〔スペシャル対談 -Part1- 〕

IoTへ。一歩進める中小企業の思考法」〜IoT活用に取り組んだ経営者が
 貴社が踏み出す一歩を後押しします〜

右より 
牧野拳一郎氏(株式会社マキノ 代表取締役社長)
足立直隆氏 (株式会社レスティル 代表取締役)
神戸麻衣氏          (モデレーター)

はじめに


先日、開催されたセミナーにおいて実際にIoTを導入した株式会社マキノ 代表取締役社長の牧野拳一郎氏、株式会社レスティル 代表取締役の足立直隆氏の両名を招き 、神戸麻衣氏の進行のもと、中小企業の経営者からIoT導入の経緯やその活用方法、課題などをお話しいただきました。漠然とはわかっているけど、自社にどのように導入すればわからないという方にとり、中小企業のIoT導入現場の実態を知る絶好の機会となったのではないでしょうか。
その様子を3回に分けてポータルサイトにて御紹介させていただきます。




● IoTを導入して得られたメリットで、初めは期待していなかったメリットとは?



牧野氏:工場は24時間、機械、人が稼働し続けなければならないのですが、IoTを導入し得られた一番のメリットは、稼働の妨げを未然に防ぐことが出来ることです。出来たり、出来きていないというのが画像で見えたり、数値化して復元をしたり出来るところが非常に良かったと思いました。また、IoTは自分の会社で持っている武器の一つとして、最終的にはお客様への最高のサービスを提供するためのツールという位置づけとしても、いいことが多かったと思います。

神戸氏:今までは、受注があったときに人がいちいち工場に行って現状を確認していた部分が、IoTの導入により無人化になり、事務所に居ながら工場の状況が見えるなど、コスト削減のメリットやIoT導入による様々なメリットが伺えました。次は、サービスの面でIoTを取り入れて事業をされている足立社長に、当初は期待していなかったメリットについてお答えいただければと思います。

足立氏:IoTのメリットはネットに繋がるということだと思います。ネットに繋がると、自分が当初計画をしていなかったようなサービスを提供できる可能性が出てくるので、商品ということではなくストックビジネスとして、ポスケット自身がお金を稼ぐような仕組みを創れるという可能性が出てきます。

神戸氏:足立社長が開発しているポスケットだけでなく、例えばポットを使った給湯のシステムが遠隔で連絡ができたり、コンタクトレンズにIoTを仕込むことで病院と連携し血糖値の濃度が見れたりというIoTの活用方法もあります。両社ともに使い方は違いますが、様々な部分でIoTのメリットが期待できるので、皆様が導入されるにあたっても、自分たちが期待しているのとはまた別のメリットが発生するということがすごく分かりました。 次に、今後IoTを使ってどのようにサービスを高めていこうと思っていらっしゃいますか。

牧野氏:機械をIoTに繋げると、機械からデータを吸い上げて、それが今後自社のデータベースになります。データベースがあれば、それをビッグデータとして利用することができます。これから先は人工知能がどんどん世の中に出てきて、まだ人工知能は恐らく3歳児程度の知能しかないのですが、その知能を増やすという意味で、一日も早くいろんなもののデータを取っておく、何に使うか分からないけれどもデータだけは蓄積をしておくことによって、人工知能が本当に会社の一部として動き始めた時にビッグデータとして使えればいいと思います。それは人間でいうと、一所懸命に勉強して、単語を覚え、いろんな知識を覚えたことで、引き出しが増えることだと思います。

神戸氏:そのサービスをどのように高めていくのでしょうか。

牧野氏:そのビッグデータを利用して、一分以内に、ものづくりの見積もりの回答を人口知能がしてくれるという時代が比較的近い未来に起きてくるので、会社のサービスの一つとして世の中に広めていきたいと思います。機械のデータを取るときには社内のインフラは非常に大事ですので、今有線で機械と繋げていますが、無線は通信が途切れるますがWi-Fiも付けておけば、バックアップ用としてもBCM(事業継続マネジメント)の観点からもいいと思います。

