令和5年度 人財マネジメントハンドブック
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※『人的資本経営』とは:人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方(経済産業省)1 いま、従来「人件費」のように企業にとってコストと考えられていた人材を、投資の対象として捉え直そうという「人への投資」が注目されています。 我が国の動向も2023年3月期決算以降、大手4000社に人的資本の開示が義務化され、投資家のみならず、企業の人材確保・採用にも大きな影響を及ぼすものとして、人的資本経営に取り組まなければという切迫感を加速させているのも要因のひとつかもしれません。 しかし、少子高齢化の影響による労働力人口の減少、業務効率化を行うためのDX導入を担う人材の不足、更に日々発展し続けるデジタル技術についていける人材を育成する必要性など、山積する人材課題はまさしく経営課題そのものであり、これらを背景とした『人的資本経営』は、企業経営に避けては通れないものとして対応が迫られているのです。 中小企業の皆様の足元を見ても、円安の進行に伴う原材料や電気料金等の高騰、デジタル技術導入や脱炭素化、コロナ禍における人々の意識の変化など、経営環境の変化が次々に顕在化するにつれ、慢性的な人手不足にも拍車を掛けています。 まさしく、企業価値を高める=人財という考え方が、大企業のみの関心事などと軽視できない現状が押し寄せてきています。さらに、人材確保の市場においても、成長の機会を望む若者が、人財に注力する企業を就業先として選ぶ時代なのだと痛感させられる現実があります。 人財の悩みは経営者にとって生命線とも言える切実なものなのです。 公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下、公社)においても、中小企業の持続的な成長や価値創造に『人的資本経営』が重要であると考え、令和5年度から中小企業の人的資本経営支援事業をスタートしました。 普及啓発セミナーをはじめ、学びをシェアするワークショップや次世代リーダーの育成スクールを通じて、人的資本経営をどのように経営に取り入れていけば良いのか、中小企業の皆様と一緒に考え、様々な角度から組織を成長させる取組みをはじめたところです。 公社では平成29年3月から人材育成や組織構築のためのハンドブックを作成し、その活用法を伝えるセミナーを開催しています。 人が輝く経営とは何なのか、折角確保した貴重な人財をいかにマネジメントすれば良いのか、持続的な成長や価値創造が可能な組織とは、など、多様な人的課題に悩む中小企業の皆様にとって、本誌が解決へ導くヒントや「人的資本経営」に取り組む変革の一助になれば幸いです。令和5年8月公益財団法人東京都中小企業振興公社は じ め に

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