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海外知財ワンポイントレッスン

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2015年4月22日 掲載

日本の中小企業が中国に進出する際の留意点

III.パートナー選定及び業務提携における留意点

1. パートナー選定について

中国へ進出しようとする日本の中小企業にとって、理想のパートナーと出会うことは、事業展開の第一歩でもあり、最も重要な一歩でもある。そのため、パートナーの選定については、大変慎重に対応しなければならない。
また、パートナー選定の際、どのような事業分野のパートナーを選定するかに関わらず、相手の実力、信用度、及び事業提携に対する重視度という三要素を考察する必要がある。
そのため、中国に進出する日本の中小企業は、自社の中国ビジネス戦略、ビジネスパートナーに期待する役割等について事前に検討した結果に基づいて、パートナー会社を発掘し、その中から提携する可能性のあるポテンシャル会社に対して、信用調査を行った上で、相手の実力、信用度、及び、事業提携に対する重視度について、分析と評価を行うことで、有力な候補会社を絞り込むべきである。
上記のステップによって信用できる候補会社に絞り込んだ後、最終的なパートナー選定に当たって、日本の中小企業は、自ら候補パートナー会社を訪問して、相手の製造・経営状況を実際に見学し、相手の責任者とビジネス展開について、Face-to-Faceでコミュニケーションすることにより、改めて相手側の実力、信用度、及び、事業提携に対する重視度を考察する必要がある。その際、日本の中小企業は、下記事項をチェックポイントとして考察することができる。

  1. 企業規模と作業環境
  2. 事業分野と発展方向
  3. 事業展開状況及び経営実績
  4. 技術とブランドの保有状況、及び知財意識
  5. 品質管理と納期意識及び法律意識
  6. 経営者の能力、人脈
  7. 提携事業への対応者の職位
  8. 外国企業との提携経験及び実績
  9. その他

なお、パートナー会社との事業提携は、製造事業提携及び販売事業提携に分けることができるが、事業提携の形態によって、パートナー会社へのチェック・評価ポイントに若干異なる点がある。製造事業提携の場合、主にパートナー会社の製造能力を判断し、販売事業提携の場合、主に宣伝と販売能力から判断すべきである。

2. 業務提携について

 事業展開に際して、日本企業は相手側との数回のコミュニケーションを通じて、相手側の資質や経営姿勢、価値観を確認し、最も自社に相応しいビジネスパートナーを選択し、信頼関係の構築を図っていくことが大切である。
また、理想的なパートナーを探した後も、気を緩めることなく、引き続き本格的なビジネスの展開に当たって、自社製品の品質維持、技術とブランドの盗用及び営業秘密の漏洩の防止、資金回収の問題などいろいろ留意すべきところがある。
なお、提携する事業に応じて、直面する課題とリスクは異なっているので、具体的な業務展開に基づいて、そのリスクを分析し、対策を決定すべきである。技術ライセンス取引を例として、以下のように留意点を紹介する。

  1. 技術ライセンスの可否について留意すること。
    日本企業が中国企業に技術をライセンスする場合、外国から中国への技術輸入に関わるため、中国「技術輸出入管理条例」の規制を受けることになる。「技術輸出入管理条例」に基づき、輸出入される技術は自由類、制限類、禁止類に分けられている。中国の国務院対外経済貿易主管部門は、国務院傘下の関係部門と連携して、禁止又は制限すべき輸出入技術の目録を制定・調整し、公布してしているが、禁止類の技術は輸出入することができず、制限類の技術は事前審査手続を踏む必要があり、自由類の技術に対しては契約登記管理を行う必要がある。
    したがって、技術ライセンス取引契約を締結する前に、日本の中小企業は、中国に輸入しようとする技術が「輸入禁止・制限技術目録」に属しているか否かを早めに確認する必要がある。
  2. 技術秘密の漏洩について留意すること。
    技術ライセンスをする場合、どうしても避けることのできない問題は、まだ公開されていない技術ノウハウを相手側に公開することである。それに伴い、相手側による秘密漏洩のリスクが客観的に存在することになる。したがって、日本企業は、事前に、相手側による秘密漏洩をどのように防止するか、また、漏洩された場合に備えて、どのような対策を取るべきかをしっかり検討し、防止策を講じた上で、技術を提供すべきである。
  3. 対価回収に関する問題について留意すること。
    技術ライセンス取引において、ライセンサーにとっては、対価の回収は、重要な課題である。特に、許諾製品の営業利益額又は販売高に基づいてロイヤルティーを徴収する方式を採用する場合、対価は定額ではないので、対価の取得に更に留意する必要がある。なお、中国では、技術ライセンスの対価を海外に送金する場合、技術ライセンス契約の届出証明などを銀行に提出する必要があるので、契約の届出契約に対しても、留意する必要がある。
  4. 法規制上の特別規定に留意すること。
    中国の「技術輸出入管理条例」等の法律では、技術輸出入に関して、いろいろな制限を設けている。例えば、改良技術の帰属等に関しては、当事者間に自由に約定できるわけではなく、改良側に属すると規定されている。したがって、事前に中国の関連法律制度を把握した上で、自社の利益を最大に守ることのできる対策を講じることも大変重要である。
  5. その他
    技術ライセンス取引において、相手側が勝手に、関係技術を許諾業務と関係のない事業で実施するか、或いは、無断で第三者に関係技術の使用を許諾する可能性もある。このような技術の無断使用を避けるためには、相手側に許諾する関係技術の使用権限と使用範囲について明確にしておく必要がある。
    また、技術ライセンスと共に、関係技術を実施した製品に対して、自社商標の使用も許諾するケースが多いが、このような取引を行う場合、商標の使用範囲に対しても、明確に約定する必要がある。さもなけれは、相手側は、関係商標を他の無関係の商品に勝手に使用することができるが、かかる商品の品質が保証できない場合、商標イメージのダウンにつながる。
    上記のように、提携する事業に応じて、直面する課題とリスクは異なっている。そして、同じ事業であっても、具体的な状況下で、異なる問題点がある。中国に進出しようとする日本の中小企業は、中国の商習慣やビジネス環境などに詳しくないので、法律による武装で身を固めた上で、取引を展開することが一番安全であると言える。したがって、パートナーの発掘と選定段階はともかく、少なくとも、事業展開の時点では、中国の弁護士と相談してリスクの分析及び対応策の選定に工夫することが必要であり、相手側との交渉及びその後の契約締結には、弁護士によってサポートしてもらうことが得策である。

資料協力 北京林達劉知識産権代理事務所別タブで開く

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