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吉祥寺発ファッションの実現を目指す
デザイナー・矢嶋勇亮氏のコンセプトは、「アートやカルチャーを感じさせつつ、暮らしの中で着られるベーシックアイテム」。見た目の格好良さだけでなく、街そのものや、そこに息づく人々のリアルな思いを形にしようと心がけている
吉祥寺に根ざしたファッションデザイナー
ファッションデザイナー・矢嶋勇亮氏の原体験は、吉祥寺のアパレルショップ。幼かった矢嶋氏は洋服好きだった祖母に連れられて洋服店をよく訪れ、そこでファッションの楽しさを知った。文化服装学院で知識を蓄え、早稲田大学を卒業後はデザイン事務所やアパレル企業を経て独立。吉祥寺に構えた事務所でフリーのデザイナーとして活動しつつ、自ら企画した商品を販売するうちに、近所のアパレル店やクリエイターとつながりが自然と生まれた。そして2020年のコロナ禍で、吉祥寺との絆はさらに強まったという。
「外出自粛で苦境に立たされた街と店舗を応援したいとの想いから作ったのが、吉祥寺の地図をモチーフにした『We LoveKichijoji Bandana』(右ページ写真)です。いろいろなお店に出向いてバンダナ掲載の許可を取り、売上げは全て掲載店舗に還元。駅ビル『キラリナ京王吉祥寺店』などのイベントでも販売したところ、大きな反響を得られました。生まれ育った吉祥寺で、街に関わる方々とつながれたのは、本当に嬉しかったですね」(矢嶋氏)
期間限定のチャレンジショップ「創の実」を利用
世間が落ち着き始めた2022年頃から、矢嶋氏は実店舗のオープンを模索し始めた。
「それまではEC店やポップアップ店などを通じ、オリジナル商品を売っていました。しかし、吉祥寺をテーマとする商品を手掛けるなら、この場所に根ざした実店舗を開く方が、説得力が増すと考えたのです。ただ、コロナ禍の影響が残る中でいきなり開店を目指すのはリスクがあります。そこで利用したのが『東京都チャレンジショップ「創の実」』でした」(矢嶋氏)
「創の実」は吉祥寺と自由が丘にあり、都内商店街で開業を目指す人が期間限定で店舗を運営できる施設。
「初めて「創の実」を知ったときは、小さい規模から市場に挑戦したいと思っていた僕にピッタリの場だと感じました。そして2023年1月、「創の実」吉祥寺にて『UNRESS Art & Culture(アンレスアートアンドカルチャー)』を開いたのです」(矢嶋氏)
2025年に発売された最新版「We Love Kichijoji Bandana」。賛同の輪が広がり、掲載店舗数は2020年の商品より大幅に増えた
「創の実」に出店した「UNRESS Art & Culture」の様子。アートやカルチャーを愛する人をターゲットにして、バンダナやシャツなどの商品を並べた
メンター役を果たす公社担当者が心の支えに
「創の実」吉祥寺には3つのテナントが入居可能。広さは各15平米程度で、出店費用は月3万6,300円(税込)と格安だ。最長1年間の出店期間中はもちろん、卒業後も公社から幅広い支援を受けられる。
「なかでもありがたかったのが、公社担当者の伴走支援です。
集客や店舗運営などの助言をいただけただけでなく、私が感じていた不安を、メンターとして解消してくれつつ、課題を解決してくれる専門家を派遣してくれました。また「創の実」出店中から、卒業後の店舗展開について先回りしたご提案もいただき、おかげで、卒業後もスムーズに自店舗のオープンにこぎ着けられました」(矢嶋氏)
矢嶋氏は2023年、『UNRESS 吉祥寺』を開店。自社商品の販売額はEC中心の時期より当然拡大したが、同時に、矢嶋氏個人としての仕事の依頼が増えたという。
「なかでも嬉しかったのは母校である文化服装学院から講師として呼んでいただけたことです。路面店がブランドとしての信頼度を高め、好影響をもたらしたのは予想外でした」(矢嶋氏)
街と連携し人を巻き込んだデザインを目指す
矢嶋氏は今後も、吉祥寺のアートや文化に根ざした商品企画に取り組むつもりだ。近場に縫製工場を作り、縫製から販売までを全てまかなう「メイドイン吉祥寺」の実現に向けて模索中だ。また、近年は商店会の役員や武蔵野市緑化審議委員も務めている。
「トレンドを追ったモノづくりは、いずれAIにとって代わられるかもしれません。一方、街と連携し、多くの人を巻き込みながら進めるものづくりはこれからの時代とても重要になると考えています。僕はそうしたネットワークのハブ(中継地)役となり、吉祥寺を盛り上げたい。そして、それこそが僕の得意分野でもあると思っています」(矢嶋氏)
利用事業:商店主スキルアップ事業
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