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韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情

II.商標法全部改正立法予告案の主要内容

 韓国特許庁は2015年7月1日施行を目標に商標法全部改正案を立法予告した。現在、国会にて審議中だが、全部改正案の改正方向は、(1)商標の使用主義要素の補完、(2)不合理な慣行の除去による公正な商標制度の構築、(3)出願人の便宜を高めるための規制緩和であり、その主要内容は次の通りである。

(1)不使用取消審判制度の合理的補完

 現行商標法では、不使用取消審判の請求は利害関係者のみができ、不使用取消審決が確定した場合は将来に向って商標権が消滅するとされている(同法第73条)。しかし、この規定により不使用商標の数が累積し、出願人の商標選択の範囲が狭められるだけでなく、不使用であったにもかかわらず、登録という形式にもとづき民刑事上の責任は負わせられることが国民の法感情にそぐわないという批判が提起されていた。
 さらに、不使用取消審判が提起されることに備えて商標の使用証拠をつくる行為を排斥する規定がないため、不使用商標に対する移転交渉が提起された後に商標権者が名目的に商標使用証拠を偽造しておき、不使用取消審判が請求された際に偽造した使用証拠を提出するとしても、これを防ぐことができなかった。
 そのため、法改正の必要性があると判断し、1.不使用取消審判の請求人適格を‘誰でも’に拡大し、2.不使用取消審判が提起されることを予め知った上での、審判請求日前の3ヶ月間における商標の使用は登録商標の使用に該当しないものと推定し、3.商標不使用の審決確定時には、その審判請求日に遡って登録商標が消滅したものと見なす立法案を準備中である。

(2)商標共存同意制度の導入

 現行商標法は商標共存同意制度を認めていないので、出願商標が先登録商標と類似するという理由で拒絶された場合、出願人が先登録商標権者から商標共存同意書を得て提出するとしても、その拒絶理由を克服することができなかった。
 しかし改正案では、審査官から先行商標と類似するという意見提出通知を受けた出願人が、先行商標権者から登録に関する共存同意書を得て提出すれば、他の特別な事情がない限り商標登録を受けられるようにしている。

(3)商標不登録事由に該当するか否かの判断時点の変更

 現行法では商標の類否判断時点は原則的に‘商標登録出願時’と規定されているが、改正案では、商標の類否をはじめ、全ての商標不登録事由の判断時点を‘登録決定時’に変更した。これにより本法が施行される場合、出願人の便宜が高まり、登録決定時に商標不登録事由を判断するアメリカ、日本等の商標法との調和もはかることができると思われる。

(4)無効審判に対する除斥期間を5年に統一

 現行法では、未登録周知著名商標を模倣した登録商標に対する無効審判は、需要者の誤認混同を防ぎ、公正な取引秩序を確立するための規定と見なし、審判請求に対する除斥期間を適用していなかった。しかし、未登録有名商標に対する保護が相当になされるようになり、未登録周知著名商標を模倣した登録商標に対してのみ除斥期間を設けない現状では、他の商標登録無効事由との衡平性が保てないので、改正案では全ての登録商標に対する無効審判は、商標登録から5年が経過した後には請求できないようにした。

(5)商標使用概念の整備

 現行法によれば、商標の使用とは商品又は商品の包装に商標を表示する行為、商品又は商品の包装に商標を表示したものを譲渡又は引き渡すか、その目的で展示・輸出又は輸入する行為、商品に関する広告・正価表・取引・書類・看板又は表札に商標を表示して展示又は頒布する行為(法2条1項)を意味する。ところで、最近インターネットでの商標使用例が増加することにともない、改正法では上記のほかにも、商標を電気通信回線を通して提供される情報に電子的方法で表示する行為も商標の使用行為とする内容を追加した。

(6)同一日における出願競合時には先使用者の出願を認める

 現行法によれば、同じ日に同一類似する商品を指定した同一商標が2以上出願された場合、協議により決められた出願のみが商標登録を受けることができ、協議不成立時には抽選により決定された1出願のみが商標登録を受けられるとされている。しかし、この場合にも先に商標を使用していた者を保護する必要性が提起され、改正案では協議不成立の場合には、先に使用していた出願人が商標登録を受けることができるようにして先出願主義を補完した。

(7)商標権消滅後1年間の出願禁止に関する規定を削除

 現行法では、先出願登録商標が失効となった後にも、1年程度は需要者間にその商標に対する記憶と信用が残っているので商品出所に混同を引き起こすおそれがあると見なし、商標権が消滅した日から1年間はそれと同一類似する他人の商標出願の登録を禁じている(法第7条第1項第8号等)。しかし、失効となった先登録商標が使用されたことがなければ、あえて権利回復の機会を付与する必要はなく、使用されたものでも先使用権により十分に保護が可能であるにもかかわらず、この規定を存置することは不当であると判断し、改正案ではこの規定を削除した。これにより改正案が施行されれば、先登録商標権の消滅後1年を待つ必要もなく、それと同一類似する商標出願が登録を受けられるようになる予定である。

(8)手数料返還対象の拡大

 現行法によれば、商標登録出願以後1ヶ月以内に出願を取下げるか放棄する場合、既に納付した手数料のうち、商標登録出願料、優先権主張申請料を返還しているが、改正案ではその対象をより拡大し、審判請求後1ヶ月以内に審判を取下げる場合にも、既に納付した審判請求料を返還するようにしている。

資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

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