令和5年度 人財マネジメントハンドブック
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14(1)人的資本経営のトレンド(潮流)とキーワード・方針の解説中小企業においては、業種・業態や規模等により百社百様の実態がありますが、マクロ的視点から以下のトレンドを押さえておく必要があります。新型コロナウイルスの到来をキッカケに、私達の生活は一変しました。ビジネスシーンでのデジタル化がさらに加速し、テレワークが進んだことにより、働く場所や時間にとらわれない自由な働き方が選択できる人も増えました。また、SDGsやダイバーシティ、ウェルビーイング(健康経営)など、不平等や差別の撤廃、多様性の尊重、健康と幸福の追求等、世界共通の目標に対する理解と取組が進むことにより、様々な属性をもつ個人がそれぞれの個性や考え方を相互理解しながら共通の目的に向かって働くことが当たり前の時代になりつつあります。そこで、今の時代に必要な企業経営の在り方として経済産業省が提唱するのが「人的資本経営」です。「人的資本経営」の定義は、「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的企業価値向上につなげる経営のあり方」とされています。詳細は、令和2年9月「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会…報告書」(人材版伊藤レポート)に記載されています。従来から人材は経営資源の一つとされ、人材育成や能力開発の重要性は問われてきました。しかし、いま、なぜ「人的資本経営」というキーワードであらためて人材に注目が集まっているのでしょうか。変化が激しい時代においては、これまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も、環境変化に柔軟に対応し、想定外への事象への強靭性(レジリエンス)を高めていく変革力が求められます。変化へ柔軟に対応しながら、企業の持続的成長につなげていく対処方法が「人的資本経営」なのです。日本はGDPで世界3位の経済大国ですが、持続的な企業価値向上を進める上で重要な「一人当たりの労働生産性」、「賃金水準」、「従業員エンゲージメント」等の指標の国際的比較において、スコアが相対的に低いことが指摘されています。そこで注目すべきは国内外において、「人的資本への投資と開示」(ISO30414を含む)について、法整備の動向が加速していることです。人的資本経営では、これらの数値の情報公開が欠かせません。これにより、企業は自社が求める人材が確保でき、社員側も自由な働き方を選び、自身の幸せの追求とキャリア形成を図ることができます。また、企業が戦略的に人材への教育や投資を行うことで、国際社会の中で競争力を発揮することができるとされています。ここでは、中小企業においても重要な考え方である人的資本経営をどのように実現していくか、それにより企業成長にどのようなインパクトと効果があるのかを説明します。人的資本経営とは人的資本経営の実現に向けて人的資本経営の実現に向けて

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