LLMと医療ナレッジに依拠した
自然言語処理の技術を活用した、
あらゆる医療シーンでの業務改善と
患者満足度向上を実現するサービスの創出
kanata株式会社
開発したサービスの概要
診察室での医師・患者の会話を記録し、両者の不満を解消したい
サービス開発のきっかけ
滝内代表取締役は、診療中に「医師がモニターばかり見て、自分を見てくれていない」という、患者の不安を自ら体験した。一方、医師は「電子カルテの入力項目が日々増えており、医師も限界を超えている」という。そこで、クリニック向けに「診察室の会話をサマライズして記録する、医療秘書的な機能を持つ電子カルテ」を開発した。その後、現場の声を反映して、既存の電子カルテにアドインでき、診察室での全会話を自動で記録する「KanaVo」をリリース。クリニックだけではなく病院や介護現場からの要望を受け、幅広い医療・介護シーンに対象を広げ、さらに要約結果から各職種が必要とする情報を共有する機能の実装を図ることとした。
開発したサービスの紹介
ボタン1つで診察中の会話を記録。あとはカルテにコピーするだけ
今回の開発では、「KanaVo」の医療者・患者の会話記録の精度と使い勝手が向上した。「KanaVoは既存の電子カルテの邪魔をしないよう、いつもひっそりと佇むように画面の片隅に存在しています。ワンクリックで診察中の会話の記録が始まり、終了ボタンを押せばAIによる要約が10秒ほどでできあがるので、あとは電子カルテに必要な内容をコピー&ペーストするだけで良いのです。医師は煩雑な電子カルテの入力から解放されしっかり患者さんに向き合え、患者さんからは“医師が優しくなった”とのお声をいただいています」(滝内代表取締役)。現在はさらに開発が進み、「KanaVo」が電子カルテと自動的につながり、特別な操作すら不要といった形に進化しつつある。
スマホのアプリの開発で、KanaVoが診察室から飛び出した
医療者と患者の会話は診察室の中だけではない。例えば看護師ならば、患者の病室を次々にまわり、一人ひとりと会話をしながら様々な記録を取らなければならない。今回の開発では、この看護師のラウンドでも使用できるよう、スマートフォンのアプリも制作した。スマートフォンを持ち歩きアプリを起動するだけで、自分のデスクに戻った時には回った患者全員分の記録が反映されて一覧で表示され、コピー&ペーストで電子カルテに反映できる。このアプリは看護師だけではなく、医師、薬剤師、在宅診療などでも活用していただける。リリース後もブラッシュアップを続けており、各地の方言にも対応する機能も充実しつつある。
煩雑な各種書類制作もお任せで、医療者のQOLの向上にも役立つ
「KanaVo」によって収集できる情報量は、従来の3倍〜5倍、中には10倍と評するユーザーもいる。そしてこの充実した情報を使って、カルテ以外の文書の作成も可能とした。病院では、患者を他の病院に紹介する情報提供書、看護師に対する指示書、退院時に患者に渡す書類、役所に提出する書類など、多様な文章を制作しなければならない。今まではカルテ情報だけでは不十分だったため、その都度書かねばならなかった。しかし「KanaVo」は必要な情報を選択して作りたい項目を選べば、数秒で文書を生成。インプットもアウトプットも可能なため「文書仕事の8割ほどはKanaVoにお任せ」も可能だ。これによって医療者が事務に割く時間が削減でき、QOLの向上にも役立つ。
開発期間中の振り返り
コーディネーターと毎月顔を合わせることが、進捗確認に役立った
支援が始まり、コーディネーターから毎月1回の打ち合わせを提案された際、滝内代表取締役は「それほど頻繁に会う必要はないのでは?」と感じていた。しかし「この定期的な顔合わせも、開発を進める上で大いに役立ちました」と言う。「定期的に会うということになり、私を引っ張り出してくれたおかげで、“壁打ち”ができたわけです。他の事業やプロジェクトも並行して進めている中で、時には当プロジェクトのスピードが落ちることもありましたが、コーディネーターの方と直接話すことで、ここは遅れ気味だ、ここはまだできてなかった、といったように確認ができました。今振り返るとそれが実は非常に大事なことだったのです」(滝内代表取締役)。
ブランディングや広告の考え方を学び、他の事業にも活かしていく
支援の中ではYouTube動画・SNSなどの専門家、元雑誌の編集長の3名の専門家派遣で、「どうやって世の中の人々に伝えるのか」という部分のアドバイスも受けた。「全国に30万人以上いる医師にどう伝えるのか?小規模な会社の作ったものをどう信用してもらうのか?といったブランディングの方法、キャッチフレーズ、 SNS展開などのアドバイスをいただきました。“もの”の価値を人に伝える時には、そのものの後ろにあるビジョンや、利用者の顔、使うシーンなどをイメージしながら伝え方を考える、ということは大変勉強になりました。今でも新しいサービス・新しい機能を作る時には、そこに一回戻ってから考えるようにしています」(滝内代表取締役)。
申請・精算の書類作成は、事業や社員に対する認識を棚卸しする作業
「本音を申しあげますと、助成金の申請や精算書類の作成というものは非常に面倒なことです。しかし、これが私にとっては大変有意義な作業となりました。なぜ自分たちはこの仕事をしようとしているのか?後押ししてくれる利用者がどれほどいるのか?生の声やデータもどれほど寄せられているのか、といった棚卸しができると、この事業の課題が一つひとつクリアになっていきます。そしてコーディネーターや専門家の方との壁打ちで、その解像度がますます高まってくるのです。精算時には、これまで漠然としていた社員や協力会社の方々の頑張りが形になり、パートナーとしての価値をあらためて認識できたことも、大きな収穫です」(滝内代表取締役)。
これからのビジョン
「KanaVoは約700のクリニック・約20の病院で導入されており、好評の声をいただいています。現在は、医師が話した指導内容などを患者さんが自宅で実行に移し、医師にフィードバックし、さらに地域の様々な事業者ともつながるスマートフォンアプリを試作、ある病院で実証実験中です。私は今の事業を始めた時に経営の師匠から“医療機関に提供するサービスなのだから、大切なのは絶対に止めないことだ”と言われました。そして今回、東京都の支援を受けたことで“都民に後押しされている以上は絶対に止めてはならない、本当に役に立たねばならない”という意識を強くしました。今後も止まることなく開発を続けていきます」(滝内代表取締役)。
会社情報
| 社名 | kanata株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 滝内 冬夫 |
| 所在地 | 中央区築地3-7-1 TSUKIJI GRANDE 2F |
| URL |
https://www.kanatato.co.jp/ |
代表者情報
代表取締役 滝内 冬夫
慶應義塾大学経済学部卒業。シンクタンク勤務を経て、2004年より医療法人における電子カルテの制作に参加。2008年、メディカリューション株式会社に取締役として参画。2017年、音声認識及び自然言語処理に関する研究に着手。2018年 kanata株式会社を設立。同社代表取締役に就任。