公益財団法人東京都中小企業振興公社

支援します! 公社は企業のパートナー 公益財団法人東京都中小企業振興公社支援します! 公社は企業のパートナー 公益財団法人東京都中小企業振興公社
トップ > お知らせ > 2017年3月 > 生産性向上のための中核人材育成事業 第1期 東京都生産性革新スクール レポート
「~したい」「~に困っている」など目的別に検索できます。

生産性向上のための中核人材育成事業
第1期 東京都生産性革新スクール レポート

 平成28年6月「第1期 TPIスクール」が開催されました。約3か月間にわたり、「良い設計 良い流れ」のマインドと「生産管理の技法」を学び、現場実習を経て、13名の受講生が無事卒業しました。ここでは実際のスクールの様子や活用された方のインタビューを紹介いたします。

日程

平成28年6月11日(土)~9月17日(土)

スクール 座学編

 当スクールは部分的な改善活動ではなく、全体を意識した「良い流れ」を創りだす技術を体系的に学びます。
まず、全体の流れを観察し、問題の兆候がどこにあるのかを見極める、次に問題への対策を立案、最後にそれを人に効果的に伝える技術等を学ぶことで、現場で役に立つ実践的なノウハウを習得しました。

スクールの講義風景
スクールの講義風景
グループ演習の様子
グループ演習の様子

スクール 実習編

 3チームに分かれ、企業の現場に赴き、「モノと情報の流れ図」など様々なツールを用い現状を分析、問題の兆候を見つけ、その対応策を検討することを学びました。

現場実習はヒアリングが大事です
現場実習はヒアリングが大事です
現場で感じたことをグループでまとめていきます
現場で感じたことをグループでまとめていきます

スクール 成果報告会

 実習先の企業様でのご報告、そして翌日には3チーム合同の成果発表会を行いました。
緊張の中の発表お疲れ様でした!

現地での報告会の様子 その1
現地での報告会の様子 その1
現地での報告会の様子 その2
現地での報告会の様子 その2
成果報告会;ギャラリー多数、緊張の発表
成果報告会;ギャラリー多数、緊張の発表
修了式。みなさんとても良い笑顔です
修了式。みなさんとても良い笑顔です

利用者インタビュー

株式会社今野製作所 代表取締役 今野 浩好氏

まず、このスクールを利用されたきっかけを教えてください

今野 浩好氏
株式会社今野製作所
代表取締役 今野 浩好氏

 当社ではコンサルタントの方を招いて5Sや無駄取りなどの取組みを実施していました。これらの活動は確かにその時は成果が上がるのですが、あくまでも部分的・瞬間的な成果になりがちで、結局時間がたつと徐々にマンネリ化して、やらされ感のなかでの惰性的な活動に陥ってしまうところがなんとかならないものかな、と悩んでいました。

 そのためには、生産管理などの技術を体系的に知っていて、それをきちんと伝えることができる人材が必要で、初めてTPIスクールの話を聞いたときに、これは理想に近い仕組みなのではないかと思いました。
 あと、当社がちょうど世代交代の時期だったというのも大きな理由ですね。そのような人材は間違いなく幹部として必要な人材ですからね。

このスクールの利用で会社に何か変化はありましたか?

 はい。現場のリーダーとなる社員が受講したんですが、はじめはだいぶ悩んでいたようです(笑)でも少したってから、このスクールで学んだ知識や言葉を使って話をするようになったなという印象があります。きちんと体系だった裏付けのある知識や手法に基づいてカイゼンをしていくことの大切さが学べたのではないかと思います。
 また、このような変化は間違いなく現場に刺激があったと思いますね。徐々にですが「良い設計・良い流れ」という藤本先生のコンセプトが現場に浸透してきていると思います。

カリキュラム全般についてのご感想をお聞かせください

 TPIスクールのカリキュラムは体系的で、全体的な視野を広げる内容になっていると思います。もう少し希望を申し上げれば、大規模な量産を行う現場向けの手法でも、当社のような多品種少量の製造現場で有用な知識となるように、内容のアレンジを続けて頂ければと思います。
 カリキュラムで言えば、実習があるのも大きいと思います。学んだ知識をすぐに実践的に使える時間があるのは非常に効果的だと思います。
 また、当社は実習の受入もさせて頂きましたが、受講生の方々から様々なご指摘を頂き、貴重な気づきが得られました。

 3か月の長丁場でしたので、同じ時間を過ごした良い仲間が出来たことは、受講した社員にとって大きな収穫だったと思います。まさに「モノづくりはヒトづくり」を体感できたのではないでしょうか?

