機械学習の技術を活用した
動産自動査定を可能とするサービスの創出
ガレージバンク株式会社
開発したサービスの概要
既存アプリの「査定」機能を自動化し、法人顧客の課題を解決
人は手元の資金不足のため、やりたいことを諦めねばならないこともある。一方で、家の中には高価なデジタルガジェットがあふれていたりする。「ならば、その資産性を評価し資金化することで、その人の夢を後押しできるのではないか?」との考えから同社が開発・提供しているアプリケーションが「cashari / カシャリ」だ。同アプリは動産資産を査定しその価値を管理、売買またはリースバックによって資金に変換、アプリ内の銀行機能で資金を活用、といった3つの機能で構成される、ユーザーの資産活用プラットフォーム。今回の支援では、この中から「査定」部分の自動化を図り、リユース事業者向けの課題解決に資するサービスを開発した。
サービス開発のきっかけ
山本代表取締役は「カシャリ」事業を通してリユース会社との交流を深めていく中で、査定技術の属人化や人材不足といったリユース業界共通の悩みを知った。「査定の部分だけ切り出せないだろうか」という声もいただいた。当時の「カシャリ」は、ユーザーがアイテムの写真を撮ってアップロードすると、オペレーターが査定し、資金化できるというシステムだったが、すでに査定の画像分析に取り組みはじめている。その技術に磨きをかけ完全自動化を図れば、課題の解決は可能だ。ネックとなるのは、主業務以外にどこまで投資できるか?ということであったが、今回の支援プログラムと出会えたことで問題はクリア。完全自動査定のシステム開発に踏み切った。
開発したサービスの紹介
人に頼っていた“目利き力”をAI化、数十秒で査定が完了
「カシャリ」の査定においては支援が始まった時点で一部自動化していたものの、まだ人の判断に頼る部分が大きく、ある程度の時間を要していた。しかし今回新たに開発した技術では、アプリの指示に従って利用者がスマートフォンで査定したいものの写真を撮りポストすると、AIが画像を読み取り分析。数十秒で機種名・型番などを特定し、査定価格が表示される。いわば“目利き力”の機械化が実現したのだ。精度検証も実用に問題ないレベルに達しており、まだ“目利き力”がついていない方でも一定水準の査定ができ、専門のデバイスが不要でスマートフォン1つで対応可能であることから、導入コストも抑えられる。
高い精度でのデジタルガジェットの完全自動査定が可能に
今回の開発でiPhoneやAndroidといったスマートフォン、パソコン、ゲーム機といったデジタルガジェットについて、高精度での査定が可能となった。これらはブランド品・貴金属を中心に扱うリユース事業者にとって、比較的不得意な分野だ。一方、ブランド品に関しては、鑑定要件が高度であるため、現段階では査定の補助ツールとしての活用を想定しており、今後の精度向上に継続して取り組んでいる。現段階でも査定の補助ツールとしては十分活用できるレベルであり、現在はシステムへの組み込みを進めている。同時に、会社ごと・商品ごとのインターフェイスの制作、PoCも進行中だ。
法人向け査定システムの開発が、既存事業にも好影響を及ぼす
「カシャリ」の査定部分の技術の強化はリユース事業者といった法人をターゲットとしていたが、査定のスピードが格段に早くなったことで一般の「カシャリ」ユーザーにも大きなメリットが生じた。「お客様がご自身の持つガジェットの値段を調べるのは、売る・見比べる・リースバックするといった、その次のアクションにつなげるためです。例えば、ご旅行の資金が欲しい方は、一刻も早く資金を手元に、と思ってカシャリをご利用いただいています。写真を撮るだけであっという間に価値がわかり、すぐにその金額が振り込まれるといったように、一連の流れがスピードアップしシームレスになったことは非常に大きなことだと思います」(山本代表取締役)。
開発期間中の振り返り
アドバイスを受け「良いものを作るだけではだめだ」と気づいた
「私たちには技術開発やリユース業界の知見はあります。しかし“できあがったもののビジネス化をどう進めるか“といった部分は、悩ましいところでした」(山本代表取締役)。また、既存事業も維持しながら、当該事業を成長させるのも、簡単なことではない。そこで支援が始まってからは隔週でコーディネーターと面談、既存事業の状況にも目配りしながらの様々な助言を受け、開発を進めた。「特にコーディネーターとの対話を通して気づきがあったことは、自分たちの中にある“見込み顧客の思い込み”です。いくら良いものを作っても売れなければ意味はなく、並行してきちんと営業活動も行うという意識づけにつながりました」(山本代表取締役)。
先端を行く専門家とのマッチングで、進むべき方向に確信を持った
開発スタート時、山本代表取締役は「査定の自動判定モデル作りは自社の独自開発の領域の方が強い」と考えていた。しかしちょうどその頃、日本を含め世界では複数社の汎用AIが競い合い、予想をはるかに超えるスピードで進化するという驚くべき局面を迎えていた。「独自モデルか、汎用AI か?」技術的な切り出しに悩んでいたところ、支援の一環で専門家派遣を受けることに。マッチングしたのは東大研究室の出身で、最先端のAI研究開発を行う企業の代表取締役だ。「まさに私が悩んでいる分野に精通した方でした。正解がわからない中、先を歩いている方に助言していただけたことで、進むべき方向に確信を持てました」(山本代表取締役)。
公社の支援が新規開発事業へチャレンジする勇気をくれた
「当社はスタートアップでありエクイティファイナンスで事業を進めているため、“成長している事業に注力していくこと”を求められます。それはありがたいことなのですが、“もっとこういった分野に進出すれば、一石二鳥でビジネスの範囲が広がって安定するのでは?”と感じていても、チャレンジしづらいという側面もあります。今回、公社の支援を受けたことで、“チャレンジしても良いのだ”という勇気とそれができるだけの助成をいただき、一歩踏み出せる環境に身を置けたことが本当に良かったと思います。結果として、この一歩が既存事業に対しても非常に良い影響を及ぼしました」(山本代表取締役)。
これからのビジョン
「今回開発した査定ツールについては、現在、リユース事業者とのシステム連携を進めており、今後さらに強化して収益の安定化を図り、次のステップにつなげていきたいと考えています。主幹業務であるカシャリも、中長期的には査定プロセスの共通化といった面で、リユース事業者との事業連携の橋渡しとしての役割を見据えていけるのではないかと思います。実は今、私たちは東京都の海外進出支援プログラムでの支援も受けており、2024年は台湾、2026年はタイの海外展示会に出展し、海外進出に向けた準備を行なっています。将来は、今でも“質屋さん”が人々の暮らしに根付いているフィリピン、マレーシア、インドネシア、タイといった東南アジアの国々へ、積極的に事業を展開していきます」(山本代表取締役)。
会社情報
| 社名 | ガレージバンク株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 山本 義仁 |
| 所在地 | 港区虎ノ門2-2-1 住友不動産虎ノ門タワー6F |
| URL |
https://www.garagebank.co.jp/ |
代表者情報
代表取締役 山本 義仁
ガレージバンク株式会社代表取締役。三井住友銀行で法人営業や人事を経験後、スタートアップにて個人事業主向けファクタリング事業やプリペイドカード事業、保険事業の事業開発・運営に携わる。2020年1月にガレージバンク株式会社を共同創業。