東京都中小企業振興公社

no.220

1人の営業職が会社のあり方をガラリと変える!

代表取締役を務める志村哲央氏(写真左)が技術面を支え、専務取締役の淺野雄三氏(写真右)が営業部門を引っ張る。「当社も海外進出したいとは考え ていましたが、以前はその担い手がいませんでした。しかし淺野が入社したことで、一気に“攻めの営業”に舵を切ることができたのです」(志村氏)

代表取締役を務める志村哲央氏(写真左)が技術面を支え、専務取締役の淺野雄三氏(写真右)が営業部門を引っ張る。「当社も海外進出したいとは考えていましたが、以前はその担い手がいませんでした。しかし淺野が入社したことで、一気に“攻めの営業”に舵を切ることができたのです」(志村氏)

金属と樹脂の両方を扱える切削会社

 志村精機製作所は1964年の創業以来、カメラや自動車、医療など幅広い業界で精密部品の切削加工を行ってきた企業。設計、製作から検査までの一貫生産体制を築き、顧客から厚い信頼を寄せられている。1990年代以降は、樹脂の切削も手掛けるようになった。
「金属と樹脂の両方を扱える切削会社はそれほど多くなく、お客さまの目的に応じて最適な素材や加工法を提案できるのが、当社にとって大きな強みです。ここ数年は医療機器関連の量販品が伸び、従業員の大幅増員で対応しています」(志村氏)
 コロナ禍でも売り上げを伸ばしてきた同社だが、ずっと好調だったわけではない。最も厳しかったのは、2010年前後。それまで主力だったカメラや事務機器関連の加工案件が落ち込み、業績は頭打ちになった。
「当時は新たな顧客を獲得しなければと焦ったのですが、新規営業を任せられる人材が社内にはいませんでした。そんな状況で思い浮かんだのが、後に専務取締役を務めることになる淺野だったのです」(志村氏)

二人三脚で新規営業に乗り出し収益を拡大

 淺野雄三氏は志村氏のいとこで、当時は米国にて自動車輸出業に携わっていた。新規顧客をつかんで売り上げを伸ばしたいと考えていた志村精機製作所にとってはうってつけの、営業のプロ人材だったのだ。
「淺野が加わったことで、それまでルート営業だけだった当社は、新規営業にも積極的に挑むようになりました。また、従来はあまり出ることがなかった展示会にも年10回ほどのペースで参加するようになり、今ではそこから多くの新規受注を獲得しています。
 淺野の良さの1つは、柔軟な発想力です。彼は製造業の古い常識にとらわれず、斬新な提案をします。彼が持つ“外部の視点”を取り入れたことで、当社は飛躍できたのではないでしょうか」(志村氏)
「一方で当時の私には、製造の知識が足りないという弱点がありました。そこで志村社長が営業先に同行し、私を常にフォローしてくれたのです。社長が技術、私が営業という二人三脚体制で挑んだことが売り上げアップをもたらしたと、私は考えています」(淺野氏)

2023年にタイで開催された国際医療機器展示会に出展した際の様 子。このときは7社から見積もりを依頼され、うち1社との成約を実現 した

2023年にタイで開催された国際医療機器展示会に出展した際の様子。このときは7社から見積もりを依頼され、うち1社との成約を実現した

鏡面加工サンプル

鏡面加工サンプル。金属や樹脂などの表面を研磨することなく鏡のように滑らかで光沢のある仕上げにする加工技術。微細な凹凸を極限まで減らし、高い平滑性と反射性を実現することで、製品の機能性や審美性を向上させる

いずれは海外売上比率を1割以上にしたい

 志村精機製作所では、志村氏・淺野氏を含めた役員による分業体制を大切にしているようだ。
「社長が1人で取り仕切る中小企業は珍しくありません。それでうまくいくケースもあるでしょうが、人には得意・不得意があるとも思うのです。各役員が得意分野に集中し、それによって全社のパフォーマンスを最大化するのが当社のやり方です」(志村氏)
 同社は2018年に初めて、海外展示会への参加を果たした。このとき、東京都中小企業振興公社の「海外販路開拓支援」サービスが大いに役立ったという。
「いくら当社の技術力が高くても、まずは海外企業に当社の存在を知ってもらわなければ話になりません。そこで、公社に海外展示会への出展を手助けしてもらえたのが、本当にありがたかったですね」(淺野氏)
「現在の海外売上比率は数パーセントですが、近い将来、1割以上に伸ばしたい。海外案件は国内に比べると手間と時間がかかりますが、ここで成果を出せば会社の未来は明るくなると信じています」(志村氏)

助成金の申請作業は会社の現状を知る良い機会

 同社はこれまで、公社を含めいくつかの助成制度を利用してきた。その多くは淺野氏が申請したという。
「助成金の申請には、自社がどの顧客からどれだけの利益を生み出しているか、貸借対照表や損益計算書はどうなっているかなど、さまざまな情報が必要です。これらを頭に入れるため、私は入社したばかりの時期に、意識して申請業務を担当しました。
 社歴が浅い幹部候補生に自社の現状を学ばせたいなら、助成金の申請業務を任せるのは有力な手段だと思います。同様にホームページの整備作業も、自社の現状を学ばせるには良い方法です」(淺野氏)

利用事業 : 海外販路開拓支援

海外ビジネスに精通したナビゲーターが、情報提供や商習慣への助言を行いながら商社・海外バイヤー・現地代理店候補とのビジネスマッチングを行います。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/matching/sales_channel/

お問い合わせ
販路・海外展開支援課 TEL:03-5822-7241

利用事業 : グローバル人材育成講座(事業終了)

最新の講座名は「海外ビジネス・チャレンジ塾」となります。 海外ビジネス展開の中心的な役割を担う人材を育成することを目的として、グローバルマインドとビジネススキルの習得を目指します。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/session/leaders_seminar_beginner&practice.html

お問い合わせ
企業人財支援課(海外人財支援担当) TEL:03-3434-4275

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