〔合同会社Re-al〕

力触覚技術が世界を変える。
実証試験中のフィッシングロボットを見に行く!

合同会社Re-al
工学博士
新明 脩平 氏

合同会社 Re-al (神奈川県川崎市)は、慶應義塾大学が世界に先駆けて実現した最先端の力触覚技術(リアルハプティクス)を利用したフィッシングロボットの開発に取り組んでいる。従来のロボットには、人間の様な「触覚」が無かった。そのため何かに接触しても気付かないし、力の加減が分からずモノを壊してしまう。つまり人と同じ様にチカラの加減ができなかったのだ。同社はリアルハプティクス技術を応用し、人間が作り出す優しく柔軟な動作を再現するロボット開発に成功。IoTデバイスを使えば、まるで遠く離れた海で釣りをするように距離や時間を越え、人と同じ力加減の動作をありのままに再現できるという。今回は、IoTを利用した様々な基礎研究の可能性を探るべく、話題のANA Avatar XPRIZE(*注)に挑戦する「アバターフィッシングロボット」について、合同会社 Re-alを取材した。

人の為に生まれた、人らしさを再現する技術。
これは正に、将来のリアルアバターを目指す基礎研究。

開発中のアバターフィッシングロボットは、慶應義塾大学のハプティクス研究センター内にある。ハンドル部分にモータの直結されたフィッシングロッドが二組設置され、一方のロッドに力が加わると、もう一方にも瞬時に感触が伝わると同時に、微妙な反力も忠実に感じることができる。これはつまり、遠く離れた場所でも実際にリアルな釣りを体験できる全く新しいシステムだ。まだ実証試験中だが、これは正に将来のリアルアバターを目指す基礎研究と言えるだろう。既に同社は開発費用捻出のため、クラウドファンディングで資金調達を実施しており、当初目標の3倍を集めたという。

基本技術はチップ化しデータの秘匿性を確保

リアルハプティクスの基本技術は、チップ化してデータの秘匿性を確保した上で、既に2014年から共同研究を希望する40社ほどに貸与し共同研究をスタートさせていると言う。将来的に非常に大きな可能性を秘めたプロジェクトとして、その注目度の高さがうかがえる。現在はチップの貸し出しに限られるが、実際に製品化されれば販売に繋げる計画だ。実際のフィッシングロボットの詳細について新明脩平 工学博士に聞いた。 

リアルハプティクスは触覚の伝送を可能にする世界最先端技術!

新明博士:「人間は視覚・聴覚・触覚の3つの感覚を通じて現実世界を認識しています。テレビやラジオ等、視覚や聴覚を伝送する技術はすでに実用化されていますが、触覚を伝える技術は未だに実用化されていません。リアルハプティクスは触覚の伝送を可能にする世界最先端技術です。現在実証実験中のアバターフィッシングロボットは、遠隔地の釣竿と操作側の釣竿のモータを連動させることで魚を釣った感覚をリアルタイムに再現できるシステム。釣竿にかかる力や触感を再現しています。釣り好きな方には是非体験していただきたいですね。当初は、職人の手の動きをロボットに再現させたいという考えから、日本らしい陶芸や書道も候補にあがりましたが、エンターテイメント性や分かり易さから、釣りを選びました。今回のプロジェクトでは「手」の感覚を再現していますが、今後は体の様々な部位の触覚で実用化を進めていく予定です。 」 

新明博士:「従来から二つのモータを使って回転角を同期することはできたし、力を伝えることもできました。しかし位置と力は、本来異なるもので、実は同時に伝えることが難しかったのです。力触覚の研究自体は70年以上の歴史があります。当初は人の力を伝達するだけのマジックハンドの様なものから始まり、次に電気モータで同期する研究が続きましたが、人の微妙な感触を伝えることはできませんでした。リアルハプティクスは、慶応義塾大学の大西公平教授(開発当時。現・特任教授)が特殊なアルゴリズムを開発して、初めて実現した技術です。」

機械に力感覚を持たせる事で未来を広げる。

新明博士:「この技術を応用することで、将来は深海や真空など人が立ち入れない現場での作業をより安全に行える様になります。例えば放射線環境下での作業や災害現場での救助にも役立つでしょう。更に動作自体を保存し再現すれば、少子高齢化による労働力不足や技能伝承などの諸問題も解決できるかもしれません。ロボットに感覚を伝送すれば、病気等で外出できなくても海外旅行を体験ができるかもしれません。会えない場所にいる両親にお酌をして感謝の気持ちを伝えたり、遠く離れた子供と触れ合って愛情を伝えたりすることもできるでしょう。 私たちはリアルハプティクスによってそんな未来を創りたいと考えています。」

擬似的でなく、実際の触覚を伝えるリアルアバターの世界を目指す。

リアルハプティクスは、世界的にもトップレベルの研究であり、人に寄り添った日本的な技術だと感じた。将来の研究のテーマは色々考えられるが、新明博士は、「今のところこの研究に集中したいし、この研究をたくさんの人に知ってもらって普及させたい」と語る。同社は現在、ANA Avatar XPRIZE(注:参照)への出場に向け準備を進めている。グローバル・コンペティションを勝ち抜いて、研究資金を獲得し、この分野の研究開発を更に深めたいと考えている。

空間を超え、大切な人と「触れ合える」体験!

リアルハプティクスは、人間が創り出す優しく柔軟な動作の伝送・記録・再現をおこなう技術だ。従来のロボットでは困難とされた、果物をやさしく掴む等、器用で繊細な作業を自動化したり省力化したりすることが可能となれば、電話やメールでは伝わらない「人の気持ち」を触覚で伝えることもできる時代が来るのだろう。技術の進歩は、限りなく「人の感覚」に近づきつつある様だ。

写真キャプション:モーションリブのAbcCoreでデータの秘匿性を確保

リアルハプティクスのパテントは、慶應義塾大学が持っており、この技術をアバターフィッシングなどエンターテイメント分野で活用するのがRe-alだ。更にこの技術の普及を目的にベンチャー企業「モーションリブ株式会社」が設立され、基礎技術をチップ化している。モーションリブのAbcCore(写真)は、DC/ACサーボモータの力加減を制御する力感覚コントローラー。チップ化しデータの秘匿性を確保している。位置・速度・力制御の機能に加えて、モータ2台を運動同期した力感覚の伝送ができる。モータにかかる負荷力は推定アルゴリズムにより算出されるため、力センサ/トルクセンサの設置が不要となる。

*(注):

「ANA AVATAR XPRIZE」は、2018年、米国のXプライズ財団がANAホールディングスをスポンサーとして始めた4年間のグローバル・コンペティション。賞金総額は1,000万ドル。 操作者の分身となるAVATAR(アバター)ロボットを遠隔で操作し、視覚・聴覚・触覚などで周りの環境や人々を感じ、行動できる多目的AVATARを開発することが求められている。合同会社 Re-alも、当コンペティションへの挑戦を表明している。

企業情報


合同会社Re-al
所在地
神奈川県川崎市川崎区駅前本町11−2
川崎フロンティアビル4F
事業内容
電子回路 アプリケーション・ソフトウェア 制御技術、
応用システム AIパーソナルロボット VR・AR エンターテイメント
メンバー
5名
https://re-al.co.jp/