中小企業技術活性化支援事業令和5年度 新製品・新技術開発助成事業

助成限度額:1,500万円 助成率:1/2

ヘテロDB株式会社

令和2年度採択「GPUを用いた位置データ処理基盤の開発」

GPUを用いた超高速版・位置情報分析(GIS)システムの開発

開発内容

開発の経緯

 ここ数年、携帯電話や自動車といった移動体デバイスから収集したデータをデータベースに蓄積し、これを分析することでマーケティングや広告配信、あるいは異常検知に活用しようという動きが盛り上がっている。
 こういったデータは緯度・軽度といった「位置情報」を含むことが常で、この種のデータ分析にはPostgreSQLの拡張モジュールであるPostGISを用いることが多い。しかし、同時にこれらのデータはサイズが巨大になりがちで、計算負荷の高い位置情報分析に対して高速化のニーズが高い。
 当社の創業者である海外は、10年以上にわたりGPUを用いたデータベース検索処理の高速化に取り組んでおり、この成果であるソフトウェア製品PG-Stromの機能を強化し、PostGIS処理の並列化・高速化により処理時間の短縮を実現できると考え、開発に着手した。

開発の特徴

 PostGIS処理を並列に実行するには、これまでPostgreSQLのパラレルクエリ機能を用いることが唯一の方法であった。これはCPUのマルチコア機能を用いるもので、高々十数コア程度の並列度を実現できるのみである。
 一方、PG-StromのGPU処理がPostGISのロジックをサポートすることで、GPUに搭載された数千コアを並列に稼働させる事ができるようになり、また地理情報の探索に適したGiST(R木)インデックスをGPUでも使用することで、PostGIS関数群の実行スピードを飛躍的に向上させることができた(従来比200倍)
 これにより従来システムのダウンサイジングや、実行時間の制約から不可能であった位置情報分析が可能となり、例えば特定のエリアの携帯電話に広告を配信する、自動車に道路情報を配信するといった使い方が可能となる。

図1.緯度経度データの抽出と集計クエリで大幅な高速化を実現
図1.緯度経度データの抽出と集計クエリで大幅な高速化を実現
携帯電話など移動体デバイスの最新の位置を条件句に含むクエリを想定し、
1,600万件の緯度経度データをその属する市区町村ごとに集計するクエリを実行した。
従来のCPU版PostGISでは160s以上を要したクエリが、PG-StromとGPU版PostGISでは
0.83sで応答するなど、劇的な性能改善を見せている
図2.製品の構成例
図2.製品の構成例
従来であれば当然に複数のサーバを用いて分散並列処理が選択肢となっていた規模のシステムであっても、
高密度・高性能なGPUを用いることで、一般的な2Uラックサーバのスタンドアロン構成に収めることができる。
これにより、システム構成をシンプルに、運用に関わる人的負担を大きく軽減することができる。

今後の展開

 現在、パートナー企業と提携し、基盤としてのデータベースシステム(PG-Strom)上に、PostGISを用いたソリューションの開発を行っている。また並行して、クラウド環境での利用に向けた検証・開発を進めており、2023年中には本件技術を取り入れたPG-Strom製品がクラウドシステム上でも利用可能となる見通しである。

お客様の声

活用メリット

本機能はかなりの複雑な計算処理を内包しているため、通常の案件を進めながら新機能の開発・強化を行うには相応の期間を要することが想定された。
しかし、本助成事業に採択されたことで、集中して開発作業を行う時間を作ることができ、わずか半年ほどでGPU版PostGISおよびGPUメモリキャッシュという新機能を完成することができた。

表彰・実績等

  • 2020年 新製品・新技術開発助成事業採択
  • 2014年 OSS貢献者賞受賞 (日本OSS推進フォーラム)
  • 2007年 天才プログラマ/スーパークリエータ認定 (IPA未踏ソフトウェア創造事業)

ヘテロDB株式会社

代表取締役:チーフアーキテクト 海外 公平
住所:東京都品川区北品川5-5-15 大崎ブライトコア4F 品川区産業交流施設 SHIP内 416号室
設立:2018年
資本金:990万円
従業員数:1名
事業内容:GPUを用いたPostgreSQLデータベースの高速化技術「PG-Strom」の開発販売と、関連技術領域に対するコンサルティングサービス
URL:https://www.heterodb.com/