トップ > 事業案内 > 第3期 東京都サービス生産性革新スクール 事例【株式会社マスピッグ】

東京都サービス生産性革新スクール 事例紹介

CASE2 株式会社マスピッグ

学びを着実に実践し、利益のとれる店舗を目指す

業務効率化で職場環境を改善
スタッフを元気にして接客の向上を目指す

株式会社マスピッグ

株式会社マスピッグが経営するクレープ店(Carrot house)の外観
株式会社マスピッグが経営するクレープ店(Carrot house)の外観
株式会社マスピッグが経営するクレープ店(Carrot house)のキャラクター、ロゴ
株式会社マスピッグが経営するクレープ店
(Carrot house)のキャラクター、ロゴ

マスピッグは2008年から東京都町田市でクレープ店「キャロットハウス」を運営している。同店は小田急線・町田駅から徒歩3分程度の、人やクルマが多く行き交う通りに面している。日中は家族連れや連れ立った学生たち、夜間は仕事帰りの会社員らで構成する幅広い層から支持され、代表の相川千穂氏は「日常生活でふと疲れた時に気軽に立ち寄っていただけるお店を目指したい」と語る。

代表取締役社長 相川 千穂さん
代表取締役社長 相川 千穂さん

経営環境が激変する昨今、企業はより一層「変化に対応」する力、「稼ぐ力(生産性)」の革新が求められるようになっている。そのためには自社の課題を客観的に捉え、解決しながら「生産性を向上」させ、その結果生じた余力(資金・労力・時間など)を自社の付加価値を高める領域に集中していくことが重要となる。
こうした考えに基づき公社では、令和4年度より商業・サービス業に従事する都内中小企業の生産性向上をテーマとしたスクール「東京都サービス生産性革新スクール」(以下、スクール)を開講している。本スクールでは、現場改善に取り組みながら、自社の新たな付加価値を生み出す「生産性の革新」を担う“中核人材”育成を目的としている。
本稿では、第1期スクールの修了生でもある相川氏が代表を務める株式会社マスピッグを紹介。スクールで学んだ内容を自ら実践し、着実に成果を出し続けている同社の取組みについてお話しを伺った。

代表取締役社長 相川 千穂さん
代表取締役社長 相川 千穂さん

——御社の業務内容について教えてください

相川社長 
2008年から東京・町田市でクレープ屋を営業しています。今年(2024年)で丸16年となり、6年ほど前に法人化しました。日中は家族連れや学生さんたち、夜には仕事帰りの会社員の方に多く立ち寄っていただいております。しっとり冷たい生地のクレープに加え、熱々のクレープもご用意しているのが特徴の一つで、熱々のこんがり焼かれた生地のクレープが好きで通っていただくお客様も一定数いらっしゃいます。


——「東京都サービス生産性革新スクール」に申し込まれたきっかけについて教えてください。

相川社長 
当初から、「ちょっと疲れた時、孤独な時に気軽に立ち寄ってもらえるお店にする」という目標を掲げていて、「そのためにはまず働く方が元気でいないと実現できない」と思っていました。
となると、職場の居心地の良さや、お給料も重要になってきますが、そのような環境を実現するにはどうしたら良いのだろうと考えていました。だからといって、安易にクレープの値段は上げたくない。クレープの値段を変えずに、職場環境を改善するためには「生産性を向上させるしかない」という結論に達しました。そんな折、「東京都サービス生産性革新スクール」のことを知り、HPを拝見して応募させていただきました。

代表取締役社長 相川 千穂さん
代表取締役社長 相川 千穂さん
「ハート ビーイング」という取組みを導入
実際にやってみて職場の雰囲気がよくなったと実感

——実際にスクールを受けてみていかがでしたか?

相川社長 
「物事はすべて論理的に進めていける」ということを学びました。たとえば、職場の雰囲気をより良く変えていくために、「ハートビーイング」という取組みを導入しました。この手法は、嫌な気持ちになる言葉や仕草、反対に温かい気持ちになる言葉や行動をスタッフ全員で出し合い、紙に書き出して共有スペースに貼ることで、スタッフが日ごろから自然と言動を意識していく、というものです。実際にやってみたところ、職場の雰囲気がとても良くなったと実感できました。

「ハート ビーイング」という取組みを導入
実際にやってみて職場の雰囲気がよくなったと実感
生クリームを早く正確に絞るコツも、ウェブカメラ設置によって判明したことの一つ
生クリームを早く正確に絞るコツも、
ウェブカメラ設置によって判明したことの一つ

——スクールで学んだことを積極的に実践されてきたようですね?

相川社長 
はい。先述した「ハートビーイング」のほかに、「パレート図」の考え方も導入しました。これは、製品の不良やクレーム、ミスなどを細かく分解し、それぞれの発生数など具体的な数値に落とし込むことで、優先的に改善すべき項目を判断していくための手法です。私どもも、ミスするたびに付箋に書き出して溜めておき、月に一度のミーティングでそれらを持ち寄ってカテゴリー別に分類していきました。ミスはさまざまありますが、その中でも特に影響の大きかったものについて優先的に話し合い、解決策を検討しました。
そして、「ウェブカメラ」もスクールをきっかけに導入に踏み切りました。スクールでの課題は、「時間当たりの生産性を上げる」ことを目標にしており、そのためには「迷いをなくすこと」「メンバー全員が力を発揮しやすい環境にする」という解決すべきテーマがありました。

