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優秀な外国人技術者の力でものづくり力をアップ!
代表取締役社長の岩本千章氏は、ものづくりの領域での豊富な経験と、経営におけるチャレンジ精神を兼ね備えた人物。「将来はベトナムの拠点に設計業務を任せ、国内は製造に集中するかもしれません。時代の流れに合わせた国際分業で、当社は生き残りを図ろうと考えています」(岩本氏)
業界の「駆け込み寺」として頼られる企業
交流回路の電圧や電流を変換する「変成器」など、各種電子装置を手掛ける東京精電。1919年に創業し、現在は東京本社と長野県上田市の工場を拠点に事業を展開している。最大の強みは対応力の高さだ。
「当社は設計・製造はもちろん、調達や営業まで社内でまかなえます。また、社内に板金工場もありますから、仕様決定から検査までの一貫生産、さらにクレーム対応も可能なのです。業界内で『パワエレ(パワーエレクトロニクス)界の駆け込み寺』と呼ばれ、困りごとを抱えたお客さまから頼られることが、私たちの自慢です」(岩本氏)
優れた外国人技術者の採用が成長をもたらした
2000年頃までの同社は、大量生産・薄利多売型の企業だった。しかし、2000年以降から大手企業が海外生産にシフトし売り上げが急減したのを機に、高付加価値製品を少量生産する方向へ転換。業績は回復したが、ここで深刻な課題となったのが人材不足だ。
「質の高い製品を生み出すには、優れた技術者が不可欠です。しかし、最近では学生の『理系離れ』が進んでいますし、当社が事業を営む東京都や長野県には多くの優良メーカーが集まっていて、人材獲得競争は激しくなる一方でした。そこで2012年、当社はベトナム人技術者の採用を始めたのです」(岩本氏)
最初に入社した2人のうち1人は、ベトナムの工学分野で最高峰とされるハノイ工科大の卒業生。東京精電は彼らが通っていた日本語学校と縁があり、採用につながった。岩本氏は上司として接するだけでなく、家探しや買い物を手伝うなど様々な場面で支援をしたという。
「最初は言葉や文化の壁があり、彼らも私たちも苦労しました。しかし、日本の暮らしにも慣れた入社2年目からは抜群の実力を発揮してくれたのです。その後は日本人新入社員の指導役も務め、入社して7~8年経った頃からは部下を率いて大活躍でした」(岩本氏)
大手企業が参入しづらい分野を狙ったり、競合他社が撤退した分野を引き継いだりすることで価格競争から距離を置くのが、東京精電の戦略だ
ベトナム駐在員事務所は、周辺相場より安い物件を公社から紹介された。現在は、3人のベトナム人技術者が別会社としてここで設計を行っている
公社の支援を利用してベトナム駐在所を開設
2019年、長年活躍してきたベトナム人社員の1人が帰国することになった。このとき東京精電は、公社の「海外進出サポート事業」を利用したのだ。
「彼は入社当時から、いずれは地元で起業したいと公言していました。そして入社10年を機に、『東京精電の看板でベトナムに会社を設立してもいいですか?』と申し出てくれたのです。私たちは長年頑張ってくれた彼を応援したかったですし、彼が会社を作れば、当社はベトナム進出の足がかりが得られます。そこで彼を社長に据えた現地法人を作ることになり、公社の海外進出サポート事業に申し込みました」(岩本氏)
公社から現地市場調査や製品PRなどの面で支援を受け、東京精電はベトナム進出を開始。また、現地法人より設立が容易でリスクが小さいと助言を受けた結果、2022年には「駐在員事務所」を設立した。
「現時点におけるベトナムでの売上額はまだ小さいですが、今後はもっと伸ばせると考えています。また、設計業務の外注先としての期待も大きいですね。ベトナム拠点は現在、現地100%資本の別会社を立ち上げ、全社の1/3に相当する設計をこなしています。いずれは規模をさらに拡大して現地法人化し、優秀なベトナム人技術者を数多く雇うことで、全社の設計力を高めたいと考えています」(岩本氏)
ブルーオーシャンで勝負し、さらなる成長目指す
東京精電が目指すのは、ニッチトップの地位を維持し続けること。そのために岩本氏は、優秀な外国人人材の採用などでものづくりの力を磨きつつ、価格競争に巻き込まれない市場を目指すことを心がけている。
「基本方針は、『自社だけができる仕事』をすることです。革新的な技術はなくとも、既存技術を上手に組合わせたり最適化を図ったりして価値の高い製品を生み出す。あるいは、競合がいないブルーオーシャンで勝負する。そうした道を進むことで、お客さまから声をかけていただけることが増えています」(岩本氏)
利用事業:海外進出サポート事業
ASEANでの現地ビジネス実施のための拠点設置や、生産委託・業務委託等による各種海外連携を支援。海外進出に関わる経験を有し、中小企業のASEANでの進出支援の実績のある海外進出アドバイザーが、海外進出に関する相談に対応します。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/2506/0015.html
お問い合わせ
販路・海外展開支援課 TEL:03-5822-7241

