東京都中小企業振興公社

no.214

オープンイノベーションで より大きな価値を提供する

EBINAX株式会社

代表取締役社長の海老名伸哉氏(写真右)は人間力、技術力向上のため、人材育成に力を入れている。大学院や博士課程へ会社負担で進学させ、論理的に考える思考を習得させる、また英会話学校と提携し、英会話習得やコミュニケーション能力セミナーも独自に依頼している

難易度の高い非金属素材向けめっきを手掛ける

 EBINAXは1946年に創業されためっき加工会社だ。大きな強みは、ガラスやセラミック、複合材などの様々な材料にめっき加工を施す技術と、それを支える分析力の高さだと、代表取締役社長の海老名伸哉氏は胸を張る。
「不導体への機能めっきは難易度が高いのですが、当社は1980年代から関東学院大学の材料・表面工学研究所の本間英夫先生¹から指導頂きながら、分析技術や様々な材料への前処理技術のノウハウを蓄積してきました。また、社内にめっき専門の研究機関『テクノマーク』を新設するなど、技術力向上のために積極的に投資をしています」(海老名氏)
 こうした努力の結果、同社は多くの新技術を生み出してきた。めっき表面に特殊な凹凸を作って光学機器用部品の性能を高める黒色めっき「スゴクロ(凄黒)®」や、最近では、皮膜表面の突起を制御することで熱伝導特性や排熱効率を高める放熱・排熱マイクロテクスチャ「スゴヒヱ®」などの技術は、他社から高く評価されている。

ものづくり企業同士で共同プロジェクトを開始

 高度なめっき技術を誇るEBINAX。しかし同社は近年、めっきという枠を飛び出し、「サーフェスクリエイター」への脱皮を目指している。
「私たちの役割は表面処理によってお客さまの課題を解決することです。めっき技術にはこだわりますが、めっきだけにしばられてはダメで、ベストな表面処理のやり方を常に考え抜くのがポリシーです」(海老名氏)
 こうした考え方の延長線上に生まれたのが、同社を含むものづくり企業7社が立ち上げた共同プロジェクト「METALISM(メタリズム)」だ。各社がめっき技術やプレス加工、金型の製造開発、板金、塗装といった得意分野を持ち寄り、オープンイノベーション的な発想で、共同開発に取り組んでいる。
「スペシャリストとしての力を組み合わせて、新たな価値を生み出す。あるいは、それぞれのお客さまを紹介し合い、新たなトータルソリューションを提供するのが、METALISMの狙いです。今後は外部との交流をさらに増やすことで、未知なる世界へワクワクと挑戦を続けられればと考えています」(海老名氏)

従業員の半数以上は女性。EBINAXは、出産や育児の不安を抱える 女性でも働きやすい制度をいち早く整えた企業として知られている

従業員の半数以上は女性。EBINAXは、出産や育児の不安を抱える女性でも働きやすい制度をいち早く整えた企業として知られている

オープンイノベーションの基盤は信頼関係

 EBINAXは自社技術を囲い込まず、オープンイノベーションによってより大きな価値を提供しようとしている。この際に大切なのが他社との信頼関係だ。
「ビジネスマッチングなどで他社と知り合い利害が一致しても、短期間で協力関係が終わってしまうケースは珍しくありません。ビジネスの基盤になるのは、やはり人。継続して付き合うためには、企業同士が腹を割って話し合える関係を築くことが不可欠です。このとき大切になるのが『強い思いと共感』だと、私は考えています。いい仕事をしたい、一緒に楽しみながら挑戦したいという思いのある経営者・社員がいる企業とは、こちらもずっと一緒にやらせていただきたいと感じます。反対に、私たちも他社に認めてもらえるよう、仕事への熱い思いを持ち、それを相手に伝えたいと心がけているのです」(海老名氏)

METALISMは複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」内にラウ ンジ(上写真)を設置。予約制で他社からの相談も受け付けている

METALISMは複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」内にラウンジ(上写真)を設置。予約制で他社からの相談も受け付けている

公社の豊富な支援メニューを使いこなそう

 EBINAXは先代社長である故・海老名延郎氏の時代から、東京都中小企業振興公社がバックアップする異業種交流グループ「城南ブレインズ」に参加している。
「ここで得た人脈はMETALISM設立に役立ちましたし、先輩からの助言も有益です。地域に根ざした異業種交流会は、経営者にとって心強い存在だと感じます。
 設備の導入を支援してくれる「革新的事業展開設備投資助成金」(事業終了)など、公社のさまざまな支援制度や助成金を利用してきましたが、他地域ではこれほど豊富な支援メニューはないはず。せっかく東京都で事業を展開しているのですから、存分に使いこなすべきではないでしょうか」(海老名氏)

1 本間英夫 
関東学院大学 材料・表面工学研究所 特別栄誉教授・顧問
「湿式成膜による機能性薄膜の創製」の業績により、2018年「向井賞」受賞

利用事業:革新的事業展開設備投資助成金(事業終了)

 最新の設備投資関連の助成事業は「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」となります。
 都内中小企業者が「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を進める際に必要となる機械設備等の導入経費の一部を助成します。

お問い合わせ
設備支援課 TEL:03-3251-7884
【躍進的な事業推進のための設備投資支援事業】
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/yakushin.html

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