東京都中小企業振興公社

no.188

AIの技術を使いコミュニケーションの進化目指す

AI電話番「マヤイ」チームの責任者である横山美貴氏(写真左)など、女性や外国人の活躍が目立つコグラフ。代表取締役の森善隆氏(写真中央)は、ダイバーシティや「健康経営」などの取り組みにも積極的だ

「AI×会話」の新サービスで急成長の企業

 コグラフは2010年創業のITベンチャー。ソフトウェアの受託開発とデータ分析事業を手がける一方、数年前からは自社サービスの開発にも取り組み始め、2020年には新サービス「マヤイ(Mayai)」をリリースした。
「マヤイはAIを使い、かかってきた電話に自動対応するシステムです。自動応答シナリオに沿って発信者が話した名前や電話番号、用件をAIが応対し、文字に書き起こしてメールなどで着信側企業に伝達。受け取った担当者は必要な電話にだけ返事をすればいいので、電話対応の業務効率が大きく高まります。営業電話に悩む企業やリモートワークでオフィスに人がいない企業、多忙で電話を取る余裕がないクリニックや美容サロンなどの店舗事業者にぴったりのサービスだと自負しています」(代表取締役 森善隆氏)
 使いやすさや導入しやすさが評価され、マヤイの導入企業数はリリースからわずか2年間で1,000社近くにまで伸びた。コグラフにとって期待の事業である。

挫折を経て地盤固めの大切さを知った

 創業直後のコグラフは、ある1社からほとんどの売り上げを得ていた。そして2015年頃、その会社からの受託開発が途切れたのを機に積極営業に乗り出したところ、売り上げが急増。従業員数も増やし、一時は年に20人程度のエンジニアを採用していたという。しかし、当時の社内はうまくいっていなかったと森氏。
「企業規模が拡大して私1人で全案件を見られなくなったため、各現場に権限を委譲しました。ところが、体制づくりをきちんとしていなかったのが災いし、さまざまな問題が噴出したのです。このとき、積極営業という『攻め』と、組織整備という『守り』の両方をバランス良く進めるのが大切だと学びました」(森氏)
 苦い経験を経て、森氏は経営方針を変えた。開発案件を無理やり取ったりせず、自社の体力に見合った仕事を受けるようにしたのだ。同時に、目の前の案件をきちんとこなしつつ、社員が働きやすい環境を整えることにも力を入れるようになったのだという。

マヤイの運営・開発チームをはじめとする社員の採用は、国籍や性別にとらわれずに行うのがコグラフの基本方針である

社員と家族、すべての人々の幸せ実現に向けて

 コグラフは「社員と家族、すべての人々を幸せにすること」を経営理念に掲げ、社内制度の整備を進行中だ。副業やリモートワークを幅広く認めて社員の柔軟な働き方を可能にしており、全社員の約3割は外国人で女性エンジニアも数多く活躍するなど、ダイバーシティへの取り組みも積極的だ。
 それと同時に、新サービスへの挑戦も始めている。
「各種デバイスやネットワーク技術は、この十数年間で飛躍的に進化しました。ところが人と人とのコミュニケーションのあり方は、ほとんどアップデートされていません。そこで当社は、AIなどの技術を活用してコミュニケーションのハードルを下げていきたいと考えるようになりました。そして、マヤイのように『ITに詳しくない人にもやさしいコミュニケーション手段』をたくさん提供し、より良い社会に貢献したいと思っています」(森氏)

マヤイを使えば、電話をかけてきた人の名前や用件が文字で確認できる。使い勝手はとても簡単で、ITに詳しくない人でも十分に活用可能

経験豊富なナビゲータの支援が貴重

 コグラフは2021年から、東京都中小企業振興公社が売れる仕組みづくりや販路開拓などを支援する「中小企業ニューマーケット開拓支援事業」を利用中だ。同社でマヤイ室長を務める横山美貴氏は、公社に対して抱いていた先入観が、いい意味で裏切られたと語る。
「こちらの相談に乗っていただくのはもちろん、支援してくれるビジネスナビゲータの方から『この企業と協業しては?』など多くの提案をもらいました。公的サービスに対して最初はハードルの高さを感じていたのですが、これほど熱心に助けていただけるとは本当に意外でしたね。また、ナビゲータの皆さんは大手企業などで豊富な経験と人脈を積み重ねてきた方々。当社が提携先企業を探していたとき、本来ならつながりを持ちづらいような大企業を何社もご紹介いただきました。マヤイの機能向上に関する助言もいただけるなど、当社にとってありがたい存在です」(横山氏)

利用事業:中小企業ニューマーケット開拓支援事業

都内中小企業が開発した優れた製品、技術、サービスについて、売れる仕組みづくり及び販路開拓に係る支援を行います。実施にあたっては大手民間企業等での開発・製造・営業経験等を豊富に有する人材(ビジネスナビゲータ、マーケティングオーガナイザー)がビジネスのノウハウを共有し、総合的な営業力、製品力の強化をはかります。
お問い合わせ 販路・海外展開支援課
TEL 03-5822-7234
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/new_market/index.html

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