10ダイバーシティ経営とは、経済産業省の定義によると“多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営”を指します。中長期的な企業価値の向上のためには、その原動力となる多様な個人のスキル、価値観、専門性などの知識と経験を積極的に取り込み、具現化していくことが重要です。企業の中には、同じ様な考え方や価値観をもった社員が多く(組織の同質性)、一体感の醸成が進んだ職場もあると考えられますが、今後も引き続く人手不足社会を前提に、これからの自社の事業・組織の変革を想定し、ダイバーシティ推進の段階的取組が必要です。デジタル・AI化など、事業環境の変化に対応するためには、新たなジャンルの知識・スキルの体得が求められることは言うまでもありません。具体的には、ITリテラシー、データサイエンスのベースとなる統計・分析スキル、新たなビジネスモデル構築のための創造性やアーキテクト思考(基本設計・構想力)などが挙げられます。そのためには、個人のキャリアを見据え、社内外で通用するレベルの向上を目指す計画的、継続的な仕組みの整備が求められます。「従業員エンゲージメント」とは、“多様な個人が仕事に主体的・意欲的に取り組めていること”と定義されます。経営戦略の実現や新たなビジネスモデルを実行する人材が、自身の能力・スキルを発揮してもらうためには、従業員が自ら働きがいを実感し主体的に取り組むことができる環境づくりが必要となります。環境づくりの下地として、「企業の方向性や組織目標」と「個人の成長のベクトル」を一致させることが重要です。同時に、企業理念や存在意義(パーパス)を行動指針として具現化し、従業員に積極的に発信するとともに、対話の場を設け、従業員の共感や納得性を得た上での取組が必要です。さらに、エンゲージメントを継続的に維持するためには、定期的に状況の把握を行うプロセスの中で、企業と個人の間の非対称性(一方通行のコミュニケーション)を防止し、情報をオープンにする仕組みづくりが求められます。在宅勤務やリモートワークが定着しつつある中、企業は業務の完遂のための業務プロセスの見直しやルールづくり、コミュニケーションの在り方への対応が求められています。同時に業務プロセスが見えにくい中で、業務の指示・確認・フォローや評価をどう適合させていくべきか、状況を踏まえた経営層はもとより経営幹部のリーダーシップ、マネジメントスキルと顕在化した課題への試行錯誤を通した解決が問われることとなります。〈要素2〉多様な人材の活用(知識・経営を活かすダイバーシティ&インクルージョン)〈要素3〉リスキル・学び直し(デジタル、創造性・アーキテクト思考など)〈要素4〉従業員エンゲージメント〈要素5〉時間や場所にとらわれない働き方
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