【Vol.16】2020/04/08
栽培棚の開発で新たにパートナー企業を発見

• 左から　世界発信プロジェクト事務局発注コーディネータ　滝沢　典之氏
• 　　　　株式会社仙崎鐵工所　代表取締役　沼　りえ氏
• 　　　　ENEX株式会社　代表取締役　細井　友亨氏
• 　　　　同社　技術顧問　藤田　義信氏

ビジネスチャンス・ナビ2020（以下、チャンスナビ）では、民間の企業、大学、研究機関などからの多種多様な入札・発注案件を多く掲載しています。発注企業は、受注エントリーを待つだけでなく、コーディネータを活用することで、より希望に合う受注先企業とマッチングすることが可能です。今回は、企業の課題解決に向けて、新たな受注先の開拓にチャンスナビを活用いただいた事例を紹介します。

菌床しいたけ栽培棚の開発・提案ができる理想の受注企業

ENEX株式会社　代表取締役　細井　友亨氏

発注者：ENEX株式会社　代表取締役　細井　友亨氏（以下、細井）　弊社は、地下水熱を効率よく活用するヒートポンプシステムの開発やそれに伴う工事を行っています。大気中の温度とは異なり、地中の温度は一年を通じてほとんど変化しません。そのため、夏場は外気温度よりも地中の温度は低く、冬場は外気温度よりも高いのです。この温度差を利用して、効率的な冷暖房を実現させます。弊社は、農業分野のヒートポンプを手がけていますが、そのヒートポンプのシステムの効果を最大限発揮するために、昨今は栽培システム丸ごと提案・納品してほしいというお声を多くいただくようになりました。

受注者：株式会社仙崎鐵工所　代表取締役　沼　りえ氏（以下、沼）　弊社は、京浜工業地帯の川崎で製缶の事業を行っています。85年以上の長い歴史の中で蓄積された技術を活かし、鉄やステンレスなどの金属版を溶接してモノづくりに携わっています。製缶ネットワークと呼んでいますが、周辺の協力会社とネットワークを組み、材料調達から機械加工、塗装等の各工程を取りまとめ、製品筐体の製作、組み立て、検査を請け負っています。各工程のスペシャリストがネットワークを組み、総合的な技術力でお客様の要望にお応えしています。

細井　今回は、秋田県で菌床しいたけ栽培を行っているお客様から、栽培システムの1つである栽培棚を製作してほしいと要望があり、受注先を探していました。菌床しいたけ栽培は、原木に穴をあけて菌を植えつけて栽培するのではなく、木材チップをブロック状に形成した菌床という土台を作り、そこでしいたけを栽培します。
そのお客様は、これまで他のルートから栽培棚を調達していましたが、製作や運搬のコスト面においてより現場の希望に合った棚をという要望でしたので、発注コーディネータの滝沢さんにご依頼をして、複数の企業様をご紹介いただきました。
弊社も、棚の開発は初めてですので、開発にあたり製造や設計に関する提案をいただける会社を探していました。そんな折、仙崎鐵工所様は、ノウハウを豊富に持ち、積極的に開発提案もしてくださったので、ご依頼しました。

条件を明確にして開発から課題解決に取り組む

株式会社仙崎鐵工所　代表取締役　沼　りえ氏

細井　棚を製作するにあたりお願いした条件は、秋田まで分解して運べることと、誰でも簡単に組み立てられるということです。
輸送するのに棚の形のままですと、間の空間部分も運賃に反映されてしまいます。そのため、分解してなるべく密にした状態で運びたいと考えていました。また、分解して運ぶのであれば、現地で組み立てる必要が出てきます。これまでは、組み立ての際に職人を確保する手間とコストがかかってしまっていました。また、従来は基本的にすべてボルトで固定していく方法でした。場所によってボルトの長さも違うので付ける場所を間違えて組んでしまい、最後に部品が足りないということが多々ありました。
ある程度ボルトレスで組み立てられるように製作いただきました。現状発注している3つの棚のうち2つは納品済みですが、ボルトレスを採用したおかげで、誰でも簡単に組み立てができるうえ、組み工数がぐっと減ったという報告をもらっています。

沼　私どもも棚を作るのは初めてだったので、細井社長からお話をいただいた時も、ネットワークのあるいくつかの会社に話してみようとなりました。製缶ネットワークを使った提案の際も、2社以上からの購買を心がけています。1社独占となると、お客様が価格の部分で満足できない結果になってしまうことがあるからです。
細井社長に工場まで来ていただいて、何度か打ち合わせを行いました。4本あるバーを3本にしたらどうかとか、ここは切ってしまってもいいのではないかなど、その場で判断いただくこともありました。弊社は、モノづくりが好きな人間が集まっているので、自分たちでこうしたらいいのではないかなど張り切って考えていましたね。

コーディネータを介することで信頼関係の構築とスムーズな進行を実現

仙崎鐵工所には、溶接の資格を持った職人が数多くいる

沼　試作品を作り始めたのは、昨年の夏頃でした。図面からのスタートでしたし、材料の価格についてもENEX様とお客様が納得できるものでなくてはなりません。3週間に1回ぐらいの頻度で打ち合わせをしていましたね。初めての案件で、時間も限られている中、そうした打ち合わせがスムーズに進行したのは、発注コーディネータが間に立っていてくれたからだと思います。案件についてお話いただいている時点で、弊社のことも分かってくださっているし、ENEXさんについてもよくご存じだし、不安に感じる要素は少なかったです。初めは打ち合わせの日程調整にしても、開発の連絡にしてもすべて中継してくれました。そうしたやり取りの中で、発注コーディネータへの信頼もさらに深まりますし、その方が持ってきた案件なので、安心して取り組めました。

細井　発注コーディネータには、棚の製作だけでなく、さまざまな案件をご相談しています。自社で取引先の企業開拓を行うには、時間と労力が必要です。そして今の時代、訪問して営業をするということはあまりないと思います。そうした中で、新たに企業を探すとなると、チャンスナビのようにコーディネータを介して、企業を紹介していただけると、距離を詰めるのが非常に早いと感じます。別の会社様ですが、12月上旬に開発からご依頼して、1月上旬に納品いただいた案件もありました。この案件内容ならこの企業が得意、この作業ならここといったように、さまざまな企業の中からその道の専門家をご紹介してくださるので、弊社のような地方から出てきた会社はチャンスナビを活用すれば、開拓がスムーズにできるのではないかと思います。