東京都中小企業振興公社

no.212

社員全員が自由にアイデアを出し、ものづくりに取り組む

株式会社タヤ

「面」で形作られる木製・樹脂製ハンガーと違い、金属製ハンガーは「線」で形作られる。特有の「抜け感」があり、衣服を美しく演出できるのが特長だ。また、金属特有の光沢感や高級感、デザイン性、耐久性の高さなどたくさんのメリットがあるため、アパレル店を中心に多くの需要がある(写真左が杉田氏)

斬新なアイデアで機能的な金属製ハンガーを開発

 タヤは1945年に金属加工工場として事業を開始し、その後顧客からの依頼がきっかけで金属製ハンガーの製造に進出。現在では年に35万本を製造・販売する国内有数の金属製ハンガーメーカーへと成長した。その強みの1つは顧客対応力だと、3代目として同社を率いる杉田 潔代表取締役は胸を張る。
「洋服と同じで、ディスプレイハンガーにも流行があります。また、お店のコンセプトや顧客によっても求められるハンガーは変わってくるのです。当社は国内自社工場を持つ利点を生かし、お客さまのご要望に合ったハンガーを、多品種小ロットで素早くご提供することを得意としています」(杉田氏)
 もう1つの他社に負けない強みは、斬新なアイデアを盛り込んだ新商品を生み出す力だ。タヤは、重力を挟む力に変換してスカートやパンツを落ちにくくするボトムハンガー、首元が空いた服でも滑り落ちにくいハンガーといったユニークな商品を次々に開発。社員全員が自由にアイデアを出し、ものづくりを進める社風は、創業の頃から引き継がれた伝統のようだ。

ウェブに注力して直販比率を伸ばした

 現在は業績好調なタヤだが、2010年代前半には売上が落ち込んだ。当時は売上の多くが商社向けだったのだが、それらの商社が海外発注を増やしたからだ。そこで取り組んだのが、直販事業の強化だった。
「商社に頼りきりでは未来がないと痛感しましたが、当社には自前の営業部門を拡大する余裕がありませんでした。そこでネットを活用しようと決意し、まずは『ウェブ班』を新設して担当者を任命したのです。さらに、あえて在庫を多く持つようにして、お客さまの注文にすぐ対応できる体制を整えました」(杉田氏)
 同社のネット活用を加速したのが、2016年からウェブサイト・システムの開発を依頼した外部パートナーだった。同社と協力し、自社サイト上で注文からアフターフォローまで完結できる仕組みを作ったことで、直販の売上が大きく伸び商社向け売上を逆転、全売上の8割を占めるまでになった。
「おかげで、当社の売上は10年間で2倍になりました。ウェブ担当者や協力会社の力がなければ、直販はここまで伸びなかったと思います」(杉田氏)

株式会社タヤ

ニーズに応じた商品を企画し続けた結果、これまでに開発した機能性ハンガーは全部で300種類以上にもなっている

会社を変えるため新たな出会いを求める

 ウェブ担当の新設や協力会社との出会いが直販事業を急成長させたように、人との縁こそが中小企業を変えるというのが杉田氏の実感だ。そこで杉田氏は、普段から新たな出会いを大切にしているという。
「『声をかけられたら、とりあえず乗ってみる』というのが私のポリシーです。登山に誘われたら、まずは一緒に登ってみる。中国製スチールハンガーを輸入したらと勧められたら、自ら現地に足を運んで視察し、検討してみる。そうやってフットワークよく出会いを求めることが、新たなご縁につながるのではないかと考えています」(杉田氏)
 杉田氏、そしてタヤの社員にとって最大のやりがいは、顧客からの期待に応えることだそうだ。
「工夫と技術を盛り込んで良い商品を提供し、鋭い視点を持つプロのお客さまに『タヤさんに頼んで良かった』と褒められたときが一番幸せですね」(杉田氏)

株式会社タヤ

衣服が落ちようとする力をクリップが締まる力に変換する仕組みの「タヤクリップ」をはじめ、特許や実用新案権、意匠権を数多く取得してきた

広い視野から支援してくれる知財センター

 タヤは、先代の杉田發雄(はるお)社長¹時代から公社の知財センターを活用。国内外における特許取得のやり方や特許の管理方法を学んだり、アドバイザーから支援を受けられる「ニッチトップ育成支援」を利用したりすることで、知的財産戦略を前進させている。
「特許事務所が特許を取るためのアドバイスをしてくれるのに対し、知財センターは、広い視野から支援してくれるのがありがたいですね。1つの特許を長持ちさせるための方法とか、他社が取得した特許の見方などは、知財センターだからこそ学べた知識でした。今後は海外進出を強化したいので、アジアや欧米での知的財産戦略について支援をいただけたらと思っています」(杉田氏)

¹杉田發雄氏は「令和5年度 公社功労賞」を受賞されています

利用事業 : ニッチトップ育成支援

 知的財産戦略の導入による経営基盤強化を図る企業を対象に、アドバイザーが最大3年間にわたり継続的相談・助言等を行い、知財戦略の構築や知財管理体制の整備など、実践的支援を行います。

お問い合わせ
東京都知的財産総合センター 
TEL:03-3832-3656
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/shien/nichetop_ikusei.html

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