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豊かな知見を生かして子どもの想像力を伸ばす

ピコトンは、夏休みやクリスマスといった季節別、SDGsや防災といったテーマ別などの幅広い切り口で200種以上のイベント企画を用意。また、工作の 材料がひとまとめになった「ピコトン工作キット」や各種マニュアルを提供することで、同社からスタッフ派遣を受けなくてもイベントを開催可能だ
子どもの想像力を伸ばすイベントを開催
ピコトンは「子どもの想像力」がテーマのワークショップを企画・運営する企業だ。ショッピングモールや住宅展示場、公共施設などで多彩な集客イベントを開催するほか、美術館の常設展や社会見学プログラムといった子ども向けコンテンツも企画している。
「今でこそ子ども向けイベント事業を展開する企業はいくつか存在していますが、当社が創業した2007年当時はほとんどありませんでした。専門企業として20年近く積み重ねてきたノウハウが、当社にとって最大の武器です。また、競合の中には集客だけを目指すイベントも少なくないのですが、当社は子どもの想像力を伸ばすことを何より大切に考えています。その点は保護者の方にもよく感謝されます」(内木氏)
同社のイベントにはこれまで、5,400会場で100万人以上が参加。現在もハイペースで参加者を増やしており、その満足度もきわめて高いそうだ。
コロナ禍をトップダウンの変革で乗り切る
創業当時は子ども向けワークショップに対する社会からの認知度が低く、売り上げはなかなか伸びなかった。そこで内木氏を含めた3人の創業メンバーは、本業とは異なる仕事を引き受けて当座をしのいだ。
「僕らは美術系大学の出身だったので、デザインの仕事で食いつないでいました。市場開拓に時間がかかる業界で創業する場合、本業とは別の収入源があると安心できるかもしれません」(内木氏)
その後は順調に成長していた同社だが、新型コロナウイルスの感染拡大でイベントが開けなくなり、売り上げは激減。だが、内木氏たちはすぐに手を打った。
「ロックダウンが1年続くケースを想定し、それに合うイベントのあり方を模索しました。それで、100セット単位だった工作キットを個包装に変える、オンラインイベントに挑戦するなどあらゆる手を尽くしたのです。中には反対する社員もいましたが、将来が分からないからこそ最悪の事態に備えて動くことが大切だと説得。このとき、緊急時にはトップダウンで素早く対応することが大切だと学びました」(内木氏)

子どもたちがタブレット端末で作った塗り絵をスクリーン上で動かす 「うごく! シャッフルぬりえ」は大人気のイベントで、高い集客力を誇る

イベント運営のやり方がまとめられたマニュアルは、ピコトンの利用者以 外にも無料で公開。こうすることで、業界全体の底上げを目指している
子どもも大人も失敗から学べることは多い
子どもでも大人でも、失敗から学べることはたくさんあるというのが内木氏の考え。社員にも、失敗を恐れず挑戦するよう日頃から伝えているという。
「例えばオンラインイベントへの取り組みは、失敗の連続でした。最初は社員の子どもに向け折り紙レッスンを試したのですがうまく進まず、担当者は落ち込んだものです。でもそのたびに、『半分に折らせるのは大丈夫だが“袋折り”をさせるのは無理』『カメラをもう1台用意して手元を映すと伝わりやすい』など、挑戦して初めて分かる発見がありました。こうして実践で得たノウハウこそが、最大の財産になっています」(内木氏)
子どもの想像力を伸ばすため、工作以外の要素も取り入れている同社。例えば、卵形の容器に大小のビーズを入れて音色の違いを楽しめる「エッグマラカス」を作り、プロと演奏できるイベントも開いている。
「僕たちの仕事は、難しいことを分かりやすく翻訳して子どもに楽しんでもらうこと。これからもいろいろな企業・人と協力しながら続けたいですね」(内木氏)
DX推進事業で専門家から手厚い支援をもらう
内木氏たちは経営経験ゼロだった20代で創業。当時は、公社のワンストップ総合相談窓口に何度も足を運んだ。また2022年からは、中小企業のデジタル導入・活用を支える「DX推進支援事業」を利用している。
「コロナ禍で、当社でも業務効率化を進めなければという危機感が高まりました。また、イベントの企画・運営という仕事は属人化しやすいため、情報共有の仕組みも必要だと考えてDX推進支援事業に申請したのです。公社から派遣された専門家には当社が抱える問題の抽出段階から参加していただき、社外から意外な角度で指摘を受けたり、議論の整理をしてもらったりしたのがとてもありがたかったです」(内木氏)
利用事業:DX推進支援事業
DX推進やデジタル技術を活用する取り組みについて段階に応じた幅広いメニューで支援します。
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