東京都中小企業振興公社

no.233

ブルーオーシャン戦略で海外事業を拡大

代表取締役の前多宏信氏が手にしているのは、リモート生体情報マルチモニター「VIMMS」。血液中の酸素飽和度や血圧、心拍データを1つの小型機器で計測し、安価なAndroid端末タブレットに送信できる点が高く評価され、在宅医療や救急医療の現場で広まっている

代表取締役の前多宏信氏が手にしているのは、リモート生体情報マルチモニター「VIMMS」。血液中の酸素飽和度や血圧、心拍データを1つの小型機器で計測し、安価なAndroid端末タブレットに送信できる点が高く評価され、在宅医療や救急医療の現場で広まっている

高度な技術力で脳神経外科向け機器を手掛ける

 フジタ医科器械は1972年に医療機器や医薬品の専門商社として創業され、やがて医療機器製造分野にも進出。高度な技術力を生かし、医療現場のニーズに最適化した製品づくりを行って高評価を受けている。そして2015年からは、海外進出に本腰を入れた。
「当社が得意とする脳神経外科医向けの手術道具・機器類はおかげさまで好調ですが、いずれはロボット技術の普及などでニーズが減る恐れがあります。また、利益率の面では卸業より製造業が有利。それで製品開発を強化して海外にも乗り出し、事業の新たな柱を打ち立てたかったのです」(前多氏)
 同社は2017年、海外進出のために公的補助金を利用しようと経済産業省に相談。そこで初めて公社の存在を知り、利用を勧められたという。
「それから東京都知的財産総合センターへの相談で知的財産の重要性を意識するようになり、大切な技術や製品の特許申請を行いました。その中には、『既存技術の組み合わせでとても特許など取れない』と思い込んでいたものもあったのですが、知財センターの専門家からは特許取得が可能かもしれないと助言されました。最終的には特許を取れ、自社製品を守れたことで、プロの知見はすごいと感じたものです」(前多氏)

ニッチ市場特化で価格競争を回避する戦略

 フジタ医科器械は新製品の開発を進め、2019年には海外展示会に試作品を出す段階までこぎ着けた。ところがここで、前多氏は激しい衝撃を受けたという。
「試作品を初めて出展した海外展示会から2カ月後、私たちは別の海外展示会に出ました。すると大手他社が、当社製品と似たモノを出展していたのです。さらに数カ月後の展示会には、当社製品より優れたモノが並んでいました。グローバル企業の開発速度はこれほどかと、頭を殴られたように感じました」(前多氏)
 世界的な大企業には豊かな開発資源があり、コスト競争力も高い。また、様々なやり方でライバルを潰そうとする貪欲さもあった。そこで前多氏は、大企業と直接対峙しない戦略に舵を取ったのだ。
「私の経験上、大企業は年10億円以上売れない製品に参入しません。そこで、当社はニッチ市場に絞り込み、さらに医療現場のニーズに徹底して寄り添う方針に切り替えました。その結果、価格競争に巻き込まれない製品づくりが可能になったのです」(前多氏)

フジタ医科器械が出展した海外展示会の様子。ミリ単位の精度を可能にする技術力と、医療現場のニーズに合う製品を提案する力が同社の長所

フジタ医科器械が出展した海外展示会の様子。ミリ単位の精度を可能にする技術力と、医療現場のニーズに合う製品を提案する力が同社の長所

同社は、知財戦略導入支援など知財センターの事業を数多く利用。その縁もあり、令和7年度東京都功労者表彰式では技術振興功労で表彰された

同社は、知財戦略導入支援など知財センターの事業を数多く利用。その縁もあり、令和7年度東京都功労者表彰式では技術振興功労で表彰された

製品を「3つの知財の重なり」に位置づける

 公社の支援を受けるようになって以降、同社は知財戦略において様々な学びを積み重ねてきた。その1つが、製品から逆算して特許を取る手法だ。
「今は新製品ができた時点で、それに関連した特許を2~3つほど取っています。その重なった部分に自社製品をポジショニングさせることで、より強固に権利を守れると知財センターから教わりました。この学びは当社にとって、大きな財産になっています。
 他にも、公社に支えられたことはたくさんあります。例えば補助金が不採択になったときは、公社の方がアドバイスしてくれました。当社の求めていることを先回りして提案してくれる『良い意味のお節介さ』には、いつも助けられています」(前多氏)

公社の人材育成支援事業にも大きな期待

 現在のフジタ医科器械では、卸売業の売上げが約8割を占める。しかし前多氏は、利益率を高めるため製造部門を伸ばしたいと考えているようだ。中でも重視するのが海外市場。海外での特許・商標の取得には知財センターの支援を頼りにしているし、今後は人材育成の面でも公社に期待していると語る。
「グローバル人材の育成は、当社が海外事業を進めるためには欠かせません。また、新規事業をゼロから生み出せる能力の持ち主もほしいと考えています。そこで公社が提供する人材育成講座など、人材課題の解決を支えてくれるメニューを、今後は積極的に活用する方針です」(前多氏)

利用事業:知的財産戦略導入支援事業

 知財戦略の導入により経営基盤の強化を図る企業を対象に、アドバイザーが最大3年間の継続的な相談・助言等を行い、専門人材育成や企業内体制の構築等を実践的に支援します。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/index.html

お問い合わせ
東京都知的財産総合センター TEL:03-3832-3656

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