東京都中小企業振興公社

no.200

「三方よし」の考え方を元に循環型社会の実現を目指す

CBA代表取締役の宇佐見良人氏(写真左)は、以前の総合商社時代から廃棄物業界の可視化(システム化)を手掛けてきた。「廃棄物の管理システムを提供する企業は他にもあります。ただ、当社のように資源循環を目的に、処理業者と利害関係無く公平な立場で、排出企業にサービスを提供する企業はないだろうと自負しています」

「サーキュラーエコノミー」の実現を支援

 資源の枯渇や地球環境の悪化を防ぐため、廃棄物を資源として循環させる「サーキュラーエコノミー」が世界中で注目されている。日本でもここ数年、官民が連携してさまざまな取り組みを進めているところだ。こうした中、今後は中小企業にも対応が求められると、CBA代表取締役の宇佐見良人氏は指摘する。
「大手メーカーはリサイクル率や二酸化炭素排出量の公表が当たり前となってきています。そのため大手に部品を納入する中小メーカーなどにも、自社がどのような廃棄物を出し、どう処理しているか把握する必要が生じているのです」(宇佐見氏)
 だが予算や人材に限りのある中小企業にとって、廃棄物を適切に処理し、廃棄物の排出量を的確に把握するのは容易ではない。そこで注目されているのが、CBAが開発した「CBAwellfes(t ウェルフェスト)」だ。これは、廃棄物データの集計や各種書類の管理、行政への報告業務といった廃棄物処理に関する一連の業務を支援するクラウドサービス。利用企業は法律を守りながら、廃棄物処理の大幅な工数減が期待できる。

廃棄物処理の最適化により循環型社会を目指す

 同社は2020年創業のスタートアップ。現在はCBA wellfestの普及を優先的に進めているが、近い将来に第2、第3のサービス提供を考えているようだ。
「次に考えているのが、企業の環境貢献度を分析するサービスです。実現すれば、環境関連の信頼度を『環境与信』として指標化し、企業のアピール材料に使えるでしょう。さらにその先には、CBA wellfest上に蓄積した情報を使って廃棄物のさらなる資源化を目指すサービスを生み出すつもりです」(宇佐見氏)
 CBA wellfestの利用企業が増えれば、地域の廃棄物発生情報が分かる。それに対し、適切な回収手段・ルートを提案して回収コストを下げるのが狙いだ。
「廃棄物を出す企業からデータを集めて分析し、そこから処理や回収を最適化することによって循環型社会を実現するのが、当社の目標なのです」(宇佐見氏)

CBA wellfestは安価なクラウドサービスで、使いやすさにも工夫が施されている。導入へのハードルはかなり低い

「人材輩出企業」となって今後拡大する業界を支える

 資源循環の重要性はさらに高まり、業界も拡大していくはずだ。しかし、業界全体を支える人材はまだまだ足りていない。そこでCBAは、「人材輩出企業」となることで資源循環業界を支えるつもりのようだ。
「私たちは現在、業界の可視化(システム化)を実現する事業を展開しています。しかし、廃棄物の資源化に関連する業務は多岐に広がっています。当社で経験を積んだ人が関連業務で独立したり、転職したりしてこの業界を支えるようになれば、私たちも嬉しいですね」(宇佐見氏)
 宇佐見氏が普段から心がけているのは、自社だけでなく、顧客や社会の利益をも追求する「三方よし」の考え方でビジネスに取り組むことだという。
「自社の利益ばかりを考える企業には、協力いただける事も少なくなると思います。大きな転換期を迎えている当業界では、仲間や応援者のことを考え、できるだけ多くの人と協働する必要があると思うのです」(宇佐見氏)

廃棄物業界の最新情報や解決すべき課題を伝えるため、CBAは自社サイト上でさまざまな情報発信を行っている

事業計画の改良が営業・資金調達につながる

 CBAは創業直後の2021年、公社の「事業可能性評価事業」を利用した。
「当社の事業は新しく、説明してもなかなかわかっていただけないことがあります。そこで公社の専門家に助言をいただき、わかりやすく洗練されたビジネスプランにしようと考えました。おかげで、新たな顧客に営業したり金融機関に融資を頼んだりしたときに、説明しやすくなったと感じます。また、これらの事業を使えば助成金が得やすくなる点も魅力でした。
 今後の公社には、販路開拓での支援を期待しています。知名度や信用度が低いスタートアップにとって『この会社はしっかりしているよ』と、公社からの後押しをいただくのは本当に助かるのです」(宇佐見氏)

利用事業 : 事業可能性評価事業

各分野の専門家が個人・企業の新規事業計画を総合的に評価し、事業化に向けて支援する事業です。新たな事業計画について面談等にて客観的なアドバイス・評価を行い、さらに評価委員会で成長性が高いと認められた事業計画に対しては、公社の各種メニューを活用して継続的な支援を行います。
お問い合わせ 経営戦略課 TEL 03-5822-7232
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/hyoka/index.html

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