東京都中小企業振興公社

no.213

「IoTティーポット」という自社にしかできない事業を貫く

株式会社LOAD&ROAD

河野辺和典氏(写真右)は千葉大学工学部を卒業後、エンジニアとして3年間勤務。2014年から米バブソン・カレッジ大学院にMBA留学しつつ、IoTを搭載したティーポットの開発を開始。MBAを修得して帰国後の2018年にLOAD&ROAD日本法人を設立。現在は大手メーカーなどと提携し事業拡大に取り組んでいる

お茶の奥深さに気づき起業を志す

 2015年創業のLOAD&ROADは、内蔵のセンサーで飲み手の気分や状態、周囲環境を解析して最適な状態のお茶を淹れる、IoT搭載ティーポット「teploティーポット」で注目のスタートアップ。起業のきっかけは、代表の河野辺和典氏が留学先の米・ボストンでお茶の魅力にはまったことだった。
「寒い冬を乗り切ろうと熱いコーヒーを飲み過ぎ、体調を崩した時期がありました。そこで日本茶や紅茶に切り替えたところ、お茶のおいしさと、淹れ方ひとつで味わいがガラリと変わる奥深さに気づいたのです。もともと機械エンジニアだった私は、抽出温度や時間、茶葉の量といった数値を自動制御することで好みに応じたお茶が淹れられるのではと発想。ソフトウェアエンジニアだったインド人の同級生を巻き込み、IoTティーポットの開発を始めました」(河野辺氏)
 河野辺氏は米国で法人を設立して試作品を制作し、好感触を得た。そして日本に帰国後、IoTティーポット事業を本格的に開始した。

自社の目的や強み、そして弱みを発信して人脈を拡大

 当時の河野辺氏にとって最大の課題は、国内でのスタートアップに関する情報や人脈がほぼなかったことだ。それらを補うため、河野辺氏は公社運営の創業支援拠点「TOKYO創業ステーション」を活用した。
「ここで専門家に事業計画の作成を支援してもらえる『プランコンサルティング』を利用したことが起業に役立ちました。また、創業ステーションで開かれるイベントに参加したことで、人脈も広がったのです。ただし、名刺を配るだけでは人とのつながりは生まれないので、実行したのが自分がやっている事業や持っているアイデア、そして、現状で足りないものを明確に発信すること。そうしたことで、技術や人脈、資金などを持つ人が手を挙げてくれました」(河野辺氏)
 その後LOAD&ROADは、大手飲料メーカーが主催するアクセラレーションプログラムに参加したのを機に大企業との縁ができ、お茶に関する情報などを獲得。同時に、ベンチャーが採るべき戦略に気づいた。
「経営資源の豊富さなどを目の当たりにして、大企業のすごさを感じました。そして当社のような企業には、大企業が狙わないニッチな市場で小回りよく戦うのが大切だと学んだのです」(河野辺氏)

スマホアプリと連携してお茶を抽出することで、各ユーザーのお茶の淹れ方や好みなどのデータを集め、さらに良いサービスにつなげていく

スマホアプリと連携してお茶を抽出することで、各ユーザーのお茶の淹れ方や好みなどのデータを集め、さらに良いサービスにつなげていく

限りある経営資源の有効活用を心がける

「teploティーポット」は2019年、世界最大級の家電見本市CESで「CESイノベーションアワード」を受賞。日米で行ったクラウドファンディングでは6万5,000ドルを集めた。そして2020年8月に一般発売を開始すると、多くのメディアに取り上げられ、人気となった。だが河野辺氏は気を緩めず、資金や人、時間などの有効利用を常に心がけているという。
「例えば資金面で言えば、キレイなオフィスなど借りず、節約した資金を研究開発費に充てる。そうやって限りある経営資源を有効に使うことが、スタートアップにとって何より重要だと思うのです」(河野辺氏) 現在は、法人向け新型モデル「teploティーポット プロ」などを含めて拡販を目指しているところだ。
「当面の目標は、とにかく売上を伸ばすこと。そのためには消費者や飲食店との接点を増やし、teploの認知度を高めていきたいです」(河野辺氏)

エンジニアとしての経験とMBAのバックグラウンドを持つ河野辺氏は、ユニークなキャリアを生かしてものづくり等起業志望者の相談に対応している

エンジニアとしての経験とMBAのバックグラウンドを持つ河野辺氏は、ユニークなキャリアを生かしてものづくり等起業志望者の相談に対応している

指導役は経営者にとっても有益な経験

 LOAD&ROADはプランコンサルティング以外にも、知的財産総合センターで特許出願への助言を得るなど公社サービス積極的に活用してきた。そして縁あって河野辺氏は今、TOKYO創業ステーションTAMAのコンシェルジュとして起業志望者の相談に応じている。
「助言をする過程で知識や経験を言語化できるのは、私にとってもありがたいことです。また、熱意に溢れた起業志望者から刺激をもらえますし、彼らが気づきを得たり成長したりする姿を見るのが単純に嬉しいんです。コンシェルジュは起業志望者だけでなく、経営者側にも有益なのではないでしょうか」(河野辺氏)

利用事業 : プランコンサルティング

 プランコンサルティングでは、担任制によりビジネスプラン作成の支援を行います。創業を予定される方を伴走支援するプランコンサルタント(創業相談員)には、それぞれ得意分野が異なる専門を持つ人材を配置。コンサルタント間で連携を取りながら、あらゆる方の創業支援に全力で取り組みます。

お問い合わせ
TOKYO創業ステーション  TEL:03-5220-1141
TOKYO創業ステーションTAMA TEL:042-518-9671
https://startup-station.jp/m2/services/consultation/planconsulting/

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