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中国におけるインターネット上の知的財産権侵害への対応策 トップページへ

2015年4月22日 掲載

中国におけるインターネット上の知的財産権侵害への対応策

はじめに

 中国インターネット情報センター(CNNIC)は2014年7月21日、「第34回中国インターネット発展状況統計報告」(以下「報告」という)を発表した。当該「報告」によると、2014年6月までに中国のネットユーザーは、2013年末比で442万人増の6億3200万人に達し、インターネットの普及率は、2013年末比で1.1%上昇して46.9%に達し、かつ、2014年6月までに中国のウェブサイト数は、すでに273万に達し、オンラインショッピングのユーザー規模は、3億3200万人に達した。また、中国電子ビジネス協会の統計によれば、2014年6月までに、オンラインショッピング市場の取引額は、10856億元に達した。
上記のデータからも分かるように、インターネットは現在、知らず知らずのうちに人々の生活と深く係っている。それと同時に、インターネット環境は、知的財産権に対しても重大な影響を及ぼしている。
 インターネットの急速な普及と発展によって、知的財産権の関連情報が迅速、かつ効率的に伝達され、知的財産権の発展が推し進められる一方で、インターネット環境は、知的財産権の侵害行為のためにより便利な条件を提供し、知的財産権侵害事件が頻発するようになっている。たとえば、タオバオサイト(中国最大のショッピングサイト)の統計によれば、同サイトが2013年に処理した削除クレームに係わる模倣品は、1億1200万件に達した。
 そのため、インターネットの絶え間ない発展につれて、企業にとって、インターネット環境における知的財産権の保護の重要性は、ますます際立ってきていると言える。本稿では、インターネット環境における知的財産権をより確実に保護するため、インターネット環境における知的財産権侵害行為の現状、インターネット上の知財権保護に関わる専門法律及びインターネット上の知財権侵害行為に対する具体的な対応方法などを紹介する。日本の中小企業の皆様に、少しでも役立てば幸いである。

I.インターネット上の知財権侵害状況に関する紹介

1.インターネット上の知財権侵害の特徴

 インターネット環境におけるネット上での知的財産権侵害は、一般的な知的財産権侵害とは異なり、次のような特徴を有している。

  1. 開放性
     インターネット環境において、知的財産権が有している無形性はよりはっきりと体現され、知的財産権保護の対象はいずれもデジタル化され、より簡単に複製・伝達される。そのため、知的財産権の侵害行為により便利な条件を提供している。
  2. ボーダーレス性
     インターネットの出現により、知的財産権の対象がネットプラットフォームを通じて迅速に世界範囲内に伝達されるようになり、知的財産権における地域性が打撃を受け、各保護制度間に抵触を生じさせる可能性がある。
  3. 連鎖化
     ネット上での知的財産権に対する侵害行為は、同時に商標権、著作権などの幾つかの知的財産権の侵害に及び、連鎖化の傾向を呈している。
  4. 隠蔽性
     知的財産権自体が無形性と情報性と言う特徴を有するので、知的財産権侵害行為は、その他の侵害行為に比べて隠蔽性が高い。インターネット環境における知的財産権侵害行為の場合、侵害証拠の大部分がデータであるので、より隠蔽性が高く変化が多くなる。かかる特徴は、侵害行為に対する認定と追及をより困難にしている。

2.インターネット権利侵害行為の主な類型

  1. 他人の商標又は商号をドメイン名として先取り登録し、かつ使用する行為
     メイン名は、インターネットにおけるユーザーのアドレスで、その他のユーザーと識別するために用いる標識で、識別機能を有する。ドメイン名は、唯一性という特徴を有し、1つのドメイン名が登録された場合、全世界範囲内でその他の如何なる者も、完全に同一のドメイン名を再度登録することができない。したがって、ビジネス的な観点から見れば、ドメイン名は、商標、商号等の知的財産権と同様に、特有な識別機能と商業価値を代表すると言える。
     インターネット経済の発展に伴い、ここ数年、ドメイン名登録と使用によって生じる紛争も頻発しているが、通常よく見られるのは、他人の有名な商標又は商号をドメイン名として先取り登録することである。
     世界知的所有権機関(WIPO)が公表した報告によれば、2013年当該機関の仲裁調停センターは、商標に係るドメイン名先取り登録事件を計2585件を受理し、先取り登録されたドメイン名数は前年比で22%増の史上最高の6191件に達した。
  2. インターネットにおける模倣品の販売
     インターネットの発展と普及につれて、オンラインショッピングは、ますます重要なショッピング形式の1つになっている。「報告」での関連データによれば、2014年6月までに、中国オンラインショッピングのユーザー規模は、3億3200万人に、その使用率は前年比で3.6ポイント増の52.5%に達した。インターネット取引の絶え間ない規模拡大に伴い、オンラインショッピングプラットフォームは、知的財産権侵害の多発地帯となり、インターネット上での被疑侵害製品の販売は、知的財産権侵害の深刻な問題になっている。以下に、その具体的な状況を紹介する。

    製造者による直接販売
    現在、独自のオンライン取引能力を有している模倣品製造者の一部は、インターネットを通じて、直接自社の製造した模倣品を販売している。実務からみれば、販売している製品の大多数は、特許権侵害製品または商標権侵害製品であるが、海賊版書籍又は海賊版オーディオ・ビジュアル製品、海賊版コンピュータソフトウェア等の著作権侵害製品もある。

