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韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情

I.2014年6月11日 改正商標法施行

 2014年6月11日から一部改正商標法が施行された。今回の改正は、著名商標の稀釈化防止規定の新設、放送プログラム・芸能人名称等の無断使用等の信義則に反する商標登録及び使用禁止条項の新設、商標使用による識別力判断基準の緩和等を目的としており、その主要内容は次の通りである。

(1)商標使用による識別力認定要件の緩和

 旧商標法6条第2項は、商標の識別力が弱くても、商標出願以前からの商標使用による結果、需要者間に誰の業務に関連した商品を表示したものかが顕著に認識されている場合、そのような商標の登録を認めるとしている。
 しかし、旧法は商標使用による需要者間における識別力の認定要件を、特定人の商品出処として‘顕著に’認識されていることとしていたため、実務上‘顕著に’という表現を厳格に解釈する傾向が強く、使用による識別力を取得し商標登録を受けることが困難であっただけでなく、判例でも使用による識別力認定のための基準を‘周知以上の認識度’を意味するものとして非常に厳格に判断してきた。
 しかし、特定人が独占的に使用して取引上特定出所としての識別力を取得したのであれば、自他商品の識別力がないとは言えないので、その場合にはむしろ商標登録を認めることが商標使用者と需要者の利益保護という商標法の目的にも合致すると言わざるを得ない。
 そのため、2014年6月11日施行の改正商標法では、法条文から‘顕著に’という表現を削除して使用による識別力の判断基準を緩和した。これにより、商標登録出願以前からその商標を使用した結果、需要者間に特定人の商品に関する出所を表示するものとして認識されてさえいれば、特定人の商標として顕著に認識されていなくても使用による識別力が認められ、登録を受けられるようになった。

(2)需要者間に顕著に認識されている商標の稀釈化防止条項の新設(第7条第1項第10号)

 旧法には著名商標の名声を損傷させる商標、又は識別力を弱化させる商標の登録を阻止できる規定がなかった。
 しかし、営業上の信用が化体して著名となった商標を、第三者がその商標が使用された商品とは異なる商品に使用することで商標の名声が損傷、又は識別力が弱化する場合、商標権者の財産的利益の損失だけでなく、需要者も出所の混同による損害を被りえるので、これに対し商標法的保護が必要であるという指摘がなされてきた。そのため、2014年6月11日以後に出願された商標が著名な他人の商品や営業との混同を引き起こさせるおそれ、又は識別力や名声を損傷させるおそれがある場合、そのような商標は登録を拒絶するか、登録を受けたとしても登録無効事由に該当することにした。
 この規定の新設により、著名商標の所有者が稀釈化防止のために使用していない商標までを防御的に商標出願する行為が減り、他人の信用を無断で利用する行為を根絶し、公正な商標使用秩序を確立していくことができるものと期待される。

(3)信義則に反する出願の商標登録防止規定の新設(第7条第1項第18号)

 現行法では同業者が他の同業者に密かに商標出願する、又は従業員が会社の製品発売計画を知って当該商標を予め出願する等、信義則の原則に反する商標が出願されても、その商標が取引業界で特定人の商標として広く知られていることが立証されない限り、その商標の登録を拒絶することはできなかった。
 そのため、今年商標法第7条第1項第18号を新設し、“同業、雇用等の契約関係や業務上の取引関係、又はその他の関係を通して他人が使用中又は使用準備中の商標であることを知った上で、その商標と同一類似する商標を同一類似する商品に登録出願した商標”は、商標登録を受けられないようにした。
 これにより、同業、雇用等の契約関係や業務上の取引関係、又はこれに準ずる程度の一定の信義関係が形成されている状況にて、他人が使用中又は使用準備中であることを知りながらも、それと同一類似する商品に同一類似する商標が出願された場合には、出願段階でその登録を拒絶することができ、錯誤により登録された場合には登録無効事由に該当することになった。

(4)信義則に反する商標の使用権制限規定の新設(第53条第2項新設)

 商標法は、商標権者・専用使用権者又は通常使用権者による登録商標の使用が『不正競争防止及び営業秘密に関する法律』(以下‘不正競争防止法’とする)第2条第1号チャ目による不正競争行為に該当する場合には、原権利者の同意を得ずしては、その登録商標を使用できないようにする規定を新設した。
 この条項の新設趣旨は、商標権者等による登録商標の使用が、他人の相当な投資や努力によりつくられた成果等を無断で使用することになる結果をもたらす場合、登録商標の使用にその他人の同意を要するようにすることで、公正な商取引慣行及び競争秩序を確立し、不正競争防止法との調和をはかることにある。
 不正競争防止法第2条第1号チャ目とは、‘第2条第1号ガ目乃至ジャ目以外に、他人の相当な投資や努力によりつくられた成果等を、公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で自身の営業のために無断で使用することで、他人の経済的利益を侵害する行為’のことを言うが、本項は登録商標の使用がこのような不正競争防止法第2条第1号チャ目による不正競争行為に該当する場合に限って適用される。
 本条項の新設により、放送プログラムの題名に無断で登録を受けたり、ブランド公募展の当選作に審査委員だった者が無断で登録を受けたとしても、原権利者の同意がない限り使用できなくなった。

資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

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