【Vol.12】2019/12/20
マッチングして生まれる化学反応にビジネスの商機がある

発注先 株式会社八社会 代表取締役社長 塩路氏、ビジネスチャンス・ナビ2020 発注コーディネータ 牟田氏

  • (左から)発注先 株式会社八社会 代表取締役社長 塩路氏、ビジネスチャンス・ナビ2020 発注コーディネータ 牟田氏
  • 2人が手にしているのは、私鉄系スーパーのプライベートブランド「VマークVALUEPLUS」の公式ブランドキャラクター「ブイーナ」

ビジネスチャンス・ナビ2020(以下、チャンスナビ)では、企業間の発注・受注だけでなく、企業と大学とのコラボレーションによる商品開発の事例もあります。今回ご紹介するのは、私鉄系スーパーのプライベートブランド商品の開発を行う企業と大学のマッチング。企業側の課題を打開したプロジェクトをご紹介します。

お客様の需要を読み解くと差別化する点が可視化される

株式会社八社会 代表取締役社長 塩路 茂氏 株式会社八社会 代表取締役社長 塩路 茂氏

発注者:株式会社八社会 代表取締役社長 塩路 茂氏(以下、塩路) 弊社は、首都圏沿線の私鉄系スーパー8社の共同出資により設立された、プライベートブランド商品の企画・開発を手がける会社です。スーパーには競合他社も多く、ナショナルブランドと呼ばれるメーカーが製造している商品を販売すると、どこのスーパーも同質化してしまい、差別化が難しくなります。弊社は商品をもってして、お客様に足を運んでいただきたいと考えており、それぞれのスーパー独自で売り出すプライベートブランドは、お客様にどれだけ寄り添うことができるかが肝だと思っています。首都圏の私鉄沿線でスーパーを展開するうえで、どういったお客様が多いのかという点を改めて考え、通常販売されているプライベートブランドの商品とは違った取り組みをしたかったんです。

比較的、バイヤーは男性が多いため、男性の感性が強く反映されてしまうこともしばしばあります。しかし、スーパーに来られるお客様の7〜8割は女性です。昨今は働く女性が多い中で、スーパーで食材を買って料理をするといった時間を少しでも短く、楽にしたいという思いがあります。そうした背景から惣菜の需要が大きくなっており、弊社でも加盟店の伸びしろが高い状況です。今回のプロジェクトは、コンビニより店舗が広く、駅前立地で利便性が高い加盟店のスーパーで、すぐに食べられるお弁当にチャンスがあるだろうと、担当の相川が着目したことが始まりです。

新しいことに挑戦するには第三者からの発想が必要

店頭POP 店頭POP 完成したお弁当2種。共立女子大学サークルくすくすのメンバーが考えた店頭POP

塩路 われわれも今回が初めてではありますが、競合他社でも、お弁当のプライベートブランドを持っているスーパーはありません。なぜなら、惣菜はたいてい各スーパーが自店で作ることが多かったからです。そのため、プライベートブランドというもの自体が必要なかったのです。しかし、店舗側も人手不足や、作る場所が狭かったり、大量に作れないため商品がなくなってしまうという課題も抱えていました。そのため、どのスーパーでもナショナルブランドのお弁当を販売しているケースが多くなってきています。その中で、われわれが差別化を図ってオリジナルブランドのお弁当を作れれば、新たなチャンスになるのではないかと思いました。

われわれ加盟店のスーパーを利用されるお客様には、健康や環境といったことに関心が高い方が多いのが特徴です。スーパーにいらっしゃる女性目線でお弁当を作ったらお客様の支持を得られると考えました。 また、オリジナルブランドのお弁当を開発する際、第三者に意見をいただける環境を作りたいと考え、ビジネスチャンス・ナビ2020の発注コーディネータにご相談しました。

当初は、お墨付きではないですが、「栄養士監修」や「有名シェフ監修」といった要素を取り入れたいと思っていましたが、発注コーディネータから大学とのコラボの方がインパクトがあるのではと提案がありました。そこで、今回は栄養についても専門的に勉強しており、若い女性の発想により商品を差別化できるようにと、共立女子大学を紹介いただきました。

共立女子大学の学生と女性の発想で開発したお弁当

開発途中の試食会の様子 開発途中の試食会の様子

株式会社八社会 生鮮食品部 惣菜マネジャー 相川千賀氏 お弁当の開発は共立女子大学の「くすくす」というサークルの学生の皆さんと一緒に、取り組むことになりました。開発するうえでポイントとしたことは2つあります。健康を意識しているお客様に訴求するため、1つ目は、お弁当を500キロカロリーに収めること、また、2つ目は日常的にご利用いただけるようワンコインで購入できるという点です。開発をスタートさせる際、最初に共立女子大学のメンバーに自由に考えてもらったときは、1000キロカロリーで1200円ぐらいのお弁当ができてしまいました。また、販売となると作ってからお客様が購入し、お召し上がりになるまでの状態や時間を想定しながら作らなければならないため、多くの制約があります。われわれは企画・開発のプロですから常に考えていますが、共立女子大学メンバーにとっては初めてのことです。しかし、日ごろとても勉強されているようで、多くの縛りがある中でも代案を次々に用意してくれました。

塩路 今回は弊社と共立女子大学でお弁当の企画・開発を行いましたが、実際にスーパーでオリジナルブランドとして販売するためには、工場を巻き込む必要があります。このお弁当のプロジェクトが始まってから、工場にもすぐに話をしに行きました。工場側もとても協力的で担当者も女性にしてもらい、弊社・共立女子大学・工場の三位一体で取り組めたことが良かったと思っています。

今回、チャンスナビを活用してよかったのは、日ごろまったく接点のない方とマッチングができ化学反応を起こせたことです。自分たちの範囲・発想の中だけだと、物事は限られてしまいます。今回のように、新しい選択肢をご紹介いただいたからこそ、自分たちの範疇を超えて新しいものを生み出すことができました。こうした支援をすべて無料で活用できるという点も、チャンスナビのメリットだと思います。実際、当初予想していたお弁当の販売数の2〜2.5倍売れている状況です。加盟店のスーパーのバイヤーからも、今後もこういった新たな挑戦を続けてほしいと言われています。
お弁当の中身を少しずつ変えて、まずは1年続けてみたいと思います。お客様に喜んでもらえるプライベートブランド商品を作っていきます。
われわれの世界だけでは解決できないことがあるので、今後も今回のような良縁によって新たな挑戦に取り組んでいきたいと思います。

企業名 株式会社八社会
業種 百貨店、総合スーパー
事業内容 首都圏の私鉄系スーパー約330店舗で販売するプライベート商品「Vマークバリュープラス」の開発事業
加工食品、日配食品、水産・農産・畜産・畜産物、惣菜、生活用品、実用衣料まで生活に密着した商品を展開
URL https://www.v-mark.jp/

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