足立氏:今ポスケットはかなり機能を限定していますが、これからお客様がさらに便利に使えるという機能がいくつかあります。一つは、スマートホンとボックスの間の通信はBluetoothですが、本当はポスケット自身が直接Wi-Fiに繋がるようにしたかったのです。今、自宅のルーター経由でWi-Fiに繋がるという方式をとっています。これが直接Wi-Fiでネットに繋がることができれば、場所が移動しても、自宅にルーターがない場所でもネットに繋がることができ、いろんなサービスができるようになります。それから、例えば温度センサーを付けることによって、保冷品みたいな食品を取り扱うようなところでもサービスができます。電気冷蔵庫みたいに自ら冷やす機能は付けないにしても、保冷剤を入れた時に、ポスケットが何度未満を何時間保持できる保証ができていて、それをセンサーで測ることができれば、そういう食品市場に商品が広がっていく可能性があります。 また、パスワードに関して確実なセキュリティを求めようと思うと、ブロックチェーンみたいなものを付けて活用していく、ということもあるかと思っています。



● どうして多くの中小企業が、IoTの導入に踏み出せていないのか、また、今後IoTの導入を進めていくうえでの課題とは?


牧野氏:自分の会社で最小限IoTで何をやりたいかを見つけるか、もしくは選択と集中して特化していけば、IoTの導入の障壁は低くなると思います。なんでもかんでもやってしまおうと思うと、これはシステムに近いものなので、うまくいかないと思います。社員は定時でなるべく帰ると思うのですが、社長は24時間働き続けなければいけない、けれども会社の状況はどうなっているのか、24時間社長の代わりに監視をしてもらって、翌日どうなったのかということが見えるだけでも、経営をしている側としては安心が得られます。自分のやっていることが正しかったという確認ができる程度の、小さなことから始めることが第一歩だと思います。


神戸氏:足立社長がIoTを導入する過程で、ちょっと変えることができたらいいということについて教えていただけたらと思います。


足立氏:IoTということではなく、創りたいのものを創ったら、それが世の中でいわれているIoTだったということです。IoTはインターネットオブシングスなので、I(アイ)の部分と、T(ティー)の部分があるわけですが、弊社の商品の場合一番苦労したのは、宅配ボックスはネットに繋がるのものなので、宅配ボックスを作っている人と、ネットに繋げるための基板を作っている会社とは、まったく別の会社です。この両社をマッチングさせて、いろいろ開発の仕事を進めていくというのは難しかったですね。箱屋さんは箱屋さんだし、基板屋さんは基板屋さんなので、お互いが、どうやったらネットに繋がる宅配ボックスができるのか、それを創っていくのはすごく大変でした。


神戸氏:そもそもIoTをお二方はどこでお知りになったのですか。


牧野氏:たまたま20年くらい前からやっていたことを引き続き進化させてやってきたことに、IoTが後付けでくっついたので、どこでとか、どこからとか、とくにはないと思います。これから先も新しい言葉はどんどん生まれると思いますが、それを意識するということはないです。


足立氏:東京都のご支援等をいただいて、ものを創ってく中でIoTを知ったのですが、正直言うと、IoTをどこで知ったかとか、自分の商品がIoTかどうかということは、ちょっと格好いいかなと思ったのです。それは、どういうことかと言うと、宅配ボックスを創っているというよりも、IoTの宅配ボックスを創っていると言った方が、受けが良かったということが実はありました。どこで知ったかというより、うちの商品もIoTだろうと、IoTにしてしまったということですね。実際ポスケットはIoTだと思います。


