1令和5年5月より新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことを受けて、行動制限も撤廃され、本格的なポストコロナ社会が到来して1年が経過しました。中小企業・小規模事業者においても感染症の落ち込みから売上高の回復が見られる一方で、取り巻く経営環境は物価高騰や人手不足など難題が山積しています。とりわけ「人手不足」は中小企業の慢性的な課題でありながら、更に深刻化しているのではないでしょうか。外部環境の変化が加速する中でGXやDXを通じた事業変革に迫られているうえに労働力の供給制約も見込まれる厳しい状況が重なり、新規需要の獲得や付加価値の向上を担う『ヒト』の重要性がこれまで以上に増して、課題の難易度も上がっていると言えるからです。経済産業省が提唱した「人的資本経営:人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」は、この深刻化する「人手不足」という難題を乗り越え、未来を創る糸口として、中小企業にも少しずつ広がっています。令和5年3月期決算以降に人的資本の開示を義務化された大手企業のみならず、不透明で予測困難な時代の先の成長に向かうには、中小企業においても『ヒト』という宝(財産)をつくっていくことが必然であり、「人的資本経営」が必要とされているのです。その実践が成果を示すように、人材確保が順調な中小企業では、働きやすい職場環境や制度の整備が進んでいるだけでなく、社員のエンゲージメント向上も重要視されています。人材育成により社員の学びを促進することが人材の定着や生産性の向上に貢献し、組織の成長や価値創造の期待へとつながっているのです。公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下、公社)においても、令和5年度から「中小企業人的資本経営支援事業」により、中小企業の皆様への普及・浸透に取り組んでまいりました。更に、令和6年度から「中小企業人財推進事業」を開始し、「人財ナビゲート支援」「ものづくり中小企業魅力体験受入支援」「ものづくり中小企業技能人材定着支援」の3つのメニューを揃え、『人財づくり』の具体的な取組を支援しています。経営と切り離せない人材課題と如何に向き合い、『ヒト』という財産をつくるにはどうしたら良いのか、中小企業の皆様と一緒に考え、様々な角度から組織を成長させていく取組を進めてまいります。公社では平成29年から人材育成や組織構築のためのハンドブックを作成してきました。人が輝く経営とは何なのか、折角確保した貴重な人財をいかにマネジメントすれば良いのかなど、多様な人的課題に悩む中小企業の皆様にとって、解決へ導くヒントや「人的資本経営」に取り組む変革の一助になれば幸いです。令和6年8月公益財団法人東京都中小企業振興公社は じ め に
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