東京都中小企業振興公社

no.177

斬新な手法で子どもの主体性と創造性を育む

田村恵彦氏(後列左から2人目)が目指すのは、「正答のない現代社会で主体的に考え、行動できる人材」の育成だ。スポーツスクールや保育園では遊びと学びを上手に組み合わせ、さらにITの力を加えた新手法を編みだし、子どもの主体性や創造性を伸ばそうとしている

自己肯定力なども伸ばすスポーツスクール

 biima代表取締役の田村恵彦氏は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で身体行動科学を研究。卒業後は大手人材系企業に入社して数々の新規事業開発に携わった後、2016年に独立した。創業当初から手がけているのは、総合型キッズスポーツスクール「biima sports(ビーマ・スポーツ)」だ。
「私たちは幼児教育で、3つの力を重視しています。1つ目は基礎運動能力。幼児期は1つの競技に特化せず複数のスポーツを行う方が運動能力を高めやすいため、biima sportsでも野球やサッカー、体操など多彩なスポーツを体験させています。そして2つ目と3つ目の力は、自分の価値や存在意義を肯定する『自己肯定力』と、コミュニケーション能力や課題解決能力などの『非認知能力』です。刻々と変わる現代社会で生きるために不可欠な2つの能力を、私たちはスポーツを通じて幼児期から育成しようとしています」(田村氏)
 biima sportsは4年間で全国に120拠点以上を展開し、累計会員数4,000人を突破。各方面から注目を集めているのだ。

最新のスポーツ科学にもとづき、サッカー、野球、バスケットボール、スプリント、体操、テニスなど多彩な競技を子どもに体験させている

既存の手法を組み合わせ、幼児教育を革新

 biimaは2020年、biima sportsで培ったプログラムを導入した保育園「biima school(ビーマ・スクール)」を開園した。同社が保育事業に乗り出した理由は3つあったという。「1つ目は、子どもたちと接する時間を長くしたかったからです。biima sportsでは限られた時間しか指導できませんが、保育園なら週5日かけて子どもの力を伸ばせます。2つ目の理由は、音楽や美術などスポーツ以外の科目によって、さらに高い教育効果を追求したかったこと。そして3つ目の理由は、当社のやり方に興味を示す教育機関が予想以上に多かったことです。新たな教育手法を自園で体系化し洗練させれば日本中で役立てると考え、開園を決めました」(田村氏)
 保育事業のスタートは、決して簡単ではなかった。同園の教育プログラムは既存のものとは全く違っているからだ。しかし田村氏は、社会人向けの研修と現在の幼児教育のメソッドを合体させることで困難を乗り越えた。「例えば、管理職昇格時に受ける『リーダーシップ研修』ではチームで議論しながら正答のない課題を解く研修がよく行われますが、これを保育園に応用し、園児にチームを組ませて抽象的なテーマを与え、互いに話しながら一緒に絵を描かせる手法を編み出しました。私はイノベーションを『組み合わせ』だと思っています。すでに世にあるものも、組み合わせ方によっては新たな価値を生み出せるのです」(田村氏)

従業員の成長と自己実現を両立する企業を目指す

 子どもの成長を促すだけでなく、新時代に対応できる指導者・スタッフの育成にも力を入れている田村氏。「私はbiimaを『人材輩出企業』にしたいと思っています。当社で経験を積めば、新時代に対応できる教育人としてどんな場所でも活躍できる。そんな企業を目指しているのです。そしてもう1つ目指しているのが、従業員が自己実現できる場になること。当社には、『3年後、biimaでこんな新事業をやってみたい』という思いを抱いている人がたくさんいます。彼らの目指す道と当社の経営方針とがマッチしている限り、彼らの背中を強く押してあげたいですね」(田村氏)
 日本の教育は、明治以来大きくは変わっていない。しかし時代が大きく変わりつつある今、教育も変わらなければならないというのが、田村氏が抱いている問題意識だ。「戦国時代や明治維新といった歴史の転換点では、織田信長や維新の志士などが変革者として現れ、新たな事業の枠組みを打ち立てています。それと同様に、私たちも事業サイドから変革を起こし、教育業界を変えたいのです」(田村氏)

リーダーシップ研修に基づいた教育プログラムで幼児の能力を向上。さらに、biima school卒園時までに小1レベルの国語と算数を習得させる

公社の助成金を受けたことが、信頼を生んだ

 biimaは2020年、東京都中小企業振興公社(以下、公社)から「革新的サービスの事業化支援事業」の認定を受けた。「助成金を受けられたのは大変助かりました。また、公社の助成金を受けたことで、金融機関や、保護者の方々から信頼を得られたのも大きかったです」(田村氏)
 今後公社に期待するのは、他社との連携やネットワークづくりを支援してもらうことだと田村氏は語る。「今後も当社は、他社とアライアンス(企業連合)を組みながら事業を展開していくつもりです。公社はたくさんの企業をご存じのはずですから、『こんな会社と協力したら、事業がさらに発展していきますよ』など提案していただけると、とてもありがたいですね」(田村氏)

利用事業 : 革新的サービスの事業化支援事業

上記事業は令和2年度で終了し、現在は『「新しい日常」対応型サービス創出支援事業』で専門家による支援や資金支援を行っています。(今年度の募集は終了)
お問い合わせ 経営戦略課 
TEL 03-5822-7232  E-mail senryaku@tokyo-kosha.or.jp
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/nichijo/index.html

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