本事業へのご希望などありましたらお聞かせください

 今回の受講は受講した社員はもとより、当社にとっても非常に良い経験でした。先ほども申し上げた通り現場に良い刺激がありましたし、今後はその刺激を継続したカイゼン活動に結び付けるためにも、二人、三人とTPIスクールで学んだ共通言語で話ができる人を社内に増やしていきたいですね。そのような人材が増えていけば、自律的で継続した改善活動が続いていく社内風土が出来ていくと思うんです。
 そのために、2期3期と言わず、TPIスクール自体もずっと継続して欲しいですね。

株式会社今野製作所(足立区)
1961年創業。ステンレスの板金加工や油圧機器、福祉機器の開発製造を行う。特に「油圧爪つきジャッキ『EAGLE』」は国内トップシェア。また単品製作を可能とする板金加工部門の技術力は高く評価されている。

石原金属化工株式会社 代表取締役 石原 康裕氏

まず、このスクールを利用されたきっかけを教えてください

石原 康裕氏
石原金属化工株式会社
代表取締役 石原 康裕氏

 以前、東大の藤本先生のセミナーを聴講して、「良い設計・良い流れ」などのものづくりに対する考え方や、著書の帯に書いてあった「文系でもわかるものづくり経営学」というコンセプトに惹かれていました。
 一方で自社を振り返ると「不良はできて当たり前という常識」や「できない理由をまず言う風潮」、そして何より「やらされ感のあるカイゼン活動」という状況で、何かこれを変えていくきっかけはないか?と思っていました。
 そんな中、「東大ものづくり経営研究センター」がバックアップするスクールが東京で開講されると聞いて、まずは自分が受講して体験してみようと思ったことがきっかけです。

受講していかがでしたか?また、印象に残った講義などを教えてください

 はい。まずカリキュラムについてですが、内容は盛りだくさんで、途中頭が真っ白になるくらい難しいものもありましたが、経営者としても興味深い内容の講義が多かったです。
 座学の講義が終わってカリキュラム全体を振り返ると、まず根底に藤本先生の「良い設計・良い流れ」という考えがあって、それを強調するように全体最適の「※TOC理論」がある、と。それを具体的に現場で見ていくために「※VSMやモノと情報の流れ図」を学び、そこで現場の課題の兆候が見えたらIEやQCなどのツールで詳細に分析し対策を考えていく、という感じで現場で実際に活動するための非常に現実的なカリキュラムだなと思いました。
 その中でも個人的には「TOC理論」や「VSM」、「ものづくり会計学」などはもう一度受講して復習したいくらい興味のあるものでしたね。

 あと、やはり実習はとても印象に残っています。学んだ知識をすぐに現場で使って確認していくことは非常に有意義なことです。ただ、やはり理論と実践ではギャップがあるので、そこをグループの仲間と喧々諤々を繰り返しながらまとめていく作業は、とても苦しくて悩ましいのですが、同時に非常に楽しい時間でした。
 「経営者」という立場を一度離れて、純粋に現場改善に仲間と取り組んでいくという経験はなかなかできるものではありません。またいい仲間にも巡り会えたと思っています。
 スクールを卒業して少し経ちますが、今でも自社の現場を実習と同じ感覚、同じ視点で見ていることが多々ありますね。実際に現場の人間と話す機会が増えましたね。まあ、現場の人間は嫌がってるかもしれませんが(笑)、これもスクール受講の効用だと思います。

最後に本事業へのご希望などありましたらお聞かせください

 なるべく長く続けて頂いて、前向きな改善マインドを持った人材を多く世に出していって欲しいですね。
 また、できるだけ多くの人にこのスクールの事や内容を知ってほしいなと思うので、テーマを絞った、2、3日のミニスクール的なことの実施も是非考えて欲しいですね。そんな企画があれば私も復習できますし(笑)
 後は、卒業生が集まるイベントを定期的に開催して欲しいです。共通言語で話せる良い仲間とはずっと連携していきたいですし、何より自身の生産性向上に対する感覚を鈍らせたくありませんからね。

※VSM(Value-Stream-Map):特定の製品等について、原材料が加工されて顧客の手に渡るまでの全工程の経路とリードタイム各工程のサイクルタイム、そして各工程がどこからの指示で実施されるのかを示したもの

※TOC理論(Theory Of Constraints):工程全体を最適化する手法で、全体としてキャッシュフローを生み出すことを目的に、ボトルネックとなる工程に注目し、スループット(=販売を通して生み出されたお金)を最大化するための考え方。

石原金属化工株式会社(江戸川区)
明治期の人毛商としての創業を経て、昭和12年ヘアピン商で会社設立。その経験・技術を生かし、現在では車輛用、マリン用、建設機械用などのコントロールケーブル・ワイヤーの専門加工メーカーとして発展を続けている。

□ 問い合わせ先 □
総合支援部総合支援課
TEL:03-3251-7917