神戸氏:お二人とも、IoTを意識してなかったけれども、結果的にIoTになっていた、ということですね。

● 経営者はIoTの知識を、どれくらい、どこまで持っていなければいけないのか


牧野氏:難しいですね。自分が考えている経営理念とか会社の方針と、IoTをどういうふうにマッチングさせるか、他人から押し付けのIoTではなく自分でやる過程でIoTをどう利用しようかということですが、システムやハードウェアは、なかなか人間ほど柔軟にものを考えてくれません。世の中に今ある仕組みの中で、IoTを企業としてどれだけ柔軟に取り入れられるか、それを会社の中で皆が情報を共有して、IoTを導入する前より、導入した方がこれだけ良くなる、というある程度の予測を立てて、そしてIoTを導入後、これだけ本当に良くなった、ということが言えればいいと思います。知識というよりは、IoTを導入することで、会社全体が皆で良くなるんだという方向付け、道義付けという方が大事かなと思います。


神戸氏:自身の向かっていく目標や目的に沿って、皆さんが一緒のベクトルを向いてもらうための目的付け、方向付けといった意味での知識があれば大丈夫だということですね。


牧野氏:知識は、IoTに関する展示会があるので、必ず足を運んで、最新の技術や、IoTをするためのデバイスや、RFID(小型のアンテナが組み込まれたICチップ)や、電子ペーパーの活用など、いろんなものを見てその情報を自分の中に入れておいて、その後に、展示会で見た“あれ”が使えるのではないか、というような場合があれば、その会社にコンタクトを取って、弊社と組んでやってくれますか、というように、常に情報のアンテナを立て張っておくということです。


神戸氏:幕張メッセや東京ビックサイトでIoTを取り入れた展示会をたくさんやっていますし、IoTを活用するために、どんどんいろんなものが進化していくので、情報を知ったり目に触れておくと、その知識が自分の中に入り、今後自分たちがサービス展開していく中で、新しいことにIoTを取り込むきっかけになるとすばらしいですね


足立氏:勉強をしないよりは、した方がいいと思います。メーカーさんや開発の技術者と話が通じないと思ったので、勉強は必要だと思います。ただ、そんなに深くはいらないと思います。センサーみたいな話と通信ツールの話、この二つくらいは、今世の中にどういう規格があって、どういう装置があるのかぐらいは分かっておくと、話はできるのかなと思います。それとプロジェクトマネージャーみたいな人が必ず1人いた方がいいと思っています。自社の中にいないのであれば、開発を委託する会社とは別に、プロジェクトマネージャーのように管理ができるような会社にお金を払ってでも入ってもらった方がいいと思います。これは本当に自分がやってきた失敗ですが、自分は、自分がハブになって開発の会社と直接話をしてましたが、そこに時間の無駄がありました。開発に委託するお金とは別に、プロジェクトマネージャーに対して払うお金をちょっと余分に取っておいた方が、結果として開発のスピードが速かったり、自分が思った通りのものが出来たり、ということがあるので、プロジェクトマネージャーにお金を使うというのはあると思います。


神戸氏:牧野社長は、アドバイスをしてくださった方はいらっしゃるのですか。


牧野氏:将来に向けたインフラを整える面で、LANケーブルの種類、通信速度、無線LANなど、様々なアドバイスを外部に頼りました。工場が大きくなり会社が大きくなると、インフラは継ぎはぎで整えていくのですが、継ぎはぎだらけだと通信が途絶えた場合どこが壊れているかが分からなくなります。製品自体で故障のチェックができるようなルーターを入れた方がいいとか、そういうアドバイスは言われた通りにしました。家電量販店で買ようなルーターと違うので多少お金はかかりますが、いざという時に復旧までの時間が短く済むので、そういうアドバイスは聞きました。社外でも、我々のような40後半の世代はパソコンを使えますが、若い世代になるとパソコンのキーボードを打つのが逆に遅くなっています。タブレットの時代になり、その世代の変わり目の人は、自分たちで創り上げるよう任せています。実例で言うと、大学と人工知能の共同研究をしているのは今20代の社員で、テーマを与えてやってもらっています。営業的にも、そういうことをした方がいいと思います。パソコンベースでネットの情報を収集し開発していたのものを若手に任せると、iPadやタブレット端末はキーを叩く手間がないため、データを取るのはタブレットでやった方がよかった、という結果になりました。事業承継を機にIoTを導入したという知り合いの会社もあります。