東京都中小企業振興公社

no.228

“高速3Dプリンター”と行動力を武器に社会貢献を目指す

創業者で代表取締役の李氏(写真右)は、3Dプリンター技術を持つ人々を集めて生産体制を確立。さらに、大田区の町工場や投資会社、材料メーカーなどからも協力を得て経営規模を拡大してきた。「人を巻き込み、味方にする行動力」が、李氏の武器の1つだ

創業者で代表取締役の李氏(写真右)は、3Dプリンター技術を持つ人々を集めて生産体制を確立。さらに、大田区の町工場や投資会社、材料メーカーなどからも協力を得て経営規模を拡大してきた。「人を巻き込み、味方にする行動力」が、李氏の武器の1つだ

3Dプリンターの開発・製造を行う企業

 グーテンベルクは2021年に設立された、3Dプリンターを手掛けるスタートアップ。しかし、代表取締役である李 丞株氏を含めた創業メンバーは創業当時、3Dプリンターの知識・経験を持っていなかった。
「当初は、『仲間で会社作って何かやろうぜ』くらいの軽いノリでした。それでものづくりをキーワードにいろいろな事業計画を立てていたところ、趣味で3Dプリンターづくりをしていた方と偶然に出会ったのです。試作品を見せてもらうと、既製品の10倍速い速度で造形できる優れもの。これは商売になると考え、そこからこの事業に本腰を入れました」(李氏)
 李氏たちは1~2カ月で試作品をブラッシュアップし、プロトタイプを製造。SNSで公開して評判を得たが、そこで仲間で出し合った創業資金が尽きた。
「開発を続けるためには、金融機関や投資会社から出資を受けなければなりませんでした。それにはしっかりした事業計画が不可欠だと考え、公社の『事業可能性評価事業』を利用したのです」(李氏)

何度も再挑戦する“図々しさ”が武器

 李氏は公社の支援を受けつつ事業計画を練り、金融機関や投資会社から資金を調達。また、大田区にある町工場などの協力を得て生産体制を整えるかたわら、2023年には3Dプリンター用材料の樹脂を手掛ける化学メーカーと業務・資本提携を結ぶなど、たくさんの人を巻き込みながら事業を拡大中だ。2025年度の売り上げ見込みは約3億円で、成長ぶりは目を見張るほど。
 業界初心者だったグーテンベルクが短期間でこれだけの実績を上げられた理由の1つは、李氏の行動力に求められるかもしれない。
「私は図々しい性格(笑)。3Dプリンターの製作者から試作品を借りたのは出会ってから2日後のことでしたし、化学メーカーで初めて商談をしたときは、その会社の近くから電話をかけていきなり押しかけました。考える前に動ける点と、断られても何度も再挑戦する粘り強さが自分の長所だと思っています」(李氏)

2025年発売の新機種『G-ZERO MP1』。高速・高精度という従来からの特徴を生かしつつ、PEEK材の造形が可能

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「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を利用して導入した大型の加工機。複雑形状の加工や工程集約に取り組んでいる

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全関係者が利益を得る仕組みを生み出す

 ただし、李氏は猪突猛進に突き進んでいるだけではない。相手の立場になって考え、全ての関係者が利益を得られる仕組みを模索するのが流儀。だからこそ、多くの人を説得し、味方にできているのだ。
「私は、いろいろな人の思惑を調整するのが得意なのかもしれません。時には思い違いがあって、注意を受けることもあるのですが(笑)。でも、当社の製品を使った人や出資や製造に協力してくれた方々、そして当社の従業員など、全ての人が幸せになるようにと常に考えています」(李氏)
 グーテンベルクは2024年、公社が中小企業の設備導入を支援する「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を利用し、1億円以上の設備を導入した。
「大田区には素晴らしい町工場がたくさんあり、当社も3Dプリンターづくりの初期段階ではお世話になってきました。ただ、そうした企業の力を最大限引き出すには、私たちにも『ものづくりの知見』が不可欠だと気付いたのです。今後は自社工場でトライ&エラーを繰り返し、ノウハウを蓄積する方針です」(李氏)

先端設備の導入が優秀な人材を呼び込む

 数年以内に50億円規模の売り上げを目指すグーテンベルクは、今後も継続的に設備投資を行う方針だ。
「私はワクワクする環境にこそ、優秀な人材は集まるのではないかと考えています。ワクワクする環境とは、最先端の設備があり、優秀な技術者、仲間の存在です。そして、ものづくりは総力戦です。どんなに優秀な人でも、特にものづくりの分野においては、一人の人間にできることに限界があります。会社を作って何かをやる意義は、一人では成し遂げられない大きなことをみんなの力で成し遂げることにあると信じています。3Dプリンターをテーマに集まった仲間です。3Dプリンターの可能性を信じ、3Dプリンター事業を通して、社会に役立つことが私たちのミッションです」(李氏)

利用事業:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業

「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を進める際に必要となる機械設備等の導入経費の一部を助成します。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/yakushin.html

お問い合わせ
設備支援課 TEL:03-3251-7884

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