生クリームを早く正確に絞るコツも、ウェブカメラ設置によって判明したことの一つ
生クリームを早く正確に絞るコツも、
ウェブカメラ設置によって判明したことの一つ

そこで、まずは「何で迷っているのか」「どこで時間がかかってしまっているのか」を確認するためにウェブカメラを設置しました。スムーズに作業が進む人の動作を研究し、気づいたことを動画や写真に落とし込むようにしました。たとえば、同じ作業でも人によって所要時間にばらつきが出るのはなぜだろう?、という疑問から、映像を何度も見直して検証したところ、作業の早い人はちょっとした作業のひと工夫をしていることを発見でき、画像や映像にワンポイントメモを添えてスタッフ全員に共有するといったことも可能になりました。 そして、特に大きな効果を感じている取組みの一つが「プロジェクト管理アプリの活用」です。今まではLINEや紙によるメモで業務連絡をカバーしていましたが、やりとりを一つのアプリに集約したことで全員が情報を共有でき、効率が大幅に向上しました。こうしたツールの存在はスクールで教えてもらい、いろいろアドバイスをいただきながら導入に踏み切りました。こうしたアプリの存在は聞いたことはあっても自分一人ではとても導入できなかったと思っています。

企画部長 石塚 恵 さん
企画部長 石塚 恵 さん

——ここからは相川代表と一緒に店舗運営を担っておられる同社・企画部長の石塚恵さんにお話をうかがいます。
相川代表がスクールで学んだことを次々と実践されながら現場改善に取り組まれる様子をどのように感じていましたか?

石塚さん 
私は在庫管理を担当しています。倉庫内の在庫の収納場所は日々の納品量によって変動するので、正しい収納場所や量の把握だけでもひと苦労でしたが、代表によって倉庫の地図が作成され、リアルタイムで収納物が書かれたマグネットを貼り変える仕組みが導入されました。収納場所が移動したら、すぐに地図上のマグネットも動かす。これを徹底することで、その地図を見れば誰でも「何が」「どこに」「どれくらい」収納されているのかひと目でわかるようになり、在庫管理がとてもスムーズになりました。

企画部長 石塚 恵 さん
企画部長 石塚 恵 さん

ハンズオン支援をしてきた小早川アドバイザーのコメント

現場改善アドバイザー 小早川 渡 さん
現場改善アドバイザー 小早川 渡 さん

スクール修了後の現場改善アドバイザー派遣支援においては、まず相川代表が最終的に目指したい目標・ゴールを伺いながら、そこから逆算して「今」「何をするべきか」という視点で意見交換を続けました。持ち帰った「宿題」の実行スピードが非常に速く、次々とPDCAサイクルが回っていきました。相川代表自身の成長とともに、会社もゴールに向かって進んでいく組織に変貌しました。

現場改善アドバイザー 小早川 渡 さん
現場改善アドバイザー 小早川 渡 さん
誰でも、「何が」「どのくらい」「どこにある」のかわかるような工夫を凝らした
誰でも、「何が」「どのくらい」「どこにある」のか
わかるような工夫を凝らした

相川社長 倉庫の収納はスクールをきっかけに大きく改善した場所の一つです。それまでは店舗が入居している建物の構造上、収納スペースが特殊な形状で、かつ狭かったので、空間を活用し切れていませんでした。
が、スクールで「5S(※)」の大切さを学び、「このままではいけない」という想いから、特殊な形状に合わせた棚をオーダーメイドで作っていただいたことで、空間を最大限に活用できるようになりました。
これまでよりも収納量がふえたことにより、大量発注も可能となり、結果的にコスト削減にも貢献しています。

誰でも、「何が」「どのくらい」「どこにある」のかわかるような工夫を凝らした
誰でも、「何が」「どのくらい」「どこにある」のか
わかるような工夫を凝らした
倉庫のスペースに合わせて作ったオーダーメイドの棚を設置し、空間を有効活用している
倉庫のスペースに合わせて作ったオーダーメイドの
棚を設置し、空間を有効活用している

※5S:職場環境改善のための活動で「整理・整頓・清潔・清掃・しつけ」を指す。

倉庫のスペースに合わせて作ったオーダーメイドの棚を設置し、空間を有効活用している
倉庫のスペースに合わせて作ったオーダーメイドの
棚を設置し、空間を有効活用している
改善を実践したキャロットハウスの皆さん
改善を実践したキャロットハウスの皆さん

——スクールでの学びを踏まえ、今後はどのような事業展開を想定されていますか?

相川社長 
スクールで学んだことを引き続き実践していきながら、生産性と効率を向上させて、しっかり利益が取れる店舗づくりを進めていき、ゆくゆくは店舗数を増やしていきたいと考えています。
お蔭様で売上げも順調に伸びておりまして、スクールに参加する前の2021年12月の売上は約229万円、スクール修了後の2023年12月にはおよそ2倍となる400万円まで増加しています。売上は約2倍になりましたが、スタッフの数は変わっておらず、それが実現できたのもスクールで学んだ成果だと思っています。  

改善を実践したキャロットハウスの皆さん
改善を実践したキャロットハウスの皆さん
店舗 東京都町田市原町田6-18-18 小林ビル1階
代表者 代表取締役 相川 千穂
設立 2018年4月19日
業務内容 クレープ店経営

□ 問い合わせ先 □
〒101-0025 千代田区神田佐久間町1-9 東京都産業労働局5F
公益財団法人 東京都中小企業振興公社
総合支援部 総合支援課 生産性向上担当
TEL:03-3251-7917
E-mail:seisansei【AT】tokyo-kosha.or.jp
※迷惑メール対策のため、「@」を【AT】としています。