トップ > 東京都知的財産総合センター > 海外知財ワンポイントレッスン > 韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情V ~海外知財ワンポイントレッスン~

海外知財ワンポイントレッスン

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情

V.知財権侵害の最新事件 著作権侵害事件

美術著作物“※図1”を撮影した写真を譲渡することも美術著作物の著作権侵害行為に該当しえる

1.基本情報

事件番号:大法院 2012ド10786判決(2014.8.26.宣告)
原審判決:ソウル西部地方法院 2012.8.23.宣告 2012ノ260判決

2.事件の経緯

 被告はインターネット上で写真譲渡、利用許可を仲介する所謂フォトライブラリー業(Photo library sevice)を行う者、及びフォトライブラリー会社に委託販売するために写真を撮影して譲渡した写真作家で、乙の美術著作物である“※図1”(以下“本件著作物”とする)が使用された衣類等を着たモデルを撮影した多数の写真(以下“本件写真”とする)を乙の許可なしにウェブページに掲示したことを理由に起訴された。
 これに対し1審法院は、「本件著作物が本件写真に利用されてはいるが、その大きさや位置等を考慮するとき、本件写真は本件著作物とは別個の新しい独立した作品と考えられ、被告に著作権侵害行為に対する故意があったとは認めがたい」として、著作権侵害を認めなかった(ソウル西部地方法院 2012.2.22.宣告 2011ゴ定2144判決)。
 控訴審では「被告が本件著作物が表示された本件写真を販売乃至貸与する目的で自身のホームページに掲示した行為は、一見本件著作物に対する複製権と伝送権等を侵害する行為又は侵害するおそれのある行為と見なせる余地がある。しかし、本件写真は‘Be The Reds’図案を利用してはいるが、これを完全に消化して作品化することで、本件著作物との実質的類似性や従属的関係が認められない別個の完全に独立した新しい著作物として創作されているので、本件著作物に対する著作権を侵害したと言うことはできない」と判断した(ソウル西部地方法院 2012.8.23.宣告 2012ノ260判決)。
 しかし、大法院では次のような理由で原審を覆し、事件を有罪趣旨としてソウル西部地方法院に差戻した。

3.判決の要旨

 本件著作物とこれを撮影した本件写真において、本件著作物が本件写真の付随的部分に過ぎないと感じられる場合には、本件著作物と本件写真はそれぞれ独立した別個の著作物なので著作権侵害が問題とはならない。しかし、本件著作物の創作的表現形式が本件写真の主要部として本件写真の中にそのまま感じられる場合、本件写真は本件著作物と実質的に類似することになるので、本件著作物の著作権を侵害したと言わなければならない。
 これについて具体的に見ると、本件著作物は2002年の韓日ワールドカップ当時に広く知られた応援文句を素材としたもので、その創造的個性は伝統的な筆文字体を使用して躍動的かつ生動感のある応援の雰囲気を表現している図案自体にある。
 一方、本件写真もワールドカップの雰囲気を形状化することを目的に撮影されたものだが、本件写真は本件著作物の本来の姿をそのままあるいは大部分認識可能な大きさと形態で、写真の中心部にすえて撮影することで、本件写真の中に本件著作物の創造的個性、即ち、躍動的かつ生動感のある応援の雰囲気がそのまま再現されていると判断される。
 これを考慮するとき、本件著作物と本件写真の間には実質的類似性があるので、本件写真は本件著作物の著作権を侵害したと判断され、このような状況で被告が営利を目的として本件写真をホームページに掲示して、無断で販売することを認める場合、結果的に本件写真が本件著作物の需要を代替することになり、本件著作物の著作権者の著作物利用料収入の減少を引き起こすはずである。
 従って、本件著作物が正当な範囲内で公正な慣行にのっとって本件写真に引用されているとは言えず、本件写真の配布行為も公正な引用に該当するとは言えないので、本件侵害事件に対し無罪を宣告した原審を破棄して差戻す。

4.コメント

 本件著作物が絵画や書道のような通常の文芸的な美術著作物ではなく、商業的かつ機能的な目的を有する文字を素材として図案化されたものだとしても、本件判決がその構成を検討して著作物性を認めている点は歓迎できる。特に、フォトライブラリー会社が本件著作物が描かれたTシャツ等を着用したモデルを撮影した写真をホームページに掲示する行為、及び写真作家がフォトライブラリー会社に対する委託販売のため写真を譲渡する行為が、著作権法上の複製権侵害及び配布権侵害に該当するか否かが核心争点であると言えるが、本件著作物を十分に認識しえる大きさと形態で本件写真を作成してフォトライブラリー会社に譲渡し、さらに一般人に販売する営利的目的でホームページに掲示したのであれば、これは著作権侵害行為に該当すると言うべきである。本判例はこのような行為が著作権侵害に該当することを明らかにした最初の判例である点で意味があると言える。

(※図1

資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

東京都知的財産総合センター

東京都台東区台東1-3-5 反町商事ビル1F
電話:03-3832-3656
E-mail:chizai【AT】tokyo-kosha.or.jp
※迷惑メール対策のため、「@」を【AT】としています。