no.218
“ゼロからモノを作る力”で期待を上回る製品を

代表取締役の羅山能弘氏(写真中央)は、「最初の自社製品を展示会に出したとき、たくさんの人がブースに詰めかけました。それを見た従業員たちは翌日以降、目の色を変えて仕事に打ち込んでいたのです。自社製品を持つことは、従業員のモチベーションアップにとても役立ちます」と指摘する
プラスチックの専門家として提案力を発揮
1962年創業のラヤマパックは、化粧品や文房具のパッケージをはじめとする多彩なプラスチック製品を手掛ける企業だ。最大の強みは“ゼロからモノを作る力”。例えば、プラスチックシートを好きな形に加工できる卓上真空成形機「V.former」を2014年に発表した際には大きな話題を呼んだし、コロナ禍の2020年には短期間でフェイスシールドを製造・提供するなど、多くの自社製品を生み出してきた。
「当社はものづくりの全工程をプロとして支える『具現化工場』を用意し、V.formerのようなオリジナル製品を作ったり、お客さまのご要望を実現したりしています。その土台にあるのが、さまざまな角度からものごとを考える姿勢です。要求された製品を適正価格で期日までに納めるだけで満足せず、対話を繰り返してニーズを深掘りする。その上で、付加価値を高めた提案を行うよう常に心がけています」(羅山氏)
多忙な中で大学院に通って知識を吸収
一昔前の同社はどこにでもあるような下請企業だったと、羅山氏は振り返る。転機になったのは2011年の中国工場開設だ。巨大で活気溢れる中国企業に対抗するため頭を絞った結果が、具現化工場設立によって“ゼロから作る力”を伸ばすことにつながった。さらに羅山氏は多忙な毎日を送りながら、2015年、東京理科大学大学院のMOT(技術経営専攻)に入学。
「仕事のつきあいで会食があっても、深夜2時には起きてレポートを書いたり課題本を読んだりする毎日でした。人生の中で最も勉強した2年間ですが、全く苦にはならなかったです。刺激はあるし好奇心は満たされるし、さらに仕事にも役立つわけですから」(羅山氏)
大学院の同級生は大企業から派遣されたエリートばかり。一番の劣等生だったと謙遜する羅山氏は、プライドを捨てて貪欲に知識を吸収した。
「大学院の修了時、担当教授から皆の前で『この中で一番授業料の元を取ったのは羅山さんだね』と褒められたのが、何より嬉しかったですね」(羅山氏)

V.formerなら思いついたデザインを形にできるため、アートやプレゼ ンテーション、オリジナル品のパッケージなど幅広い分野で応用が可能だ
事業承継先で経営者は裏方に徹すべし
羅山氏は今、事業承継にも注力している。後継者不在企業を中心に、これまで4社1事業を承継。
「ラヤマパックの従業員数は30人ほどですが、グループ全体だと100人以上。仲間が多くなれば仕事のスケールは大きくなりますし、追求できる技術やアイデアの幅や深さも増すはずです。さらに、私たちが承継することで守れる雇用もありますから、今後も機会があれば事業承継に挑みたいと考えています」(羅山氏)
新たな承継先ではまず、コンプライアンスの徹底と風通しの良い社風の確立から着手する羅山氏。その際には、裏方に徹することを心がけているという。
「どの企業にも高い能力を持ち、エースストライカーになりうる人がいます。そうした方々が力を出し切れるようグラウンドキーパー役を担うのが経営者の役割だと思うのです。そうして人を育て、外の世界に巣立つ手伝いをしていければいいですね」(羅山氏)

新開発のチョコレートモールド(特許出願済)。ショコラティエの負担を大幅に軽減します
公社にはM&A事例・ノウハウの発信を期待
同社は2014年、企画から製品化、販路開拓までの過程を学べる公社主催プログラム「事業化チャレンジ道場」に参加。そこから生まれたのがV.formerだ。
「自社製品を作りたいと熱望しているのに、ノウハウやリソースがなくためらっている下請企業は多いはず。私たちもそうでしたが、チャレンジ道場のおかげでメーカーに脱皮できました。1年目の『売れる製品開発道場』と2年目の『事業化実践道場』の両方がなければ、今も当社は下請けのままだったはずです。
日本の中小企業は今後、生き残りのため連帯が必要になります。そのために有効な手段の1つが事業承継だと私は考えます。そこで公社には、中小企業によるM&Aの成功事例や、具体的なノウハウの情報発信を期待しています」(羅山氏)
利用事業:事業化チャレンジ道場 -ものづくりイノベーション企業創出道場-
事業化チャレンジ道場は、ものづくりにおける新製品開発を通じて、企画・製品化・量産化・商品化・販路開拓までの一連のプロセスを実践的に習得していただき、道場修了後も参加企業が自力で開発に取り組めることを目指すプログラムです。
新たな事業展開をお考えの企業をサポートします。
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城南支社 TEL:03-3733-6284