no.238
災害現場の調査などで社会インフラを支える
ウオールナットは代表取締役の齋藤 豊氏(写真中央)が1993年に創業して以来、災害現場調査などを通じて日本の社会インフラを支えてきた。技術開発室の比留間 純一氏(写真左)と営業グループの笠原 翔氏(写真右)は、各部門の中心メンバーとして社を盛り立てている
社会インフラの調査を手掛ける注目企業
ウオールナットはレーダーやレーザー、赤外線などを使い、トンネル・道路・ダム・堤防などの内部に潜む異常や劣化を調べる企業。最大の強みは、調査・点検用の機械を自社で開発・製造できるところだ。
「競合の多くは、海外から輸入した機械やメーカーが製作した機械で調査を行っています。一方、私たちは自社で機械を作っていますから、トラブルにすぐ対応できますし、日本に合った改良も可能なのです」(代表取締役・齋藤 豊氏)
トンネルや道路などは、時間の経過につれて老朽化が進む。それが度を超すと、2012年の笹子トンネル天井板落下事故や2025年の埼玉県八潮市道路陥没事故といった大事故につながる危険があるのだ。そこで近年は、社会インフラ調査への注目度が高まっている。
「最近は『モニタリング』の考え方が広まっています。人が健康診断を受けるのと同じで、インフラを定期的に点検して異常を検知できれば、早めに手を打って安全性を高めることが可能ですし、トータルの予算額も小さく抑えられます。こうした背景があるため、当社へのニーズは高まっています」(齋藤氏)
先端技術への取組が応募者増をもたらす
売上げ拡大に対応し、ウオールナットでは従業員を増やしている。現在、中小企業では人手不足といわれているが、同社への応募者は順調に増えているようだ。
「当社は創業当時から、ロボティクス技術や自動分析技術の向上に注力してきました。例えば、農・工業用導水管の漏水調査を行う『水中ロボットカメラ漏水検知システム』(右ページ写真参照)では、AIの自動解析ソフトを組み込んでいます。こうした先端技術への取組を積極的にアピールすることは、若年層の応募者増加に役立つのではないでしょうか」(齋藤氏)
優秀な技術者揃いの同社だが、従業員のバックグラウンドは多彩だ。技術開発室の比留間氏も法学部出身で、技術については入社後に覚えたという。
「昔は『技術者=理系』が常識でしたが、今は私のような文系出身者でも、AIの支援を受けてプログラミングを行うことだって可能です。技術者が必要な中小企業は、理系の素養がある若手の育成にもっと注目すべきでしょう」(技術開発室・比留間 純一氏)
道路パトロールカーに装着し、日常のパトロールをしながら路面下の空洞を調査できる「キャリア積載型地中レーダシステム」
水中ロボットカメラ漏水検知システムを、「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2024」の公社ブースに出展
トップダウン型からメンバー主導への変革
ウオールナットの業績が伸びている理由はもう1つある。それは、齋藤氏が現場から離れたことだ。
「昔の私は『人の3倍働いて会社を引っ張ろう』と考えていましたが、そのやり方ではいつか壁にぶつかります。そこで私は数年前から、思い切って若手に権限を委譲しました。最初は戸惑っていましたが、彼らは自ら行動して成功体験を重ねるうち、主体的に行動するプロフェッショナルへと成長したのです」(齋藤氏)
現在は様々な部門が、メンバー主導で動いている。また、企業文化もよりフラットになった。
「従業員同士は役職名でなく『さん付け』で呼び合う。オフィスでは災害ニュースをいち早くキャッチできるよう、テレビやラジオを流しておく。そうした取組を通じて風通しの良さと気軽に相談し合える社風が生まれ、定着率アップにつながっているのだと感じています」(営業グループ長・笠原 翔氏)
公社事業は開発の「ペースメーカー」になる
同社は前述の水中ロボットカメラ漏水検知システムを2020年に開発した際、公社の「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」(現在は「課題解決型技術開発促進事業」として新たに事業を開始)を利用した。他にも「新製品・新技術開発助成事業」など、数多くの支援事業を活用している。
「自社だけで開発に取り組むと甘えが生じがちで、時にはスケジュールが遅れる危険性もあります。でも公社事業なら決められた日程に沿って書類などを提出しなければなりませんから、ほどよい緊張感が生まれるのです。つまり公社は、開発を順調に進める『ペースメーカー』の役割も果たしてくれるのです」(齋藤氏)
利用事業:安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業(事業終了)
令和8年度から「課題解決型技術開発促進事業」としてリニューアルしました。これまでの「安全・安心」を含む4つのテーマに沿う、都市課題の解決に向けた製品・サービスの開発・改良を支援します。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/kadai-kaihatsu/index.html
お問い合わせ
助成課 TEL:03-3251-7894

