9(2)人材戦略に求められる5つの共通要素・施策①将来を見据えた人材構成と要件の明確化(動的な人材ポートフォリオ)戦略の観点から将来の事業の変化・変革を見据えた人材構成と人材要件の設定が必要となります。人材ポートフォリオとは、要員計画における人材要件、組織内での人材構成となるもので、将来の環境・事業変化に合わせた人材構成と人材の質の基準をマトリクス表で示したものです。生産年齢人口の減少から、少数精鋭化にとどまるだけでなく時代の変化を見据えた新たな異能な人材の組み合わせが求められます。目指すべき事業領域とこれに必要な人材の役割・要件を書き出すとともに、限られた予算・条件の中で、“どう最適化の組み合わせを図るか”の検討が重要です。③時代に適合した新たな企業・風土文化の再構築と定着企業風土・文化は、経営戦略と合致した人材戦略の実行により、個人や組織の行動が変容し、そのプロセスの中で醸成されていくものです。詳細はChapter3にて解説しますが、組織における時代・環境の変化をビジネスチャンスに変える感知・先見力と構想力や従業員一人ひとりが方針・ルールに基づき、業務遂行を目指す完遂力が実現の条件となります。データ(数年分:3~5年)がなければスタートできません。イ….データの一元管理…部署ごとではなく、企業の1つのシステムとしてリアルタイムでアクセスできなければなりません。ウ….統計の基本のわかる人の配置…統計リテラシーを有する人の配置が必要となります。合わせて統計ソフトの活用(市販の統計ソフト、エクセルの統計ツールや一定の実績あるフリーソフトの検討)を進めることで、自社で定期的にデータの検証を行うことが可能となります。「人的資本」情報開示の動き「人的資本」に関する情報開示の動きが加速してきています。国際標準化機構(ISO)のガイドラインである「ISO30414」とは、アメリカではすでに上場企業に義務化されており、「人的資本に関する情報開示」について定めた世界初の国際規格となります。ビジネスのグローバル化が進む中、日本企業が生産性や企業価値を高めていく必要があること、人材投資とその効果の見える化がその目的となります。「ISO30414」は、2018年に公開されており、参考までに一部項目を挙げると、コンプライアンスと倫理、コスト(人件費、採用コスト等)、多様性、リーダーシップ、組織文化(エンゲージメント、従業員満足度、定着率等)、組織の健康・安全・福祉、後継者の育成などがあります。これは、すべての項目を開示する義務はなく、内容は企業が判断します。政府指針としても従業員の育成状況や多様性の確保といった人材投資にかかわる19項目の経営情報の開示を求め、有価証券報告書への記載を義務づけました。 *人的資本可視化指針より
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