東京都中小企業振興公社

no.198

技能工集団や次世代リーダーの育成に注力

国内めっき会社のうち、自社で研究開発部門を維持する企業は30社に1社程度しかないというのが、代表取締役社長である姫野正樹氏(写真右)の見立てだ。技術力や環境対応力をさらに伸ばすため、若手社員を積極的に、研究開発部門に配属させている。

独自の研究開発部門を持つめっき会社

 京王電化工業は、材料の表面に金属膜をつけて機能性を高める「機能めっき」を手掛ける企業だ。強みは研究開発能力だと、社長の姫野正樹氏は語る。
「経営規模が同じくらいの企業と比べ、当社の研究開発部門は充実していると思います。その象徴が、業界で初めて開発に成功した『バレル式三価クロムめっき』でしょう」(姫野氏)
 これは回転バレルを使い、多くのモノを一気にめっきする手法。大量生産とコストダウンを可能にしただけでなく、毒性があって規制が強められていた六価クロムから、無害な三価クロムへの切り替えにも成功した。こうしてコスト競争力と環境対応力を高めたことで、同社は多くの取引先から信頼を勝ち取ってきた。近年は、マグネシウムやチタンなどの難素材にめっきすることで医療機器、自動車など軽量化を図りたい新製品開発の一助となっている。また、2022年には東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞の優秀賞(ものづくり部門)を受賞するなど、多くの実績を上げてきている。

海外リーダーの育成が企業の業績を左右

 同社は2010年代前半から海外工場の設立を模索。その際に課題だったのが、現地リーダーの育成だった。
「最初は経営者自身が陣頭指揮を執るとしても、いつかは現地法人を部下に委ねる時期が来ます。その時、経営者と同じ価値観を共有している人がいれば、安心して任せられるでしょう。そこで私は、複数の幹部社員を海外リーダー候補に抜擢。一緒に現地視察をしながら議論を重ねたりして、互いの考えをすりあわせました」(姫野氏)
 そうした努力が功を奏し、ベトナム工場の売上額は設立から10年弱で、全社の3割ほどを占めるまでに成長した。なお、ベトナム法人のリーダーは、比較的短期間でローテーションさせていると姫野氏。
「海外で社長に就くと、より経営者に近い立場でものを考えるようになりますし、視野もグッと広がります。そうした人が戻ると本社メンバーも刺激を受けられ、それが業績アップにつながるのです」(姫野氏)

「バレル式三価クロムめっき」をはじめとする独自の技術が、京王電化工業の競争力を大きく高めている

社内のプロをリスペクトし1つにまとめる

 姫野氏は大学卒業後、半導体製造装置メーカーに入社。創業者で現会長の父・正弘氏が率いていた京王電化工業に転じたのは、30代半ばになってからのことだ。そのため現場では、経験豊かな技術者に多くを委ねている。
「当社には、技術力と発想力を兼ね備えたプロの技能工がたくさんいます。だから私は、出来る限り口出しをせず、彼らが存分に実力を発揮できる環境作りに専念しているのです。現場をリスペクトし、彼らの力をひとつに束ねることが、経営者である私の役割ですね」(姫野氏)
 同社は人材育成にも力を注いでいる。社内で講習会を頻繁に行ったり、業界団体が運営する「東京都鍍金工業組合高等職業訓練校」に若手社員を派遣したりして、常に技術を磨かせているのだ。
「社内には『現代の名工』や『東京マイスター』、『高度熟練技能者』、『特級めっき技能士』などの有資格者が何人もいます。彼らが持つ技術や資格を可視化してスキルアップの目安にしたり、資格手当を出すことでもモチベーションアップを図っています」(姫野氏)

社内には、社員が取得した技能検定の合格証書がずらり。入社6~7年でめっき技能士1級に合格するのが1つの目安だ

認証取得支援は大手企業との取り引きの強い味方に

 京王電化工業は2022年、製品改良や規格・認証取得にかかる費用を公社が助成する「製品改良/規格適合・認証取得支援事業」を利用した。
「例えば海外の自動車メーカーに部品を納めるとき、『TS16949認証』の取得が求められることがあります。これには数百万円もの費用がかかるため、公社からの助成がとても嬉しかったです」
 他にも「市場開拓助成事業」など公社の事業を数多く利用している。
「海外展示会への出展や新設備の導入を目指す時にも、公社のウェブサイトを見て使える制度がないか探すようにしています。大手企業との取り引きを目指す企業にとって、設備導入やISO・TSの認証取得を力強く支えてくれる公社の存在はとてもありがたいものだと、日々感じています」(姫野氏)

利用事業 : 製品改良/規格適合・認証取得支援事業

国内外の市場ニーズへ適合させるために行う製品改良や、規格適合・認証取得(CEマーキング、ISO、IEC規格等)に要する経費の一部を助成します。
【お問い合わせ】助成課 「製品改良」担当
TEL 03-3251-7894・7895
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/kairyo.html

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