【Vol.17】2020/12/03
コロナ禍の中、柔軟で力強い経営ビジョンを持つ
大田区の部品製造会社

  • 株式会社志村精機製作所
  • 代表取締役 志村 哲央氏(写真 右)
  • 専務取締役 浅野 雄三氏(写真 左)

ビジネスチャンス・ナビ2020(以下、チャンスナビ)では、民間の企業、大学、研究機関などからの多種多様な入札・発注案件を多く掲載しています。発注企業は、受注エントリーを待つだけでなく、コーディネータを活用することで、より希望に合う受注先企業とマッチングすることが可能です。今回は、コロナ禍の中、自社製品の開発を続け、チャンスナビを商談や情報交換の場として活用し、海外展開も視野に入れる企業を紹介します。

本格的な海外進出の矢先のコロナ禍

代表取締役 志村 哲央氏

Q.貴社の沿革や事業内容などを教えてください。

A.(志村社長) 1964年に部品製造会社として創業して以来、高精度部品の切削加工一筋に歩んできました。現在は、事務機器の機構部品、光学機器の鏡筒部やマウント部、半導体装置のテフロン部品加工や金属加工、内視鏡先端部品や関節部品、自動車関連のダイキャスト部品、時計の外装部品をはじめギアやムーブメント部品の製造などを行っております。高い精度が求められる機械加工が弊社の強みです。
また、設計から製作・成形・トライ・検査まで一貫生産体制を構築して難易度の高い金型部品の製作を行うほか、各種製造メーカーのニーズに合わせて、光学機器などの最先端技術を用いた製品装置から簡易的な治工具まで、さまざまな企画開発・設計・製造・組み立てに対応しています。

Q.半世紀以上も多岐にわたる事業展開をされている中で、今般のコロナ禍に見舞われました。コロナ禍の影響について教えてください。

A.(志村社長) 影響は主に2つあり、ひとつは、展示会や商談会の開催が中止になったことです。
弊社ではこれまで、展示会・商談会ともに、年10回くらいずつ参加していました。全国各地で行われる展示会・商談会では、弊社が持つ製造技術をとても高く評価いただき、大手企業をはじめとするメーカーからの商談や受注の大きな機会となっていました。また、そこでの取引から信頼を得て、さらに大きな案件を受注したり、他の企業とのつながりへと広がることもあります。
ほとんどの新規受注獲得は、展示会や商談会がきっかけだったため、それが中止してしまったことは、大きな痛手となりました。

Q.新規受注の減少で先行きが見通せない状況となり、大きな打撃となったことと思いますが、他にはどのような影響がありましたか。

専務取締役 浅野 雄三氏

A.(浅野専務) もうひとつの影響は、海外との行き来が遮断されたことです。
実は、コロナ禍よりも前から、国内消費が伸び悩みを背景に、多くの企業が設備投資を控える傾向にあり、弊社のような試作品づくりをメインとする製造業においては景気の悪化を肌で感じている状況でした。
そこで、3年ほど前から、本格的な海外販路開拓に乗り出すことを決めました。2018年に大田区の支援を受けて出展したドイツのロボット関連の展示会では、初めての海外展示会でしたが手ごたえを得て、その後も定期的に海外展示会に出展を続けていました。2年前には、アメリカにサポートオフィスを開設しています。
弊社の加工は、誰にでもできるというものではありません。高い技術力に裏打ちされた精密・微細加工を武器に、社内の海外展開への機運が高まっていました。そんな矢先に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外展開に向けた事業計画を見直す必要に迫られたのです。

オンラインでの営業活動で顧客メーカーの継続取引を強化

Q.受注機会や事業展開に大きな影響を及ぼすコロナ禍において、今後、会社経営においてはどのような舵取りを行っていきますか。

A.(志村社長) 現状の試作品中心の事業から、量産品へシフトする事業展開を始めることにしました。これまで、事務機器や光学機器、半導体装置などに使用する一部品の試作品づくりを受注していましたが、幸運なことに、量産取引のお話をいただいておりますので、それに対応できる体制を構築していきます。
この量産取引については、弊社の強みである高精度な技術を高く評価してくださったメーカー側からの打診であり、こういう非常時にこそ、長年の取引に慢心せず築いてきた厚い信頼関係が活かされるのだと感じています。お取引きをいただいている顧客メーカーが離れることなく、取引継続への努力も必要と考え、営業面では電話とメールを活用して現況や今後の動向に関するヒヤリングを強化しています。
そして、従来の対面の営業活動だけでなく、オンラインを駆使した非対面の営業手法も非常に重要と考えています。ホームページは英語版も追加してリニューアルするほか、SNSの活用、メルマガによる情報発信にも取り組み始めています。チャンスナビもそのツールの一つとして、有効に活用しています。

