訟を起こす場合、証拠を十分に収集する必要がある。しかし、警告書を発送することで、模倣業者に、警戒心を生じさせ、さらに証拠を入手することが難しくなることもある。したがって、警告書を発送する前に、証拠を確保したほうがよい。しかも、証拠を確保してから、警告書を発送する際に、相手に既に証拠確保したとのことを伝えると、相手にとってはプレシャーになる。
  2. タイムリーフロー
     警告書を発送してから、相手から返事がもらえるケースがあるが、返事が全くないケースも多い。そのまま待っていたら、解決できないので、よい効果を発揮できるために、警告書を発送して、一定期間を超過したら、相手に電話をかけ、情況を確認したほうがよい。電話交渉によって、相手にプレッシャーをかけ、最終的に事件が解決した例も多い。
    しかも、タイムリーフローによって、早めに相手の態度を確認できる。相手が侵害を差し止めないことを確認できたら、適時にほかの対応手段を取ることができる。
  3. 警告書発送の方式
     通常、速達にて警告書を発送するが、警告書の内容についても証明したい場合、中国では、内容証明郵便制度がないので、公証制度を利用することができる。つまり、公証人の立会いで、警告書を発送することも考えられる。
  4. 非侵害確認訴訟の回避
     非侵害確定訴訟とは、知的財産権侵害に関する警告書を受けた者が、自分の行為が知的財産権侵害行為に該当しないと認めている場合、裁判所に対して、自分の行為は非侵害行為であるとの確定を求めるために提起する訴訟である。
    非侵害確認訴訟の提起条件としては、警告書を受けた者は、書面によって権利者に権利行使の催告を発送してから2ヶ月(または権利者の書面催告の受領日から1ヶ月)以内に、権利者は依然として権利行使をせず、かつ警告を取り下げない場合、警告を受けた者は、非侵害確認訴訟を提起できる。
    実務において、このような非侵害確認訴訟が模倣業者の所在地の管轄裁判所で受理された場合、地方保護主義が働いて模倣業者に有利な判決が出されるおそれがある。しかも、模倣業者により提起された非侵害確定訴訟及び権利者により提起された侵害訴訟は、同一事実に関する事件であるので、異なる裁判所による重複する裁判を避けるために、裁判所は、関連訴訟の管轄を移管して、合併して審理する必要がある。すなわち、権利者が、北京市や上海市などの大都市で侵害訴訟を後から提起して、先の非侵害確認訴訟の管轄を北京、上海裁判所に移管するように請求しても、認められる可能性は高くない。
    したがって、非侵害確認訴訟を回避するために、警告書を受けた者から、催告を受けた場合、早めに訴訟を提起するのが得策である。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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