東京都中小企業振興公社

no.189

最新システムの導入で印刷業務の効率化を実現

タック印刷にはこの6~7年で、20~30代の社員が10人入社した。「IT化の推進役は営業事務の若手ですし、製造や検査部門でも若手が最新機器の導入を進めています。彼らが能動的に意見を出せるような環境作りも、私の重要な役目ですね」と語る代表取締役の髙田朋幸氏(写真左端)

「NHK受信章」も手がけた老舗印刷会社

 タック印刷は1965年設立の企業。当初は、NHKの受信契約締結済みであることを示すシールで、一般家庭の玄関先によく貼られていた「放送受信章」の印刷を主に請け負っていたが、粘着フィルムに印刷加工する技術を生かして他分野にも進出。現在は、工業機械や電機製品に貼るラベルの製造を主に手がけている。
 同社の特徴の1つは、米国の「UL規格※1」に対応していること。これは、北米など海外向け製品を作る際にかなり有利だ。また、インクではなくレーザーで印刷する「レーザーマーカー」を早い時期から導入し、効率的に印字できる点も大きな強みとなっている。
「ラベル印刷を手がける企業の中でレーザーマーカーを使い始めたのは、当社が初めてかもしれません。それだけ、最新技術の導入には積極的なのです。また、ミスプリントなどのトラブルを徹底的に減らして取引先からの信頼を勝ち取ってきたことも、当社が胸を張れる点の1つです」(代表取締役 髙田朋幸氏)

システム導入で大幅な業務効率化に成功

 リーマン・ショックと東日本大震災の後、既存顧客との取引が減って厳しい状況に陥ったタック印刷だったが、展示会出展や自社ホームページの作成などで新規取引先の拡大に成功。さらに、2019年からは社内システムを新構築して社内の意思疎通と業務効率を飛躍的に高め、SDGsや働き方改革へも取り組んでいる。
「東京都中小企業振興公社(以下、公社)の『革新的サービスの事業化支援事業※2』を利用し、受注データを簡単に入力できる営業業務システムを構築しました。さらに、公社の『IoT、AI導入支援(導入前適正化診断)※3』を使って、専門家の支援を受けながら製造業務システムの導入を果たしたのです。これらにより、以前は1日に50点の受注入力しかできなかったのが、1日300点の注文を受けても問題なく対応できるようになりました」(髙田氏)
 髙田氏は普段から公社のホームページをチェックし、情報収集やセミナーを受講していた。IoT、AI導入支援サービスも、公社のセミナーで存在を知ってすぐに申し込んだそうだ。公社サービスや助成金を利用したことが、経営革新に大きく寄与したのである。

現場スタッフの中にはITに不慣れな人もいる。そこで社内システムを構築する際には、使いやすさを何より重視した

多忙な経営者ほど公社を利用すべし

 目の前の業務に追われ、長期間の取り組みが必要な経営課題の解決を後回しにしてしまう経営者は少なくないだろう。そういう人こそ、公社のサービスを利用すべきだというのが髙田氏の意見だ。
「自社だけで業務改革に取り組むと、途中でサボって尻すぼみの結果に終わる危険性があります。でも、専門家の方にお尻を叩いてもらえば、最後までやりきるしかない(笑)。おまけに、アドバイスがもらえて助成金も利用できるのですから、申し込まなければ損です」(髙田氏)
 髙田氏が大切にしているのはスピード感。顧客からの要望にはすぐ対応するよう全社的に心がけている。
「システム導入で現場スタッフの業務量が見える化されたため、営業が顧客からの要望にどのくらいの期間が必要か判断しやすくなりました。それも、素早い対応に役立っているのです」(髙田氏)

3Dレーザーマーキングの技術を使えば、曲面にも印刷加工が可能。工夫次第で面白いモノが作れそうだ

今後も社内システムの機能向上目指す

 すでに述べた「革新的サービスの事業化支援事業」や「IoT、AI導入支援(導入前適正化診断)」以外にも、経営革新計画申請のサポートを受けるなど毎年のように公社サービスを利用しているタック印刷。今後も公社の支援を受けながら、社内システムの機能向上を目指したいと髙田氏は考えている。
「現在のシステムでは、各製造スタッフの3日間分くらいの業務量しか確認できません。未割り当ての業務がどのくらいあり、1~2カ月先の製造部門がどのくらい忙しいのか分かれば、営業が顧客との納期調整するときや、メンバーが有給休暇を取るときなどに大いに役立つでしょう。そこで、公社の専門家の方に助けていただきながらシステムのブラッシュアップに取り組んでいるところです。これからも現場からの要望を実現するため、努力していきたいです」(髙田氏)

※1 米国のUL LLC(Underwriters Laboratories Limited Liability Company)が策定する製品安全規格。
※2 革新的サービスの事業化に必要な経費の一部の助成と事業化に向けた専門家を派遣する事業。
新規募集は終了し、令和4年度より「「新しい日常」対応型サービス創出支援事業」を実施している。
※3 無料で企業の事務所や工場などへ専門家を派遣し、現場に即したアドバイスを行う事業。
令和2年度に終了し、現在は「生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業」を実施している。

利用事業:デジタル技術活用推進事業

ICT、IoT、AI、ロボット等のデジタル技術の導入・活用に関する総合的な支援を実施することで、生産性向上に資する取り組みを支援する事業です。現地調査を行って全社的・経営的な視点から課題を明確にした後、課題に合ったアドバイザーが、デジタル技術の導入から活用までを一貫して支援します。
お問い合わせ 総合支援課 デジタル技術活用推進担当
TEL 03-3251-7917
https://iot-robot.jp/

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