テーマ6 医療・健康に関する技術・製品の開発 1.現状・市場動向と課題現状と課題 増加する社会保障費削減のため、「健康寿命」の延伸が社会的課題(参考1~2) 政策動向 個人の健康情報を一元化する医療DXが始動ヘルスケア・医療分野の新産業創出に向けた実証プロジェクトや技術開発を促進 急速な高齢化の進展により、医療・介護にかかる社会保障費は増加の一途をたどっている。2019年度の社会保障費は約123.9兆円で過去最高の水準となり、そのうちの7割弱を高齢者の医療・介護・福祉にかかる給付費が占めている。 更なる社会保障費の増加を防ぐため、「健康寿命」を延伸する必要性が高まっている。わが国の「健康寿命」は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)で、平均寿命との差分(=医療や介護を必要とする期間)が男女ともに10年前後あるとされる。ヘルスケアによって国民の健康寿命が改善した場合、2034年には約3.3兆円の医療費・介護費を削減できるとの試算もある。 図表 32.平均寿命と健康寿命(出典1) 2022年、ソフトウェア単体のプログラム医療機器(Software as a Medical Device: SaMD)が初めて承認される SaMDは「デジタル技術を活用して予防・診断・治療を支援するソフトウェア」で、2014年に施行された医薬品医療機器等法(薬機法)によって、「医療機器」として位置づけられた。 当初はSaMDの審査プロセスや審査体制が確立されていなかったため、厚生労働省は2020年に「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略(DASH for SaMD)」を策定し、審査の考え方の公開、相談窓口の一元化、PMDAにおける専門部署の開設等、SaMD審査の抜本的な改革を進めてきた。 2022年4月には、スタートアップが開発した高血圧治療補助プログラムアプリが、国内で初めてソフトウェア単体の治療用SaMDとして承認され、SaMDの開発・実用化は新たな契機を迎えている。 (参考3)国は、2022年6月に策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」に基づき、個人の保健・医療・介護情報を一元化して利活用する医療DXの取組を開始した。 2022年10月には医療DX推進本部を設置し、PHR(個人健康記録)を推進するための全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテ情報の標準化等を進めている。 国は、2020年度から「ヘルスケアサービス社会実装事業」を通じて、新たなヘルスケアビジネスモデルの確立に向けた取組を支援してきた。2023年度からは、「ヘルスケア産業基盤高度化推進事業」を新たに実施し、地域で実装されたヘルスケアサービスの他地域への横展開を支援している。 都は、「東京都創薬・医療系スタートアップ育成支援事業」や「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト」において、中小企業・スタートアップによる医療分野への新規参入を支援している。
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