令和6年度 人財マネジメントハンドブック
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pter pter pter Chapter ChaCha1234Cha巻末付録15ヒトは企業活動の中で、労働力やコストではなく「投資」という観点でとらえられ、人材育成の考え方も見直されてきました。従来は、育成の仕方が、技術やスキルを上から下へ伝える、または画一的に外部研修に出すというやり方で行われてきました。また、指示系統も上から下へという上下関係の中で行われています。これらは、与えられる、上から降りてくるものを受けるという企業主導の関係です。安定していた時代はこれでよかったのですが、不確実な時代といわれる今では、従業員も生き残りをかけ、自律的なキャリア構築を図ろうとしています。企業側も「新しい創造・発想力」、「自ら挑戦・行動する力」、「課題対応力」を持つ自立型・自律型人材(以下「自律型人材*」とします。)を求めるようになりました。いわゆるイノベーションを起こす人材ですが、こうした人材に対しては、これまでと異なる新しい関係性が必要になります。自律型人材は、自らを成長させ企業に貢献しようとします。したがって、これまでの一方的な企業主導型ではなく、貢献してもらうために企業もその成長支援や活躍できる機会の提供をするという、双方向の関係性になることです。これは、単なる人的資源として育成するのみではなく、「ヒューマンリレーションシップ」という関係性を構築することが必要だということです。*「自律型人材」:経済的・技能的にも自立(独りでできる)し、自らの価値観や信念をもって判断・行動する人しかし、「ヒューマンリレーションシップ」は、単にその関係性を構築するというだけではありません。その関係性の質を上げることが重要なのです。そして、関係性の質は、相互の『対話』が十分になされなければ向上しません。それは「職場はどんなことも話せる場」であり、話したことは否定されず受け入れられる「安心・安全の場」であることが前提になります。いわゆる『心理的安全性』(「Psychologicalsafety」という英語の和訳)が確保された状態のことです。これにより、人は十分な能力を発揮することができ、また従業員相互の協力関係が築かれるため、生産性の向上も期待できます。また、十分な『対話』とは、日常の会話や意見交換というレベルのものではありません。*次ページ 図表 2-2参照心理的安全性この概念を最初に提唱したのは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンソン。心理的安全性の定義は、「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と述べている。「心理的安全性」が高いチームの特徴は、離職率が低く、他のメンバーのアイデアをうまく活用でき、収益性の高い仕事を行い、効果的に働くと評価されることが多い。(2) 「関係性」が問われる時代に(3) 関係性の質の向上

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