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韓国知的財産権侵害事件への対応 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国知的財産権侵害事件への対応(8)
侵害品対策における民事訴訟

1.手続の概要

 知的財産権の侵害品が発見された場合、侵害者を相手取って民事訴訟を提起することができる。その際留意すべきは、民事訴訟は一般民事法院にて審理される点である。知的財産権自体の有・無効を判断する手続き(特許無効審判等)は、特許審判院 → 特許法院 → 大法院の順に管轄され、特許審判院が事実上1審手続きを管轄することになる。しかし、知的財産権者が侵害者を相手取って提起する民事訴訟は、一般民事手続きと同様に地方法院 → 高等法院 → 大法院の順に管轄される。
 民事訴訟は大きく本案訴訟と保全処分とに分かれる。本案訴訟は本案の訴を提起して侵害者に権利侵害禁止と権利侵害により被った損害の賠償を要求するものである。権利侵害禁止と損害賠償のうち一つだけを要求することもできる。保全処分はさらに仮処分と仮差押とに分かれるが、権利侵害禁止請求権を被保全権利とする場合には権利侵害禁止仮処分を求めることになり、権利侵害により発生した損害に対する賠償請求権を被保全権利とする場合には仮差押を求めることになる。実務的には権利侵害禁止仮処分を求めるのが大部分である。
 本案訴訟の場合、通常訴提起から1年程後に1審判決が宣告され、控訴・上告審のいずれも控訴状、上告状の受付から1年ほどで判決が宣告されるが、事案ごとに所要時間には差がある。仮処分訴訟の場合、本案訴訟よりも早く進められるが、侵害者が知的財産権自体の有効・無効を争う手続き(特許無効審判等)を提起した場合には、本案訴訟と同様の時間がかかる。

2.侵害禁止請求権

 商標権者等は、自身の権利を侵害した者又は侵害するおそれのある者に対し、侵害の禁止又は予防を請求することができるとともに、侵害行為を造成した物品の廃棄、侵害行為に提供された設備の除去又はその他必要な措置を請求することができる。
 商標権侵害禁止請求の場合、現実的な侵害があるか、侵害のおそれが客観的に存在しなければならず、侵害者の故意又は過失等の主観的な要件は要求されない。

3.損害賠償請求権

 権利者は、自身の権利を故意又は過失により侵害した者に対し、その侵害により自身が被った損害の賠償を請求することができる。
 損害賠償請求が可能なためには、i)第三者による違法な権利侵害がなければならず、ii)侵害行為に故意又は過失がなければならず、iii)侵害により損害が発生し、iv)権利侵害行為と損害発生とに相当な因果関係がなければならない。
 登録商標であることを表示した他人の商標権を侵害した場合、侵害行為の故意又は過失が推定される。
 また、商標権者は損賠賠償を請求するかわりに、5千万ウォン以下の範囲で相応の金額を損害額として賠償請求することができる(法定損害賠償請求制度)。この場合、法院は弁論全体の趣旨と証拠調査の結果を考慮して相応する損害額を認めることができる。

資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

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