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2014年6月13日 掲載

中国模倣品事件の対応(5)
模倣品対策における民事訴訟(1)

1.関連制度概要

 近年、中国での知的財産権侵害訴訟の件数が年々増加する状況に応じて、知的財産権に対する司法保護力は強化され、知的財産権侵害訴訟の審判業務も有効に展開されている。また、外国当事者に係る知的財産権侵害民事訴訟事件は、全体的に増加しているのが現状である。
下記のとおり、中国の知的財産権侵害訴訟に関する制度を簡単に紹介する。

☆管轄
 日本と異なり、中国の裁判制度は4級2審制である。知的財産権侵害の模倣品事件に対して、一般的に、地方の中等以上の裁判所が審理する。判決結果に不服がある場合、規定期間内に上訴することができる。

  1. 級別管轄
    (i)専利権、植物新品種、集積回路などの民事訴訟事件について
     原則として、専利権、植物新品種、集積回路などの民事訴訟事件について、各省、自治区、直轄市人民政府所在地の中等裁判所が審理する。しかし、法律・法規の特別規定によって、自治区、直轄市の高等裁判所、または、最高裁判所の指定した他の中等裁判所、最高裁判所の指定した基層裁判所より審理することも可能である。
    (ii)商標権、著作権、不正競争などの事件について
     原則として、商標権、著作権、不正競争などの事件について、中等裁判所が審理する。しかし、法律・法規の特別規定によって、各省、自治区、直轄市の高等裁判所が審理することができる。また、各高等裁判所は本管轄区の実際状況に基づき、最高裁判所の認可を経て、比較的大きい都市で1~2の基層裁判所を第一審商標民事紛争案件として受理する裁判所と確定することもできる。
  2. 地域管轄
     権利者、模倣業者に対して、知的財産権侵害民事訴訟事件を提起する場合、上記の級別管轄に関するルールに従う以外に、地域管轄に従う必要性がある。
    中国民事訴訟法によって、原告は被告所在地の裁判所に訴訟を提起することができる。すなわち、権利者は、模倣業者が個人であれば、戸籍所在地或いは居住地の裁判所、模倣業者が法人であれば、主な営業場所或いは主な業務所在地の裁判所に対して、訴訟を提起しなければならない。
    また、原告は侵害行為発生地の裁判所に訴訟を提出することもできる。
    具体的に言えば、
    (i)専利権侵害の場合、侵害を訴えられた製品の製造、使用、販売の申し出、販売、輸入などの行為の実施地、専利方法使用行為の実施地、当該専利方法により直接取得した製品の使用、販売の申出、販売、輸入などの行為の実施地、他人の専利の詐称行為の実施地、及び上記権利侵害行為の権利侵害による結果の発生地
    (ii)商標権侵害の場合、侵害行為の実施地、侵害品の貯蔵地又は封印、差押地
    (iii)著作権侵害の場合、侵害行為の実施地、被疑侵害品の貯蔵地、差押地の裁判所に対し、訴訟を提出することができる。

☆訴訟時効
 中国民法通則及び専利法、商標法などによれば、知的財産権侵害訴訟の訴訟時効は2年で、侵害行為を知った日或いは知り得た日から起算する。訴訟時効は、訴訟での被告の抗弁手段として、被告が訴訟時効の問題を主張しなければ、裁判所は自ら審理しない。知的財産権民事訴訟での被告は、権利者の証拠から、知的財産権者が侵害行為を知った日、或いは知り得た日を推定することができるので、権利者は、証拠に対して、証拠力及び証明内容の問題を検討するほか、訴訟時効の問題がないかを検討する必要がある。
また、権利者が前述した警告書の発送などを通じて、権利行使を行った場合、訴訟時効は一時中断するので、この場合は、権利行使日から改めて訴訟時効を起算する。
 なお、知的財産権侵害訴訟の訴訟時効に関しては、特別な規定がある。つまり、知的財産権侵害行為について、権利者が2年を超えてから提訴した場合、権利侵害行為が提訴する時点でも依然として継続している、当該知的財産権が有効期間内にある場合、裁判所は被告に対し権利侵害行為を差止めさせなければならない。また、損害賠償の金額は、権利者が裁判所に提訴した日から2年前までさかのぼって計算する必要がある。

2.民事訴訟のメリット・デメリット

 裁判所へ提起した模倣業者に対する知的財産権侵害訴訟によって、権利者は損害賠償が請求でき、申立と保証金の提供による権利模倣品行為を差し止める仮処分を要求することもできる。また、行政摘発では満足できる結果が出される可能性が低いと判断される場合、民事訴訟を提起するほうが、模倣業者に強いプレシャーをかけて、訴訟過程において、自ら関連侵害行為を停止する可能性が十分あると考えられる。しかし、訴訟の場合、他の模倣品対策より、代理人等の費用もかかり、解決までに時間も相当かかる。以下の表に、模倣品対策における民事訴訟のメリット及びデメリットをまとめた。

メリット デメリット
民事訴訟
  1. 相手に対して、強いプレッシャーになること。
  2. 損害賠償を請求できること。
  3. 行政機関より、裁判所の判断レベルは高く、複雑な事件であっても、処理してもらえること。
  4. 裁判所での手続などは透明であり、行政ルートより、公平性をある程度確保できること。
  1. 時間と費用がかかること。
  2. 証拠の形式要件に対する要求が厳しいこと。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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