コーディネータとの出会いがチャンスナビを活用するきっかけに

Q.オンラインの営業ツールとしてチャンスナビをご利用いただいていますが、ご登録のきっかけなどを教えてください。

A.(浅野専務) 公社主催の「新技術創出交流会」で、お話を聞かせていただいて「東京オリンピックも近いし、無料で利用できるなら…」というくらいの軽い気持ちで、とりあえず登録しました。でも、実は、弊社とマッチするニーズがなかったこともあり、登録しただけで活用していなかったというのが、正直なところです。
そのようなときに、福島県の医療機器の展示会で、チャンスナビの発注コーディネータとお会いする機会があり、具体的な使い方を教えてもらってからは、頻繁に利用するようになりました。

Q.現在では、チャンスナビをどのように活用されていますか。

A.(浅野専務) 情報収集や企業とのマッチングで活用しています。やはり、全国各地のあらゆる業種の企業が登録しているので、様々なニーズにマッチする企業が見つかるところがポイントだと思います。

協力会社を探すときには、弊社と同じ高品質を保つ技術や実績があるのか、そもそも信頼できるのかといった裏付けがないと、なかなか一歩前に踏み出せません。そんな時は、発注コーディネータが間に入って、弊社とマッチしそうな企業をピックアップしてくださるので大いに頼りにしています。
中小企業の経営者はみなさん多忙ですので、あらかじめ確度の高い候補企業を絞ってもらえるのは、効率が良く非常に有難いです。
逆に、弊社が受注できそうなものづくり関連の案件について、発注コーディネータから情報提供を受けて、受注エントリーすることもあります。すべての案件が商談につながるわけではありませんが、多くの商談や、様々な企業の方と情報交換をさせてもらっており、今後に期待しているところです。

Q.最後に、コロナ禍という厳しい状況ではありますが、将来の経営ビジョンや事業展開をお聞かせください。

A.(志村社長) コロナ禍であっても「常に自社製品の開発は続けていく」という姿勢は変わらないですし、コロナ禍だからこそ、自社製品開発は続けていかなければならないと考えています。
今後、コロナ禍の影響が弱まれば、もちろん海外への事業展開にも再び注力していきます。今まで以上に海外取引を増やし、2030年までには海外での生産拠点としての工場を設立することを目標にしています。
経営においては、これまでとは異なるアプローチも積極的に取り組んでいきます。営業方法も前述のとおり、ホームページやSNSでの情報発信のほか、バーチャル展示会への参加など、新しいスタイルを確立させていきたいと考えています。新事業につながる企業やビジネスに出会えるように、これまであまり参加してこなかった研究開発の技術課題のセミナーや学会などにも積極的に参加していきます。
これらの経営目標や事業展開を達成するために、文字どおりのナビであり道標であるチャンスナビを、これからも大いに活用していきます。

自社工場に備わるマキノiQ300
マキノiQ300で加工した鏡面加工部品。研磨をすることなくマシニング加工のみで表面粗さをミクロン台で出すことが可能

製品紹介

金属加工(全業種)
自社製作の主な金属加工部品
樹脂加工(全業種)
主な樹脂加工部品
自社製作のスマホケース
最も得意とする細かい形状加工。このスマホケースの模様は引き戸や障子戸に使用される日本の伝統文様を散りばめた組子を表現
自社製作の微細加工はさみ
マキノiQ300(写真撮影済み)で加工したはさみ。小さいが紙を切ることも可能
自社製作の微細加工ウクレレ
マキノiQ300 で加工したウクレレ。(弾くことはできません)
企業名 株式会社志村精機製作所
業種 プラスチック製品製造業、非鉄金属製造業、金属製品製造業
事業内容 OA機器、光学機器、医療機器など高精度部品の加工、プラスチック射出成形金型の設計・製作・成形、光学機器などの最先端技術を用いた製品から簡易的な治工具までの企画・開発
URL http://www.shimuraseiki-3s.com/

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