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海外知財ワンポイントレッスン

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情

III.2014年7月1日施行の改正デザイン保護法主要内容紹介

 全部改正されたデザイン保護法が2014年7月1日付で施行された。立法案ではキャラクター、ロゴ等の登録も認めようとしたが、国会通過過程にて削除され、物品とデザインの不可分性はそのまま維持された。今回の改正法は、ヘーグ協定ジュネーブアクトによる国際デザイン登録制度の導入、関連デザイン制度の導入、創作性要件の強化等、少なくない変化を盛り込んでおり、2014年7月1日以後の出願に対し適用される。改正法の主要内容は次の通りである。

(1)ヘーグ協定による国際デザイン出願制度の導入

 これまで海外国家にてデザイン登録を受けるためには、登録を希望する各国家ごとにデザイン出願手続をしなければならなかったため、権利獲得に相当な時間と費用がかかり、流行に敏感なデザイン保護には適切でないという批判が提起されていた。
 これを受けて迅速なデザイン登録、出願費用の節減のため、国際デザイン出願制度が導入された。これにより出願人が複数の国家を指定して国際知識財産権機構(WIPO)又は韓国特許庁に国際デザイン出願書を提出すれば、指定された全ての国家で出願書提出日にデザインを出願した効果を得られるようになった。国際出願書は英語、仏語、スペイン語を利用して記載可能である。
 国際デザイン出願制度は大韓民国国民、大韓民国に住所がある者に限って認められる。従って、日本国籍を有する個人又は法人の場合、大韓民国に営業所がある場合に限って国際デザイン出願制度を利用することができる。

(2)デザイン権の存続期間延長

 デザイン権が設定登録されたデザイン権の存続期間を、従来の‘デザイン権設定登録日から15年’から‘デザイン登録出願日から20年’に延長した。

(3)関連デザイン制度の導入

 従来の類似デザイン制度を廃止し、関連デザイン制度を導入した。関連デザインが類似デザインと本質的に異なる点は、独自的な権利範囲を有する点である。具体的には、関連デザインとして登録されると、1. 分離移転が制限され、2. 専用実施権の一括設定義務があり、3. 存続期間満了日が基本デザインに準ずることになるが、これらを除けば独立した権利である。
 関連デザインは基本デザインの出願日から1年以内に出願しなければならない。但し、2014年7月1日から2015年6月30日までは、本法施行以前に登録又は出願されたデザインを基本デザインとして関連デザインを出願できるようにした。

(4)デザイン創作性要件の強化

 これまでは公知デザインの結合によるデザイン、又は国内で広く知られた周知の形状から容易に創作可能なデザインに対してのみ、その登録を拒絶していたが、改正法では公知デザイン単独によるデザイン、又は国外で広く知られた周知の形状から容易に創作可能なデザインに対しても、その登録を拒絶することで、デザインの創作性要件を強化した。

(5)拡大された先出願の自己出願例外規定の新設

 これまで部分デザインは全体デザインより先に出願するか、少なくとも同じ日に出願しなければデザイン登録を受けることができなかった。出願人が同一人であるか否かに関係なく、後出願の部分デザインは新たに創作されたものではない、という理由で拒絶対象とされてきた。
 しかし、通常は製品全体のデザインが先に完成し、その後に個々の構成部品や部分的造形に関する精密なデザインが決定されるのが業界の慣行である。従って、部分デザインは後ほど出願される可能性が非常に大きいにもかかわらず、このような事情により登録を受けることができなくなるので、これに対する批判があった。
 そのため今回の改正法では、出願人が同一な場合、拡大された先出願主義を適用しないように規定することで、同一出願人が全体デザインを先に出願し、後ほど部分デザインを出願するとしても、部分デザインの登録を受けられるようにした。

(6)複数デザイン出願制度の改善

 これまではデザイン一部審査対象の物品に限って20個以内のデザインを1デザイン出願書で出願することができたが、改正法により審査・一部審査対象の物品の区分なしに、同じ類に属す物品は100個まで1デザイン出願書で出願できるようにすることで、出願人の便宜向上及び国際規範との調和をはかることができるようになった。
 また、複数デザイン出願に対して優先審査、出願公開、秘密請求をする場合、本改正法からはそのうち一部デザインに対してのみの請求もできるように改善された。出願拒絶又は登録決定も一部に限って可能とするようになった。
 参考までに、複数デザイン出願制度は、デザイン一部審査登録制度の導入とともに、1デザイン1出願原則の厳格な適用にともなう出願手続上の不便解消と、出願費用の軽減を図るために1998年3月1日に導入された制度である。

(7)新規性喪失例外主張手続の改善

 これまで新規性喪失の例外主張をしようとする者は、デザイン出願時に出願書にその趣旨を記し、証明書類を出願日から30日以内に提出するようになっていた。しかし、新規性喪失の例外を主張する手続を守れなかったという理由だけで、時間と努力をかけて創作したデザインの登録を受けられなくなるのは、出願人に対しあまりに過酷であるという批判があった。これにより、新規性喪失の例外主張及び証明書類提出を出願時だけでなく、出願補正期間内やデザイン登録後の異議申立、又は無効審判が提起された場合にも可能なように法改正した。

(8)その他

 再審査請求時だけでなく、拒絶決定審査請求日から30日以内でも図面の補正、出願書記載事項(審査出願から一分審査出願への補正、デザインから関連デザインへの補正)の補正ができるようにした。

資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

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