東京都中小企業振興公社

no.174

自社技術を基盤に協業で大きな価値を生む

東京大学法学部在学中に司法試験に最年少合格し、24歳で起業した堀口氏をはじめ、メンバーのほとんどは若手。しかし、さまざまな業界で培った経験を生かし、エネルギッシュに事業を拡大している

文書作成効率を向上させる「LAWGUE」

 株式会社日本法務システム研究所が開発・提供している「LAWGUE(ローグ)」は、ビジネス文書を編集・管理するアプリケーション。AIを搭載した「オンラインエディタ」がインデントずれや表記揺れを自動補正してくれるため、文書の体裁を整えるための時間が短縮できる点が大きな強みだ。「他にも、過去につくった文書をAIがパーツごとにわけてデータベース化し、似通った項目や欠落しているかもしれない条項などを自動的に見つけて提案する『AI条項検索』、過去の文書と自動的に突き合わせを行い、異なる部分を比較できる『AIレビューアシスト』などの便利な機能を搭載しています。また、バージョン管理や情報共有も簡単で、Wordなどより、はるかに効率の良い文書作成が可能です」(代表取締役社長堀口 圭氏)

自動補正機能や欠落条項検索機能をはじめとする特許技術の申請時には、東京都知的財産総合センターの支援を受けていた

提携によって自社のやるべきことが明確に

 2018年の創業からしばらくは、顧客が見つからず苦しい状態だった。堀口氏らはセミナーを企画して来場企業に営業したり、飛び込み営業を行ったりして、販路を拡大しようと常に工夫していたという。2019年には法律ポータルサイト運営の弁護士ドットコム株式会社から出資を受けることに成功。さらに2020年9月には、法律系出版社の新日本法規出版株式会社や第一法規株式会社、物流の鈴与株式会社、OCRサービスを提供しているAI inside株式会社など、業務提携関係にあった企業との連携強化を発表。同時に、各社やファンド、金融機関から合計3億円の資金調達も受けた。「資金を提供していただいたのは、もちろんありがたいことでした。しかし、それ以上によかったのが、自社のやるべきことがはっきり見えたことです。LAWGUEは幅広い文書の作成に役立つ、汎用性の高いサービスです。それだけに、以前は『どの業界で、どんなお客さまのために、どう役立つか』という点が曖昧になってしまう傾向がありました。ところが他社と業務提携したことで、お客さまの具体的なニーズをキャッチし、そこに焦点を絞って開発を進める流れが生まれたのです。これは当社にとって、実に大きな転機でした」(堀口氏)

徹底的なコミュニケーションで提携を成功させる

 LAWGUEへの引き合いが増えていき、他社とともに仕事をする機会は着実に増加中。そうした中で、日本法務システム研究所が大切にしているのは、自社が果たすべき役割を明確にすることだ。「2021年2月、新日本法規出版が提供する解説付きの規程関連書籍データと、LAWGUEが持つオンラインエディタ、独自AI技術を組み合わせた『スマート規程管理 by LAWGUE』の正式版がリリースされました。他社ブランドでの共同製品リリースは当社初でしたが、一緒に仕事をして、お互いの守備範囲を決めるやり方を学べたのは良い経験でした」(堀口氏)
 他社の求めていることを理解し、その思いに寄り添えているか、確認することも怠らないようにしていると堀口氏。「当社の場合、LAWGUEの製品力に魅力を感じていただいて、他社から業務提携などを持ちかけられるケースが多々あります。その際に寄せられる当社への期待と要望については、徹底的にヒアリングしますね。また、当社の開発した機能と先方の要望がきちんとかみ合っているかについても、頻繁に確認します。共同プロジェクトでは自社開発の数倍、コミュニケーションが大切だと感じています」(堀口氏)

法律関連など幅広い文書の作成効率を高めるため開発されたLAWGUEは、DXに取り組む企業や官公庁などに数多く採用されている

経験豊かなマネージャーからの励ましが力に

 同社はこれまで、売れる仕組みのつくり方や販路開拓を支援する「ニューマーケット開拓支援事業」、サービスで稼ぐ中小企業を後押しする「革新的サービスの事業化支援事業」、東京都知的財産総合センターの「知財相談サービス」など、公社のサービスを数多く利用してきた。なかでも最も役立ったのが「事業可能性評価事業」だったという。「私は大学卒業後、弁護士として法律事務所に入所。何の準備なく半年経たないうちには事務所に籍を置きながらも創業したため、経営や営業の経験はほとんどありませんでした。そういう私にとって、ビジネス経験豊かな公社のマネージャーからのアドバイスは心強かったですし、顧客になりそうな企業とのマッチングも助かりました。何よりうれしかったのは、熱い檄を飛ばしてもらったこと(笑)。創業当初の狭いオフィスで膝をつき合わせて励ましを受けたことで、前に進む勇気が持てたと感謝しています」(堀口氏)

利用事業 : 事業可能性評価事業

新たな事業計画についてアドバイス・評価を行い、成長性が高いと認められる事業計画に対しては、公社の各種支援メニューを活用して、事業化に向けた継続的な支援を行います。
お問い合わせ 経営戦略課 TEL 03-5822-7232
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/hyoka/index.html

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