【Vol.14】2020/03/24
“地球環境への配慮”という志を共にした企業がつながる

  • 写真左:受注者 株式会社TBM 営業本部シニアマネージャー 御牧 慶次氏
  • 写真右:発注者 有限会社高麗堂 代表取締役 平山 智子氏

ビジネスチャンス・ナビ2020(以下、チャンスナビ)では、お互いに同じ目的を持つ企業同士のマッチングも生まれています。SDGs(持続可能な開発目標)に取り組み、地球環境に配慮した製品を生み出す企業と、それを提供していく企業の、まさにベストマッチとなった事例をご紹介します。

環境問題に取り組む企業同士、即断即決で取引が決まる

発注者:有限会社高麗堂 代表取締役 平山 智子氏(以下、平山) 弊社は、イベントの企画運営及び、飲食店を運営している会社です。運営する店舗はいくつかありますが、現在、羽田空港の第2ターミナルにて世界8カ国9種類の食事が楽しめるフードコート「UPPER DECK TOKYO」も運営しております。私たちが手がけているレストランは、食材はもちろん、調味料もごま油も小麦粉までも、オーガニックを使用することにこだわっています。

世界中を飛び回り、アジアの食文化を広めている平山氏。この日の撮影後もアメリカへと向かわれていた

受注者:株式会社TBM 営業本部シニアマネージャー 御牧 慶次氏(以下、御牧) 弊社は、石灰石を主原料にした新素材「LIMEX」を開発・製造・販売しています。LIMEXは、石灰石(炭酸カルシウム)など無機物を50%以上含む、紙やプラスチックの代替となる新素材です。世の中にあるポリエステルやポリエチレンなどは、石油由来でできています。そのうち50%以上を石灰石に変えれば、石油の使用もゴミとなるプラスチックも減らすことができるんです。もともとは、台湾の石灰石を使用した「ストーンペーパー」の輸入からスタートした会社ではありますが、輸入したものは実用性に欠けていました。そこで私たちは、自社で研究開発し、たとえばシート状にしたときの印刷適正や比重、価格など、あらゆる面で実用できる素材を作ることに成功しました。

平山 私たちのフードコートは、料理を全てテイクアウトできるようにしていますが、そのため、毎日多くの使い捨て容器やビニール袋などのゴミが出てしまいます。今回、羽田空港の国際線拡張工事に伴ったフードコートのリニューアルオープンをきっかけに、テイクアウト用の製品をはじめ、フードコートで使用するトレイや食器などもすべてオーガニックレストランにふさわしい、環境に配慮した製品にしたいと考えていました。自社でも石油由来の素材を使用しない、アルミやトウモロコシを使った容器を開発していたくらいです。そんなときに、発注コーディネータからTBM様をご紹介いただき、LIMEXのお話を伺った瞬間に「まさにこれだ!」と。

LIMEX本社にて。製品力はさることながら、来客の際は社員全員で挨拶するなど心遣いやチームワークのよさが光る、現在急成長中の企業の営業をマネージャーとして統括する御牧氏

御牧 ちょうど自社で開発したてだったトレイをご紹介させていただいたら、ありがたいことに即決でお取引いただくことができました。

平山 コスト面も高くなくて。弊社では紙製品も扱っていましたので、それに比べたらとても安かったんです。それも魅力でした。製品を高コストにして料理の素材にかける金額を削減するわけにはいかなかったので。こうした新しい技術があるとは全く存じ上げていませんでしたし、私たちがインターネットで調べても限界がありますので……。なので発注コーディネータのおかげで、私たちが今求めているまさにぴったりな情報をいただけました

御牧 先ほどもお伝えしたように、トレイを開発後、初営業にして初受注となったのが高麗堂様でした。なので、我々も試行錯誤していた段階でしたので、取引が決まったときは非常に嬉しかったです。社内に採用されたことを報告したらすごく盛り上がりましたよ。発注コーディネータには商品に対しても熟知いただいているので、今回は私たちが求めていることと、高麗堂様が求めていることがきれいにマッチングしたなと。同じ信念を持つ者同士を繋げていただいたと感じています。製作は、フードコートのオープン日が決まっておりましたので、なんとか間に合わせようとチーム一丸となって、必死で納期まで作業に取り組ませて頂きました。

平山 納品いただいたトレイは強度もすごくしっかりしていますし、使い勝手もよく大変満足しています。今回のマッチングをきっかけに次はテイクアウト用の手提げ袋もご相談させていただいてまして、こちらは消費する数の多いのでコンスタントに発注したいと考えています。この先ずっと使っていくものですし、羽田空港内はもちろん、日本全国にも広がる製品になるはずです。

持続可能な資源を作り、“脱プラ”を実現していく

今回納品されたLIMEXで作られたトレイ

現在開発が進んでいるテイクアウト用手提げ袋 ※イメージ

御牧 これまでの製品は、主原料の石灰石と石油由来樹脂で製作していますが、石油由来で作っていた部分も植物樹脂のものに切り替え、100%天然素材で出来つつあるんです。それにより、“脱プラ”を実現できるのではないかと思っています。

平山 私たちは今使っているものすべてを見直す必要があると考えています。全体を見直して、当たり前だと思っていたことを当たり前じゃないととらえる目で見ていく。未来にフォーカスし、負荷のかからないものに変えていかなくてはなりません。まずは日常のなかからでいいと思います。たとえば食事も、味は美味しくても良質といえない材料で作った料理やジャンクフードを食べていたら健康を害しますよね。それと同じで、私たちが使うもので地球を傷めないようにしなくてはならないと考えています。このことを実現するために、コストはできるだけ高くしないことが大切です。高くせず、一般化できるものを使用していくことで、同じように環境を考えてくれる店がたくさん増えたらいいと思っています。

御牧 我々の素材の特徴のひとつに、「アップサイクル」という仕組みがあります。使用したものを価値を上げてもう一度再製品化していくことができるんです。たとえばLIMEXで作った名刺を回収し、再原料化してもう一度違うものに作り替えることが可能です。LIMEX製の手提げ袋や食品の容器も、使用後は回収して今度はトレイやスプーン、お椀に変えていく。そうすることで、資源を使い切るのではなく、循環させていくことが大切だと考えています。実際に、LIMEXで作った印刷物を回収し、お椀に成型して漆塗りを施した製品も作られています。いずれ捨てられるものを量産するのではなく、持続可能な製品の開発や資源循環の仕組みを実現していきたいと考えています。

企業名 株式会社TBM
業種 パルプ・紙・加工品製造業、プラスチック製品製造業、その他製造業
事業内容 石灰石を原料にした紙やプラスチックの代替となる新素材の開発・製造・販売
URL http://tb-m.com/limex/
企業名 有限会社高麗堂
業種 飲食店、飲食サービス業
事業内容 イベントの企画運営、飲食店の運営
URL http://koraidou.com/wp/

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