東京都中小企業振興公社

no.216

愛用品への想いに応える製品をお届けし続ける。そのために

株式会社谷口化学工業所

代表取締役社長の谷口弘武氏は大学卒業後、IT系企業の営業職として約5年間勤めた。その後、実父・潔氏が経営する谷口化学工業所に入社し、2020年に社長就任。「新事業に挑戦する際には、トライする回数をできるだけ増やすよう心がけています」(谷口氏)

明治創業の名門靴クリームメーカー

 谷口化学工業所は1910年創業。国内初製造の靴クリームとされる自社ブランドの「ライオン靴クリーム」は、日露戦争後に革靴文化が広まって以来、たくさんの人に愛されてきた。また、近年では革靴メーカーや運動用具メーカーとコラボを行い、レザーブーツやライダースジャケット、野球用グローブのケアクリームなども手掛けるようになっている。
「雨に濡れる機会もある黒い革靴と頻繁に手で触る茶色い革財布とでは、ふさわしいクリームが全く異なります。当社は技術力の高い職人が小ロット生産していますから、革の素材や使用目的などに合ったクリームを提供できるのが強みなのです。また、天然素材を生かした伝統製法にこだわっていることも、当社が長年続いてきた理由の1つです。大切な革靴を長く使いたいと望むお客さまが安心できる製品を提供するよう、常に心がけています」(谷口氏)

市場縮小に対応し、新事業に乗り出す

 多くのファンから支持されている谷口化学工業所の靴クリームだが、革靴の需要が減少したことで市場は頭打ちになりつつあった。そうした中、社長に就任した谷口氏がまず取り組んだのは、展示会への出展だ。
「自社製品の良さを伝え靴ケアの文化を盛り上げるには、エンドユーザーと直接触れ合う場が必要だと考えました。また、お客さまからご要望を聞ければ商品作りに生かせるとも思い、公社の力を借りてギフトショーに出展したのです。当時はすべてが手探り状態で苦労しましたが、当社の製品を面白がってくれる方がたくさんいることや、ノベルティグッズなど新たな需要先の存在に気付くことができました。それからは積極的に、展示会へと出展しています」(谷口氏)
 もう1つ注力したのが新事業への取り組み。谷口氏は「自社の強みが生かせる」「成長市場」「既存製品と差別化可能」「自分が本当にやりたい事業」の4条件を掲げて新商品開発を進めた。その結果生まれたのが、木材用DIY塗料「クロマニョンペイント」だ。
「私はDIYが好きでしたし、コロナ禍でDIYは成長分野でした。そこで『誰でも』『手軽に』『心地よく』をテーマにDIY用の塗料の開発に挑戦しました。刷毛を使わず塗ることができ、容器は当社が以前から使っていたものを活用できるなど、4条件にもぴったり合ったものです。すでにいくつかのホームセンターで並んでおり、売れ行きは伸びています」(谷口氏)

自作木工品向けDI Y塗料の「クロマニョンペイントシリーズ」は、特別 な道具が不要で、室内でも簡単に塗れる点などが人気を博している

自作木工品向けDIY塗料の「クロマニョンペイントシリーズ」は、特別な道具が不要で、室内でも簡単に塗れる点などが人気を博している

本音で話せる経営者仲間の存在は貴重

 経営者としての成長を目指し、谷口氏は2018年、墨田区のビジネススクール『フロンティアすみだ塾』に入った。そこで知り合った仲間から受ける刺激が仕事の原動力になっていると、谷口氏は自己分析する。
「他の経営者が果敢に挑んでいる姿を見ると素直に尊敬しますし、負けたくないとも感じます。そのエネルギーがあったからこそ、私も成長できたのではないでしょうか。また、他業界の人と話をする中で経営のヒントをつかんだり、自社の強みや変えるべき部分を見つけたりする機会も多いですね。
 経営者にとって、本音で話せる仲間の存在は実に貴重です。私も、経営者同士の交流会や飲み会の誘いがあればできるだけ参加して、自分や会社の成長につながるチャンスを増やそうとしています」(谷口氏)

べたつきが少なく浸透性と抗酸化作用に優れた椿オイルを使い、墨田区を象徴する桜の香りを加えた新ブランド「エクセレントシリー ズ」も人気

べたつきが少なく浸透性と抗酸化作用に優れた椿オイルを使い、墨田区を象徴する桜の香りを加えた新ブランド「エクセレントシリー ズ」も人気

専任の支援マネージャーの伴走が励みに

 谷口化学工業所は展示会出展支援以外にも、ニューマーケット開拓支援事業など、様々な公社サービスを活用してきた。中でも有益だったのが、事業承継・再生支援事業の「企業継続支援(経営改善プロジェクト)」だったという。
「当社は、経営方針や将来像を明確にしたり財務状況について議論したりするため、月1回のペースで幹部会議を行っています。こちらに公社から派遣された専任の支援マネージャーが参加し、伴走してくれたのがありがたかったですね。業務改善のPDCAを回しやすくするための助言や自社の強みがさらに伸ばせる提案などを、プロの視点から要所でいただいたことで、当社は大きく成長できたと感じています」(谷口氏)

利用事業 : 事業承継・再生支援事業「企業継続支援(経営改善プロジェクト)」

 企業継続支援では自社の課題に対し経営改善が必要と考える中小企業に対し、専任の支援マネージャーが、経営課題の抽出から改善策の実行まで、伴走型で支援いたします。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/revival/kigyou_keizoku.html

事業承継・再生支援事業のお問い合わせ
総合支援課 TEL:03-3251-7885

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