    販売者による代理販売
    通常、多くの模倣品の製造者は独自のオンライン取引能力を有せず、その他のオンライン取引プラットフォームを利用して、自社より製造した模倣品をオンラインで販売している。

    取引プラットフォームによる代理販売
    京東(http://www.jd.com/)、アマゾン(http://www.amazon.cn/)、
    1号店(http://www.yhd.com/)等の一部のオンライン取引プラットフォームは、販売者の一部分の職責を引き受けている。しかし、これらの企業の知的財産権侵害行為の存否に対する判断力には限界があり、正常なルートによって模倣品が消費者に販売されることを完全には回避できない。なお、取引プラットフォーム自体が侵害行為の存在を明らかに知っている可能性についても、完全には排除できない。

    第三者企業又は製造者直営店舗による代理販売
    第三者企業又は製造者直営店舗による販売と取引プラットフォームによる代理販売の主な相違点は、第三者企業又は製造者直営店舗は、タオバオ(http://www.taobao.com/)、Tモール(http://www.tmall.com/)、アリババ(http://www.1688.com/)等の取引プラットフォームの助けを得て販売行為を実施しているが、取引プラットフォームは統一して管理していることである。販売されている製品について、第三者企業が模倣品の権利侵害行為を明らかに知っているか否かについての問題は、実務上においてさまざまな異なる可能性が存在している。

3.その他の侵害行為

  1. インターネットによる無断盗用又は他人著作物の伝達行為
    インターネットの発展につれて、インターネット著作権侵害紛争も徐々に増えている。国家版権局の統計によれば、2005年から2013年までに発生したネット上での侵害や海賊版事件は4241件に、その関連金額は計783万元に達している。行政法執行機関によって法により閉鎖された権利侵害や海賊版に係るウェブサイト数は1926に達し、サーバー及び関連設備1178台が没収され、司法機関に移送されその刑事責任が追及された事件は322件に達した。
    インターネット環境において、著作権者、演出者と録音製品の製作者の許諾を得ずには、その著作物又は録音著作物をインターネットにアップロードしたり、インターネットで伝達したりしてはならない。著作権者が法によりその著作物をアップロードした後、アクセスする者が無償でその著作物を閲読したり、ダウンロードしたりすることができるものの、他人の著作物を詐称したり、又は権利者の許諾を得ずに他人の著作物を改ざん、消除したり、若しくは権利者の許諾を得ずに任意で転載し、使用したりする行為等は、侵害行為に該当する可能性がある。現在、インターネット環境における最大の法律問題は、インターネットにおける情報データの不当伝達、複製、利用等である。
  2. ウェブサイト上における他人の商標又は商号の不法使用行為
    商標と商号が重要な識別機能を有しているので、企業にとっては重要な知的財産権である。インターネットの急速な発展につれて、インターネット環境において、他人の登録商標、商号、特に馳名商標、著名商号を不法使用することにより、公衆の耳目を惑わす行為が相次いで発生している。
    商品そのものが権利侵害に該当する情状、すなわち、前述で紹介した模倣品販売による侵害情状の他に、インターネット上で他人の商標又は商号に対して不正使用する侵害情状には以下のような形式のものがある。
    1. 詐称のフラッグシップショップ又はフランチャイズ店
      権利者の許諾を得ずに、電子商取引のウェブサイトに権利者のフラッグシップショップや権利者の販売許諾を得たネットショップと称することである。更に一部の店舗では「授権委託書」を偽造していることさえある。かかる店舗で販売されている商品が正規品又は権利侵害品にかかわらず、許諾を得ずに、「フラッグシップショップ」と称する行為は、同様に侵害行為に該当する。授権委託書を偽造する行為は、虚偽宣伝による不正競争行為に該当する。
    2. 他人の商標に対する際立った使用行為
      一部のネット販売者は、ネットショップにおいて多種の商品を販売しているが、そのウェブページに知名度の高いブランドを際立って使用し、又は実際に販売している商品があるブランド製品の「互換品」であるにもかかわらず、互換の表記が故意に不鮮明であったり、全く表示してなかったり、逆に他人のブランドに対して際立って表記していることである。
    3. 他人の商標を商品名称等としている使用行為
      一部の状況において、商標権者の商標が同類製品において極めて高い知名度を有し、ひいてはある製品の「代名詞」となっていることがある。一部のネット販売者は、かかる知名商標を製品の製品名称として使用することにより、かかる製品名称を以って製品の性能、品質等を表現しようとしている。かかる商標使用行為は、商標の顕著性を希釈化させるおそれがあるので、見逃すわけにはいかない。
  3. 企業の名誉毀損、虚偽広告等の不正競争行為
    インターネット環境における不正競争行為には、主に詐称又は模倣、企業の名誉毀損、虚偽広告、営業秘密侵害等がある。そのうち、特に虚偽広告との不正競争行為はより深刻である。たとえば、製品の性能、用途、製造者等に対する虚偽宣伝で自社を誇大宣伝することにより、消費者に商品又はサービスを購入させるように誘導することである。なお、国家工商総局によれば、2013年3月から12月までに中国の20余りの主なウェブサイトにおける広告発表状況に対する監視・検査の結果、深刻な違法広告が広告総数の約33%を占めていることが判明した。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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