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韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情 トップページへ

2015年4月22日 掲載

韓国の2014年改正商標法及びデザイン保護法と侵害事件の最新事情

VI 知財権侵害の最新事件 商標権侵害事件

‘※1‘は‘DAISO’の商標権侵害である

1.基本情報

事件番号:ソウル高等地方法院 第5民事部 2013ナ2026249判決(2014.6.19.宣告)
原審判決:ソウル西部地方法院 2013.10.25.宣告 2013ガ合1440判決

2.事件の経緯

 原告は生活用品雑貨卸・小売業者であり“※2”の商標権者である。被告は2012年3月8日、“DAISO”と類似する生活用品小売業等を指定して“※1”をサービス標として出願し、同標章を文具、玩具、生活用品、生活雑貨等の卸・小売業に使用してきた。
 これに対し原告は被告を相手取ってソウル西部地方法院に商標権侵害禁止及び損害賠償を請求する訴を提起したが、1審法院は原告の登録商標と被告の登録商標とは互いに非類似であることを理由に、原告の請求を棄却した(ソウル西部地方法院 2013.10.25.宣告 2013ガ合1440判決)。
 しかし原告の控訴による控訴審にて、ソウル高等法院は次のような理由で、被告のサービス標は原告の登録サービス標と類似するとしてサービス標権侵害を認め、被告のサービス標の使用を禁止し、損害を倍賞するよう判決した。

3.判決の要旨

 被告の標章“※1”は、“※3”、“※4”、“※5”で構成されているが、各構成部分が不可分的に結合しているわけではないので、それぞれ分離して呼称・観念されえると判断される。
 その場合、原告の登録サービス標“※2”と被告の標章における“※3”部分は、前後の2文字ずつ計4文字の共通する大文字アルファベットが、類似する文字体と形態で配列されているので、このような文字の全体的な構成と輪郭を離隔的、直観的に観察すると、その外観が互いに類似して見える。また、両標章はいずれも3音節からなっているが、短い単語の発音において大きな比重を占める語頭部と語尾部の呼称が完全に同一で、比較的強く発音されることのない中間音節に微細な差があるに過ぎないので、全体的に呼称が類似する。
 また、原告の登録サービス標は日本語“大創”に由来する単語で、韓国語では特別な観念がなく、被告の標章も特にこれといった観念がないと思われるので、観念を互いに対比することはできない。
 さらに、被告は被告の標章を使用して生活用品、生活雑貨等の小売業を営業しているが、これは原告の登録サービス標の指定サービス業と酷似する。また、原告と被告が取り扱っている主要営業物品と顧客層が互いに重なり、被告の売場雰囲気や製品の配列方式も原告の売場と相当に類似する。
 これらの点から、被告には原告の登録サービス標が獲得した周知性に便乗しようとする意図があることが推断でき、これにより一般需要者としては被告のサービス業が原告のサービス業と出所が同一又は少なくとも何らかの関連性があるかのように誤認・混同するおそれが相当にある。

4.コメント

 商標権侵害禁止請求事件において、商標の類否を判断する際には、商標の外観、称呼及び観念の形式的な比較にとどまらず、全体的に商品出所の誤認・混同を避けることができるか否か、総合的に実際の取引界で表示された標章が商品の識別標識として使用されているか否かを全て考慮しなければならない。このような点で本判決は原告と被告が取り扱う物品と顧客層とが互いに重なり、被告の売場の雰囲気や製品の配列方式等が原告の売場と相当に類似している点等の具体的な実情等を十分に考慮した上で、両サービス標が相互に類似すると判断している点で、妥当な説示であると言える。
 裁判部は本判決にて、被告側に総売上利益額約1億3,000万ウォン(約1,358万円)を原告に賠償するよう判決した。本判決は他の企業のイメージに便乗して不当な利益を得て、消費者を混乱させる類似商標の使用を根絶しなければならないという最近の判決と脈を等しくしていると言うことができる。尚、被告は本判決に不服して大法院に上告した。

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資料協力 リ・インターナショナル特許法律事務所

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