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2014年3月6日 掲載

知財権侵害の最新事件(2)
発明特許権侵害事件

浙江華立通信グループと深セン三星科健移動通信技術有限公司、戴鋼氏との間の発明特許権侵害紛争事件

基本情報

二審事件番号      浙江省高等裁判所(2009)浙知終字第64号民事判決書
二審上訴人(一審被告) 深セン三星科健移動通信技術有限公司
二審被上訴人(一審原告)浙江華立通信グループ有限公司
原審被告        戴 鋼

事件の経緯

浙江華立通信グループ有限公司(以下、「華立公司」と称する)は名称が「CDMA/GSMデュアルモード式移動通信方法」に係る発明特許の独占実施許諾の被許諾者である。華立公司は、深セン三星科健移動通信技術有限公司(以下、「三星公司」と称する)が製造し、戴鋼が販売しているSCH-W579携帯電話の発明と自社の発明特許に関わる発明とが同じであるとして、三星公司に対して侵害行為を停止し、損害賠償金5000万元を支払うとともに、戴鋼に対して被疑侵害携帯電話の販売停止を命じるよう、裁判所に提訴した。本件は、2007年から2012年にわたる約5年間の審理を経て、2012年3月5日にようやく二審判決が言い渡され、結審に至った。

裁判所の判決

一審裁判所は、華立公司の全ての訴訟請求を支持した。その後、二審において、浙江省高等裁判所は、「製品インターフェースにより行われた操作ステップは異なる発明によって実行できるものである。被疑侵害品が採用した技術方法を正確に確定し、発明特許の権利範囲内に入るか否かを判断するためには、専門的な技術部門による技術鑑定が必要である。したがって、三星公司が技術鑑定を申請したことについて認める。技術鑑定の結果によれば、SCH-W579携帯電話が採用した発明は、請求項1に記載された必須要件の一部とは異なり、両者が採用した技術及び実現した機能は異なっており、得られたCDMA/GSMデュアルモード式移動通信の効果も同一でない。したがって、両者は同一の発明ではなく、SCH-W579携帯電話は係争発明特許の請求項1に記載された発明を採用しておらず、係争発明特許の権利範囲に入らないので、発明特許権侵害を構成しない」と認定し、一審の判決を取消し、華立公司の訴訟請求を棄却した。

ポイント

  • 当該事件は、国際的に著名な携帯電話メーカーが中国の同業界の他社の発明特許権を侵害しているとして訴えられた初めての事件である。
  • 訴訟請求金額及び一審で判決された損害賠償額は何れも5000万元に達したので、国内外から広範な注目を集めた。
  • 二審裁判所は、当事者に挙証、証拠調べを行うように積極的に指導し、当事者双方に専門家に委託して技術問題を説明してもらうよう助言し、技術鑑定などの事実調査体制を利用して効果的に技術上の難題を解決し、一審の判決を覆し、国内携帯電話メーカーの全ての訴訟請求を棄却した。
  • 三星公司は、最終的に逆転勝訴したが、それは決して容易なことでなかった。本件からも分かるように、発明特許権侵害事件については、必要に応じて専門機関の技術鑑定作業を利用することも必要である。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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